003 生徒会への勧誘
「ならちょうどいい。君は生徒会に入れ」
「え?」
蘭丸生徒会長の口から飛び出してきた言葉に思わずフリーズする。
え? え? 俺が生徒会に?
「あ、あの、な、なんででしょうか?」
「君は先ほどオレに意見したな」
「あ、す、すみません、生意気で言ったみたいで……」
「責めているわけではない。むしろ君のお陰でよりよい意見にまとまった。君が必要な意見を必要な時に言ってくれたからだ」
お、おお、そう言われると照れるな……。
「オレはこれから生徒会長として、あらゆることを想定し、動かねばならない。しかし、一人の力には限界がある」
「それは、まあ、そうですね」
「だからこそ生徒会メンバーと協力、連携していかねばならないわけだが……圧倒的に人手が足りない」
たしか今の生徒会には生徒会長、副生徒会長、書記、会計、庶務の五人がいる。
しかし、これから彼らが担っていかなければならない業務は転移する前の比ではない。
たしかに五人では人手不足だろう。
「君には生徒会の一員として、オレの補佐をしてもらいたい」
「で、でも俺より優秀な人は大勢いると思いますし……」
「たしかに、単純な能力で言えば君より優秀な人間はいるだろう」
自分で言っておいてなんだが、それはそれで傷付くな。
「だが、君はあの場でオレや副会長に次いで冷静だった」
「そ、そうですかね?」
「ああ。オレの提案の危険性を指摘して、尚且つ代案を用意してきた。冷静に現状を飲み込み、対策を立てられる人間は貴重だ。その資質は非常事態下でこそ役に立つ。……頼めないか?」
蘭丸会長は俺の目を真っ直ぐ見つめながら、そう断言した。
今は非常時だ。
普段なら頼まれてもなあなあで誤魔化して絶対にやらないが、この事態を乗り越えるためには蘭丸生徒会長に協力すべきだろう。
何より……。
「わ、分かりました」
俺は勉強も運動も飛び抜けて得意なわけではない。
だから、ここまで真っ正面から必要だと言われたのは初めてで、ちょっと嬉しい。
蘭丸会長のためなら頑張ってもいいかな、と思えるくらいだ。
これがカリスマ性ってやつなのかな。
「お役に立てるかは分かりませんが、お手伝いさせてもらいます」
「ありがとう。では早速だが、三十分後に生徒会ミーティングを行う。クラスに先ほどの話し合いの内容を伝えたら、すぐ生徒会室に戻ってきてくれ」
俺は蘭丸会長に会釈してから、一年一組の教室へと戻った。
「おかえりなさい、宇佐見くん」
「あ、た、小鳥遊さん。ただいま戻りました」
「生徒会長はなんと?」
生徒会室で行われた話し合いの内容をクラスメイトに共有した。
「そう、生徒会の方針は理解したわ。やっぱり貴方に代表者を任せて正解だったわね」
「そ、そんなことないよ。これくらい誰にでもできると思うし」
「ふふ、謙虚なのね」
小鳥遊さんがくすっと微笑み、すぐに切り替えてクラスに指示を出す。
「ひとまず話題に上がった園芸部や弓道部、アーチェリー部、それからドローン部と生物部に所属する生徒は各々指定の集合場所に向かってちょうだい」
「「「はーい」」」
「その他の生徒は指示があるまで待機よ。多少の雑談くらいなら構わないけれど、間違っても騒がないように。今が非常時であることを忘れないで」
クラスメイトたちが頷き、指名された生徒が教室を出ていく。
俺も彼らの後に続こうとして、九十九に呼び止められた。
「ん? 宇佐見もどっか行くのか?」
「あ、ああ、実は生徒会長に生徒会に入れって言われて」
「え、すげーじゃん。スカウトじゃん」
「何の役に立てるか分からないけどな……」
俺は苦笑しながら教室を出て、再び生徒会室へと戻る。
しかし、生徒会室に蘭丸生徒会長の姿がなく、代わりに髪を金色に染めた少しチャラそうな人物がいた。
この人はたしか……。
「勘解由小路副会長、ですよね?」
「ああ、さっきの話し合いで発言してた一年だな。何かトラブルでもあったのか?」
「いえ、その、蘭丸生徒会長に生徒会に誘われて集まるように言われて」
「……なに?」
生徒会に誘われた、と聞いた途端に険しい顔つきになる勘解由小路副会長。
なんか、歓迎されてない感じだな。
どことなく生徒会室の空気が重くなった時、そこに蘭丸会長が入ってきた。
「すまないな、ドローン部と生物部に指示出しをしていたら遅くなった」
「蘭丸先輩、この一年を生徒会に誘ったってマジですか?」
「ああ、マジだ」
蘭丸会長、『マジ』って言葉使うんだな……。
「勘解由小路は反対か?」
「反対も反対、大反対ですよ。蘭丸先輩」
「……理由を聞こうか」
眼鏡をくいっと持ち上げながら問いかける蘭丸会長に勘解由小路副会長は言った。
「宇佐見が一年だからです」
「今は非常時だ。そこに一年生や二年生、三年生といった隔たりを作るべきではない」
「蘭丸先輩が能力重視なのは理解してます。先の話し合いにおいて宇佐見の提案が意義あるものであったことも認めましょう。これが平時なら僕も反対はしません」
「であれば、何が不満だ?」
「これからの生徒会は全生徒の命運を背負う重要な立場です。ハッキリ言って、一年生には荷が重い。二年の先輩として、生徒会の副会長としてそれは許容できない」
あ、あれ? 勘解由小路副会長って見た目がチャラいだけで普通にいい人なのか?
「……あ、あの、勘解由小路副会長」
「なんだ?」
「心配してくれるのは、本当に嬉しいです。でも蘭丸会長の言うように今は非常事ですし、少しでもお役に立てるなら協力させてもらいたいです。……俺が役に立てるかどうかは分からないですけど」
正直、自信はない。
それでも認めてくれた蘭丸会長や心配してくれる勘解由小路副会長のためなら、頑張れる気がする。
「それに、もし本当にしんどいってなったら相談させてもらいますから」
「……辛くなったらいつでも言うんだぞ。一年なんだから先輩を頼れ。それから生徒会に入るなら僕のことは勘解由小路先輩と呼べ、宇佐見」
「分かりました、勘解由小路先輩」
俺が頷くと、勘解由小路先輩は急にニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべた。
「んふっ、先輩……ふふ……よし、困ったことがあればいつでも僕を頼れ!! 先輩として助けてやるからな!!」
「え、あ、はい」
「生徒会に一年生はいなかったからな、後輩ができて嬉しいのだろう。あの笑い方は癖だから気にしないようにしてやってくれ」
「……はい」
と、その時だった。
一人のギャルが生徒会室に飛び込んできて、蘭丸会長に詰め寄った。
彼女はたしかドローン部部長の……。
「会長会長!! やばいやばい大変!!」
「何があった?」
「さっき地形を確認しようと思ってカメラ付きドローン飛ばしてみたんだけど、これ見て!!」
そう言ってドローン部部長が見せてきたノートパソコンのモニターには、百匹近いゴブリンが学校に向けて大移動している様子が映っていた。
「……これは……」
「さっきグラウンドに入ってきた奴らが仲間を大勢引き連れて戻ってきたんだよ!!」
さっきグラウンドに入ってきた奴ら。
ゴブリンたちが、大軍勢でやられた仕返しに来たとしか思えなかった。
これは……たしかにやばい。
勘解由小路
学力 A+
身体能力 B+
思考力 B+
社交性 A+
総合力 A-
備考
見た目は女寝取ってそうなチャラ男だが、実は童貞で彼女とかいたことないピュア男子。非常に面倒見がよく、実はモテているが、女子からの好意に気付かない鈍感。
作者「こういう話が書いてて一番楽しい。でも自分が楽しい作品ほど人気が出にくいからモチベが維持できない……」
宇佐見「な、なるほど?」
「勘解由小路副会長がいい人だった」「防衛戦か……」「女寝取ってそうは草」と思った方は、感想、ブックマーク、ポイント評価、レビューをよろしくお願いします。




