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学校転移したら全員有能すぎて過酷な異世界に現代文明国家を築いてしまった……。  作者: ナガワ ヒイロ


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005 ゴブリン危機一髪



「……ん?」



 屋上からグラウンドを見下ろしていると、違和感を抱いた。


 蘭丸会長を始めとした生徒たちの活躍によってゴブリンは殲滅した。


 たしかに戦いは終わったはずだ。


 しかし、上手く言い表せない不安が胸の内側で燻っている。


 何かを見落としている気がする。



「あの、音無先輩」


「ん? どしたん?」


「さっき生徒会室で見せてもらった映像って、もう一度確認できませんか?」


「できるけど、ちょっと待ってね。……ほい、どうぞ」



 音無先輩がパソコンのキーボードをカタカタした後、モニターを見せてくる。


 そこには生徒会室で見せてもらった、ゴブリンの軍勢が学校に向かっている光景が映し出されていた。


 そして、違和感の正体に気付く。



「……やっぱり、ゴブリンが少ない」


「めっちゃ多いと思うけど、視力大丈夫そ?」


「そ、そうじゃなくて!! グラウンドで倒れてるゴブリンの数が映像に映ってるゴブリンより二十匹くらい少ないです!!」


「えっと、つまりどゆこと?」


「別動隊がいるんです!! 多分正面でこっちの注意を引き付けて、別動隊が違う場所から侵入してくるつもりなんです!! すぐにドローンを飛ばして学校周辺を確認してください!!」


「わ、わわ分かった!!」



 音無先輩がドローンを飛ばし、パソコンで映像を確認する。


 しばらくして音無先輩が「あっ」と声を上げた。



「ホ、ホントにいた!!」



 俺の予想通り、ゴブリンたちは塀をよじ登って学校の敷地内に侵入するつもりらしかった。


 すぐに無線で連絡を入れる。



「蘭丸会長!! 南側の塀をよじ登ってゴブリンが侵入しようとしてます!! 数は十八!!」


『っ』



 すぐに無線で蘭丸会長に連絡すると、彼はすぐに動ける仲間を連れて南側の塀へ向かった。


 これならゴブリンが校内へ侵入する前に殲滅することができるだろう。


 いや、まだ油断はしちゃダメだな。


 念のため他にもゴブリンの別動隊がいないか目を光らせておかないと――



「ええ!? なんで!?」


「っ、ど、どうしました、音無先輩!?」



 音無先輩が急に大きな声を上げたせいで、思わずビクッとしてしまった。


 何事かと思って振り向くと、音無先輩はパソコンの画面を俺に見せて焦った様子で言った。



「お、女の子!! 一年の女の子が塀を越えてきたゴブリンの近くにいる!!」


「は?」



 映像を見ると、たしかにゴブリンが侵入してきた塀の近くの柱の陰に女子生徒がいる。



「な、なんで!? 非戦闘員は校内で待機してるはずじゃ!?」


「ど、どどどうする!? 蘭丸会長間に合うよね!?」



 蘭丸会長はもう移動を始めている。


 しかし、ゴブリンは女子生徒の存在に気付いていて下卑た笑みを浮かべながら近づいていた。


 このままだと蘭丸会長は間に合わない。



「どうすれば……どうすれば……何か連中の注意を逸らせるようなもの……」



 俺は周りに何か使えるものがないか見渡して、ハッとした。



「音無先輩!! ドローンを降下させてゴブリンたちに体当たりさせてください!!」


「ええ!? で、でもこのドローン、ドローン部の皆でお金出し合って買った百万くらいするやつで……」


「じゃあぶつけなくていいです!! ゴブリンの注意をその生徒から逸らして、蘭丸会長が辿り着くまで時間を稼ぐんです!!」


「お、おっけー!!」



 音無先輩がドローンをゴブリンたちの目の前に降下させる。


 ゴブリンはいきなり空から降りてきたプロペラの甲高い音を発するドローンに驚き、軽いパニックに。


 そこへ蘭丸会長率いる戦闘チームが到着した。



「各個撃破だ!! 一体ずつ確実に仕留めろ!!」


「「「応っ!!」」」



 そこからはあっという間だった。


 一度グラウンドで戦いを経験したからか、生徒たちの動きに迷いはなく、塀を越えてきたゴブリンを殲滅することができた。



「……き、危機一髪……」


「ヤバかったねー」



 俺はその場でへたり込み、しばらく動く気にはならなかった。


 あ、でも一応連絡しとこ。



「蘭丸会長、ゴブリンが侵入してきた近くの柱に女子生徒が隠れてるので、保護お願いします……」


『なに? ……分かった、ご苦労。宇佐見もすぐ下に降りてこい』


「……うっす」


『音無はドローンによる索敵を続行、ゴブリンの増援がいないか周辺を警戒してくれ』


「はいはーい」



 俺は足腰に力を入れて、階段を降りて蘭丸会長のもとへ向かった。









 蘭丸会長と合流すると、生徒たちがゴブリンの死体を一ヶ所に集めている様子が見られた。



「来たか、宇佐見」


「宇佐見が来ましたよ……」


「……疲れているようだな」


「い、いえ、蘭丸会長や戦闘チームの皆さんよりはマシなので……それより、会長に背負われながら寝てるその人は?」



 ふと気になったのは、蘭丸会長に抱えられながら寝息を立てている女子生徒だ。


 小学生に見えるくらい華奢で小柄な体躯をしており、銀色の髪と非常に整った容姿をしている美少女だった。


 蘭丸会長が眼鏡をくいっと持ち上げる。



「宇佐見の報告にあった女子生徒、一年生の百合園ゆりぞのだ」


「百合園……この人が……」


「知っているようだな」


「まあ、先生方も手を焼いてるって聞いたことがあるので……」



 百合園は一年三組の問題児として有名だ。


 授業を抜け出して保健室やトイレ、酷い時は廊下で眠っているらしい。

 起こしても一瞬目を開けたと思ったら、すぐまた寝直すとか。



「……いったいいつから寝てたんですかね?」


「分からん」



 という会話をしていた、その時だった。


 百合園の目がぱちっと開いて、蘭丸会長や俺をまじまじと見つめている。



「……ん……んぅ……よく寝ました……どなたか知りませんが、下ろしてください」


「ああ」


「さんくす」



 地面に立った百合園は大きく欠伸をして、グラウンドに転がるゴブリンの死体の山を見つめてピタッと固まった。



「……いつからこの学校はファンタジー映画の撮影現場に?」


「百合園、状況は理解しているか?」


「貴方はたしか、天竜高校の生徒会長の……ら、らん、らんナントカですね」


「蘭丸恭介だ」


「そう、それです。それで、状況とは? わたしは朝から寝ていたのですが……」



 あ、朝から?


 ってことは学校ごと異世界に転移してからずっとあそこで寝てたのか?


 結構騒がしかったのに?



「――以上が、我々の置かれている状況だ」


「なるほど。わたしがお気に入りのお昼寝スポットで眠っている間にそのようなことが……」



 蘭丸会長の説明にもマイペースで頷く百合園。



「ここは異世界ファンタジーライトノベルのようにチート能力を駆使して無双したいところですね。ステータス、オープン!!」


「……宇佐見、百合園が何を言ってるか分かるか?」


「え? ああ、まあ……」


「そうか。では百合園の相手は宇佐見に任せよう」


「ちょ!?」



 この人、面倒だからって百合園を俺に丸投げしやがった!?


 心の中で文句を言っていると、蘭丸会長に勘解由小路先輩が駆け寄ってきた。



「蘭丸会長、ひとまずゴブリンの死体は一ヶ所に集めましたよ」


「ご苦労、勘解由小路」


「で、どうします? このゴブリンの死体の山」


「……どうにかして処分するしかあるまい」



 これは地味に面倒な問題だ。


 そのまま埋めるのは土壌の汚染に繋がるので論外だし、燃やそうと思っても不完全燃焼だと有害物質が出るはずだから怖い。


 というかゴブリンの死体を全部燃やすとなると、相当な燃料が必要だ。

 ストーブ用の灯油や自家発電機用の軽油には限りがある以上、極力使いたくない。



「焼却炉があれば、少量の燃料でダイオキシンを発生させずに死体を処理できるのだがな」


「焼却炉なら体育館裏の旧ゴミ置場の横にありますよ」


「……なに?」



 蘭丸会長も焼却炉の存在を知らなかったようで、目を瞬かせて驚いている。


 ……うちの学校、そんな設備あったのか。


 というかなんで百合園は蘭丸会長も知らないような焼却炉の存在を知ってるんだ?





キャラ紹介

百合園ゆりぞの

学力   C+

身体能力 E+

思考力  S+

社交性  E-

総合力  C-


備考

天竜高校の問題児。いつでもどこでも眠れる特技がある。夕方六時に就寝、朝八時に起きる。



作者「銀髪美少女って凄い神聖な感じしない?」


宇佐見「まあ、非現実的な存在って感じはする」



「ドローン使うの賢い」「さんくすで笑った」「百合園の思考力S+なのか……」と思った方は、感想、ブックマーク、ポイント評価、レビューをよろしくお願いします。

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