006 戦いの後の処理
焼却炉が轟々と唸りながらゴブリンの死体を焼いていく。
「それにしても、焼却炉があるってよく知ってましたね」
「近所の公園や学校の敷地内にあるお昼寝スポットは全て把握していますので。知ってますか? 焼却炉の上って少し温かいのですよ」
「そすか」
どうでもいい知識が増えてしまった。
「ところで、貴方誰です?」
「今聞くんです!? ……一年一組の宇佐見です」
「おや、同級生でしたか。ご存知の通り、わたしは百合園と申します。まるで神を崇めるかのように敬うならタメ口で結構ですよ」
「……やることがないなら教室に戻られては?」
実は百合園さん、さっきからずっとゴブリンの焼却も手伝わず、焼却炉の近くに座って左右にゆらゆらと揺れているだけなのだ。
相手をするのも面倒になってきたし、教室に戻るよう勧めるが……。
百合園さんは首を横に振った。
「物が燃える音を聞くのが好きなのです。パチパチという音が心地よくて」
「これ生き物の死体燃やしてる音ですからね?」
変わり者、というか変人だな。
見た目は超絶美少女なのに、問題児としてしか話題に上がらないわけだ。
そうこうしてるうちにゴブリンの死体を全て焼き終わり、日が傾き始めた頃。
あとは灰を土に埋めるだけ――というところでトランシーバーから「ザザッ」と音が響いた。
蘭丸会長だ。
『宇佐見、焼却は終わったか?』
「あ、ちょうど今終わりました。あとは穴を掘って灰を埋めるだけです」
『ならばその場は誰かに任せて生徒会室へ。明日からの動きについて話がある』
「分かりました」
俺は三年生の先輩に灰の埋め立てをお願いし、生徒会室へ向かった。
「で、なんで百合園さんは付いてくるんです?」
「細かいことは気にしなくていいです」
「……そすか」
俺は百合園さんを連れた状態で生徒会室に行くと、大量のファイルと生徒たちに囲まれている蘭丸会長がいた。
ファイルに閉じられている書類を確認しながら、蘭丸会長は生徒たちに指示を出す。
「明日、美術部はドローン部や地学部と連携して地図の作成を。生物部、剣道部、弓道部は明日行う学校周辺の調査に備えてもう休むように」
「「「はい!!」」」
「それから学年を問わず男子は三階の教室、女子は四階の教室を寝床とする。また、夜間に男子が四階に無断に立ち入ることを禁じる」
「はい、会長!! 質問いいですか!!」
一人の男子が手を挙げた。
「なんだ?」
「彼女とエッチなことがしたい時はどうすればいいですか!!」
「現状は避妊具も医療体制も十分ではない。節度ある行動を取るように。それと、そういった話は個人的に相談に来なさい。この場でする話ではない」
「あ、はい。さーせん」
ふざけた質問に対し、至って真剣に返答する蘭丸会長。
これには質問した生徒も反省したようだった。
生徒たちが指示を受けて行動を開始し、一段落したタイミングで声をかける。
「あの、蘭丸会長」
「む。すまない、来ていたのか。気付かなかった」
「忙しそうでしたもんね。……それより、その山のような書類は?」
「職員室にあった資料を持ってきた」
資料を?
「何のために?」
「……オレは焼却炉の存在を知らなかった。もしかしたら、オレが知らないだけで今後役に立つ設備があるかも知れないと思ってな。――見ろ」
蘭丸会長が見せてきた書類には何やら小難しい言葉で色々書かれていた。
その書類には――
「校舎の建て替えに伴って、使えそうな物品を旧体育館倉庫に保管しておく?」
「うむ、天竜高校は十年前に校舎を建て替えている。もしかしたら旧体育館倉庫に工事の際に撤去された設備や備品が眠っているかも知れない」
「では明日の動きというは……」
「ああ、旧体育館倉庫の探索を宇佐見に頼みたい」
な、なんで俺?
「なんで俺、と言いたそうな顔だな」
「ギクッ」
「単純な話だ、宇佐見は観察力に長けている。使えそうなものを見繕うこともできるだろう」
期待が重い!!
……でも旧体育館倉庫の散策は宝探しみたいで少しわくわくするな。
掘り出し物でもあるだろうか。
「ところで、なぜ百合園までここにいる?」
「わたしがいて何か不都合なことでも?」
「いや、特にないが。……ちょうどいい、明日は百合園も宇佐見へ協力するように」
「え゛っ!?」
「おや、宇佐見が嬉しそうですね」
嬉しくない!! また明日も付きまとわれるのはなんか嫌だ!!
「あの、なんで百合園さんまで?」
「職員室で見つけた百合園の生活指導資料に知能検査の結果が添付されていた。それによると、百合園のIQは160を越えているらしい」
「は? IQ160? え、百合園さんが!?」
たしかIQ150以上ってとんでもなく少数なんじゃ……。
「オレも驚いた。それがどれほどのものかは分からんが、彼女なら何らかの発見をしてくれるかも知れない」
と、そこで百合園さんが一言。
「参考までに、アインシュタインもIQ160程度と言われていますね。まあ、アレは俗説でアインシュタイン本人はIQテストを受けことがないので、実際の数値は不明ですが」
「そうか」
蘭丸会長が百合園さんとの会話を早々に切り上げて俺に向き直った。
「今日は色々あったから疲れているだろう。もう休め」
「あ、はい。お言葉に甘えます。会長も無理せず休んでくださいよ?」
俺がそう言うと、会長は呆気に取られたような表情を見せた。
「フッ、問題ない。オレはショートスリーパーだからな。少し眠れば回復する」
「……蘭丸会長って人間ですよね?」
「ゴブリンにでも見えるのか?」
「い、いや、そういうわけじゃなくて!!」
「冗談だ」
この人、冗談とか言うんだ……。
俺は蘭丸会長の意外な一面に驚きつつ、生徒会室を出る。
そのまま男子の生活圏となる三階に向かった。
百合園さんも三階まで付いてくるつもりはなかったようで、階段で別れて四階へ行った。
よかった。寝床まで付いてきたら流石に怖かった。
「お、宇佐見!!」
「痛っ。いきなり背中叩くなよ、九十九」
「悪い悪い!! それより飯まだだろ? ほれ」
「ん? お、ありがと。昼はゴブリンの死体の処理で忙しくて食べそびれてたから助かる」
九十九が投げ渡してきたのは、ご飯入りの温め不要なレトルトカレーだった。
「これ、美味しいのかな」
「さっき食ったけど、思ったより旨かったぜ」
「……いただきます」
俺はプラスチックのスプーンでレトルトカレーを掬い上げ、頬張った。
あ、意外と美味しい……。
「でも、なんというかシンプルな味だな」
「非常食だからなー。っと、そうだ。ちょっと付いて来いよ」
「ん? ああ」
レトルトカレーを食べながら向かった先は二年一組の教室だ。
しかし、本来なら二年一組と書かれているはずの室名札には紙が張られており、「一年一組&二組&三組の寝床」と書かれていた。
扉を開けると、そこには教室のカーテンや毛布が敷かれている簡易的な寝床となっており、見知った男子が大勢いた。
「いつの間にこんな部屋を?」
「昼間に生徒会長から指示されてなー。手の空いてる生徒で作ったんだよ。ちょっと修学旅行みたいでわくわくしね?」
「……ちょっとするかも」
「つーわけで、宇佐見!! 恋ばなすっぞオラ!!」
「いや、急だな!?」
……まあ、今日一日色々非現実的なことばかりで大変だったからな。
少しくらい心休まる時間があってもいいか。
キャラ紹介
九十九
学力 D+
身体能力 B-
思考力 C-
社交性 C+
総合力 C
備考
放送部の一年生。根っからの実況者で、憧れの人物はスピードワ◯ン。クールに去るぜ。
作者「頭よすぎる人は変わってるってのはまじ。作者の知り合いもめっちゃ頭いいけどよく奇行に走る。でも常識があるから逆に怖い」
宇佐見「えぇ……」
「百合園が変人すぎる」「蘭丸会長ショートスリーパーなのか……」「恋ばなすっぞオラ!!」と思った方は、感想、ブックマーク、ポイント評価、レビューをよろしくお願いします。




