魔法ってワクワクするよね
「いらっしゃい!」
「もうちょっと負けてくれないかしら?」
「今朝採れたばかりの新鮮な果物だよ!」
「これとこれください!」
「そこのお姉さん、今なら安くしとくよ!」
あちこちから声が聞こえて来る。
俺は今、屋敷を出て街をぶらついている。
勿論一人ではなく隣にイーナもいるし、護衛の騎士3人も少し離れてついて来てくれている。
市場には大勢の人がいて、活気に溢れて大変賑やかだ。
あの串焼き美味しそう。
あっちのリンゴみたいな果物もいいなー。
買ってもらおう。
「お嬢様、何か欲しいものは有りましたか?」
「うん、あれ、食べたい」
「あれは…串焼きですね。では行きましょう」
串焼き屋の前まで来ると、メニューがいくつかあった。
豚肉や牛肉、鶏肉が主なもので、牛タンや鶏皮といったものもあるようだ。
どれにしようか悩んだが、串といえば焼き鳥ってイメージという理由でシンプルな鶏肉にした。
一人だけ食べるというのもなんだかなと思い、イーナや護衛の騎士たちにも食べるよう言い、各々好きなものを注文していた。
皆で串焼きを食べながら他の店を見て回っていると、路地裏に座り込んでいる一人の少年を見つけた。
痩せ細った体に襤褸を纏っているところを見ると、食事も満足にできないほど貧しいのだろうか。
その少年がこの世界で初めて見る黒髪だったこともあり、つい立ち止まって見てしまった。
すると、少年もこちらに気づいたのか見つめ返してきた。
正確には俺の持っている串焼きへと。
これ食いたいのかな?と思い視線を手に持つ串焼きに移した瞬間、少年がこちらに駆けてきた。
びっくりして固まっていると、手を伸ばせば触れられそうなところで、少年は騎士に取り押さえられた。
流石護衛の騎士たち。
捕まった少年だが、まだ視線は俺の串焼きに固定されている。
そんなにお腹が空いているのか。
「いる?」
「…(コクコク)」
騎士から解放された少年に、半分ほどになった食べかけの串焼きを渡すと、一口で全部食べてしまった。
「んぐっ!?…ゴホッ、ゴホッ」
そんな急いで食べるからむせてしまっている。
落ち着いた後、串焼きが目的とはいえ俺に接近したため、少年は事情聴取されることになり騎士の1人が詰所まで連れて行くことになった。
「ではお嬢様、この少年を連行致しますので護衛が1人抜けます。すぐに代わりの者を向かわせますので、お気になさらず視察を続けてください」
「…あまり酷いこと、しないようにね?」
「!…はい、おそらくお嬢様の串焼きが目的だと思いますが、念のための聴取です。手荒な真似は致しませんのでご安心を」
「うん、ありがとう」
少年が可哀想に思えてついそんなことを言ってしまった。
幸い騎士も同じ風に思っていたのか、酷いことはしないと言ってくれた。
そして、騎士と少年が詰所に向かって行った。
なんだか暗い気持ちになってしまったな。
ここは何か面白いものでも見つけて気分を切り替えよう。
また街をぶらぶらしていると、何やら広場に人が集まっているのが見えた。
何かやっているのだろうか?
広場に着くと、そこには木製の簡易なステージの上で何かをやっているようだった。
ここからではあまり見えない。
「あれは旅芸人が来ているようですね」
旅芸人?
何かショーとかやってるのだろうか。
とりあえず行ってみよう。
近くまで来てみると、水を魔法で操りシャボン玉のようなものを出したり、氷の結晶を作り辺りをキラキラと輝かせていた。
魔法使いだ!
そういえば魔法を見るのは、イルメラとして目覚めたすぐにイーナにかけてもらった回復魔法以来だ。
もしかして、イーナもあんなことができたりするんだろうか?
そう思い期待に満ちた表情でイーナを見ると、彼女は困ったように笑い首を横に振った。
「私は回復魔法しか使えません」
「そっか…」
ちょっぴりガッカリしてしまったが、魔法が使えるだけですごいと思う。
俺も使えるのかな?
「私も、魔法使いたい」
「では帰ったら魔法を使ってみましょう」
え?
そんな簡単に使えるの?
「稀に平民でも魔力を持っていることもありますが、貴族であれば必ず魔力を持って生まれるので魔法を使えるんです」
それは楽しみだなー。
炎を出したり、風を操ったりできるんだろうか。
そんなことを考えていたら、ショーが終わったのか周りから盛大な拍手が起こった。
さっきの魔法が綺麗だったので俺も拍手を送っておいた。
屋敷へと帰り、魔法を使いたいとイーナにお願いすると庭に出てさっそく教えてくれた。
魔法には火や水といった属性があって、基本一つの属性しか使えないらしい。
俺は何属性だろうか。
期待に胸を膨らませ、魔力の集め方などを教えてもらいつつ魔法を発動してみると、目の前に花がボンッと咲いた。
ん?
もう一回やろう。
また魔力を集めて魔法を発動する。
ポンッ!
先程の花の横に色違いの花が咲いた。
もしかして俺の魔法ってこれ?
「あら、とっても素敵な魔法ですね!」
イーナが本心から賞賛してくれているのが分かる。
でも何か思ってたのと違う!
やけくそで魔法を発動してたら、辺り一面お花畑になり屋敷中が騒然となったのだった。
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次回の更新は明後日です。




