↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鳥衆  作者: 小早川お甘白
7/8

危険なヒクイドリ

 朝の学校で、職員たちは会議をしている。

「今回の職員会議。議題を一つだけ変更します」

 管理職の教頭が一言言う。

「最近、ヒクイドリ・ユウタ君が学校の生徒を傷つけていると」

 数人の教師が首をかしげている。ユウタを知らない教師も多いからだ。

「彼は少し、警戒する必要があります。先日、ダチョウ君を病院送り、生徒会長のオウギワシさんも彼によって羽を引きちぎられ、ハシビロコウさんも背骨にヒビが入り、病院送り」

 教師全員がザワザワとざわつく。

「さらに、捕獲ネットも効かない。これは、何か対策を講じる必要があります」

「対策?」

 ユウタたちの担任の教師が立ち上がる。

「お言葉ですが、ヒクイドリ君は警戒するほどの人物ではありません。本当は大人しくて、優しい子なんです」

「それを証明できる職員は、あなただけです」

「ですが、オウギワシもダチョウも仲良くなってて」

「脅迫されてるんじゃないですか?」

「そんなことは」

 教頭は一言言う。

「あなたの言うことは真実かもしれません。ですが、私たちは生徒の心を知っているわけではありません。最悪のことも想定するのが、我々教師です。私は、あなたを頭ごなしに否定してるわけではありません」

「…………」

 教頭は少し笑って言う。

「私、たまにヒクイドリ君を見ますよ。礼儀正しくて感心します。私はあなたを信じます……ですが、彼の深いところは分からないので、警戒はしますよ」



             *



 ユウタはダチョウと話している。

「あれヒクイドリ。俺、何話してたっけ」

「昨日のご飯の話だよ」

「あーそうだった。昨日の夕飯はー…………なんだっけ」

「じゃあ、スポーツコースはどんな感じなの?」

「あー…………なんだっけ。ヒクイドリ、分かる?」

「僕は普通コースだからこれっぽっちも分かんないよ」

 すると、サキが入ってくる。

「ダチョウ。あまりヒクイドリ君を困らせないでください。そして、クラスが違うので戻ってください。もう少しでホームルーム始まるでしょ」

「やだよー。この脳みそを利用して、チャイムを忘れたと言い訳してやる」

「ブレないアホですね」

 そして、チャイムが鳴って先生が入ってくる。

「ヒクイドリ。ちょっと来れる?」

「え、あ、はい……」

 ユウタは先生に連れられて、教室を出る。

「えー、ヒクイドリ、なんかしたっけ?」

 ダチョウが聞く。

「あぁ、いろいろやってますからね。まず、ダチョウとのバトル、私とのバトル、ハシビロコウのバトル。私とダチョウ、ハシビロコウの負傷を含めると、色々やらかしてますよ」



             *



 教師に連れられるヒクイドリを見る生徒。

「ヒクイドリ……ねぇ」

 そう言って、エナジードリンクを飲み干す。

「あー。夜型の俺はこれがないとやってけないな」



             *



 ユウタが連れてこられたのは、会議室だった。

 大勢の先生が座っている。

「呼び出してごめんね。でも、私たちは確かめないと行けませんからね」

 教頭が口を開けて言う。

「まず、君は問題行動が目立つ……オウギワシさん、ダチョウ君、ハシビロコウさん。この3名の負傷、原因は君だよね」

「…………はい」

 ユウタは頷くしかない。

「ヒクイドリ族については、私もよく知ってる。ケンゾウさんは凄かった……あぁ、ごめんね。その特性を出すなとは言わない。でも、少し自制してほしいと言うか……一応、暴走の解除はできるんでしょ」

「……はい。辞めようと思えば辞めれます……祖父もそうでした。いつもの姿で、強さを誤認させる戦術は常套手段だと……」

 ユウタは下を向く。

「でも、僕は祖父と違うんです。破壊の本能が、血みたいに全身に巡るんです。それを解毒する時間が、長いんです」

 ユウタは、ヒクイドリ族の中でも異端児だった。強化だけのパワーヘッドも、3種類の強化に拡張した。暴走も、すぐに収まるわけじゃない。

「なるほど」

「歳を重ねるごとに、暴走の制御はできるようになりました」

「無理に話さなくても良いんだよ」

 ユウタはバッと顔をあげる。

「これだけははっきり申し上げます。暴走状態の僕も、今の僕も全部が紛れもない“僕自身”です。もし、手に負えないなら僕を撃ち殺」

「黙りなさい‼︎」

 教頭は目を見開く。周りの教師も驚いている。

「命を軽く考えるんじゃありませんよ。自分が死んで良いなんて、絶対に考えてはいけませんよ。かけがえのない、人間じゃありませんか。命じゃないですか」

「…………はい」

「それに、君には良いところもある。君の挨拶は心地がいい。曇りが無いですから」

「ありがとうございます」

「いきなり怒鳴ってすみませんね。もう、戻ってください。お友達が待ってますから……あ、ケンゾウさんのサイン、できればもらえます?」

 ユウタは「ふ」っと吹き出した。

「教頭先生。おじいちゃんのファンなんですか?」

「えぇ。当時の英雄ですよ」



              *



 昼休みになって、2人は朝の呼び出しに触れてくれなかった。

「ねぇ、2人とも」

 ダチョウとサキは同時にユウタを見る。

「どうした」

「どうしました?ヒクイドリ君」

「…………ありがとうね。僕と仲良くなってくれて」

 サキは咳払いをする。

「いつか、あなたを倒すんですから」

「お前みたいなやつのツンデレは需要ないぞ」

「うるさいですね。まぁ、私みたいな柔らかい生徒会長じゃ無理ですか。氷の生徒会長じゃなくては」

「お前が氷だと、もっと怖いからやめろよ」

「わかってますよ。一言多いんですよあなたは」



             *



 ユウタが夕方の学校を出ると、急襲に遭った。

「痛い痛い痛い、なになになに」

「……なんだこいつ。本当にヒクイドリかよ」

 起き上がると、そこにはエナジードリンクを持った、ユウタより少し背の高い男子がいた。

「誰誰、なに」

「俺はフクロウ。夜のハンターだ」

「今、夕方だけど」

「……そこはいいんだよ」

 フクロウ―夜行性で、音もなく飛行する鳥。左右非対称の耳で周囲の音を立体的に聞き取る。

「お前、強いんだって?俺は自称、この学校の裏ボスってやつだ」

「へぇー」

(どうしよう。今朝、先生に注意されたばっかりなのに……)

「で、お前がいると俺のプライドが許さないってわけ。俺、お前に勝てるんだよ。どう?やってみる?」

「いや」

「あぁそう」

 フクロウの飛び蹴りが、ユウタに炸裂する。

「痛い痛い」

「痛いなら戦え。俺を倒せ」

(うぅ、どうしよう。オウギワシさん、ダチョウ君。助けて)

 あいにく、どちらも生徒会と部活。

(あーもう。せめて、怪我をさせない程度に)

 衝撃波を出したユウタはフクロウが繰り出した足を掴むと、握りつぶして、骨にヒビを入れる。

「鬱陶しいなぁ」

 フクロウの腕を掴むと、校門の壁を乗り越えさせて投げる。

 ユウタも、校門の壁に立つ。

「この程度にしてあげるよ……あ、なにここ。高い……ちょ、降りれないんだけど。フクロウ君。助けてくれない?」

「あぁ、そう。俺はその程度のやつってことか」

 フクロウは飛び上がると、ユウタを蹴って落とす。

「うわあ……あ、降りれた降りれた‼︎ありがとう」

「調子にのるな」

 倒れたユウタに、フクロウの蹴りが炸裂する。



            *



 ドタドタと足音がひっきりなしに聞こえる。

「なんの騒ぎですか?」

 サキは少しイライラしている。

「さぁ……見に行きますか?」

 カラスが聞いてくる。

「そうですね。騒がしいのは苦手ですからね」



 フクロウの猛攻を、頭を守ってひたすら耐えるユウタ。

 すると、2人の間に風を起こして現れたのは……

「……オウギワシ」

「あなたですか。久しぶりに見ますね。学校に行ってるんですか?」

「行ってるよ。大体遅刻するけど」

「遅刻でも、出席の扱いになりますから。単位を落とさないようにしてくださいね」

「分かってるよ」

 そう言って、音もなく飛び立つフクロウ。

「大丈夫ですかヒクイドリ君」

 手を貸して立ち上がるユウタは、傷だらけだった。

「よくやられましたね」

「戦闘モードにはならないようにしました。そう言えば、オウギワシさんはフクロウ君を知ってるんですか?」

「……えぇ。ダチョウと戦った後、決闘を仕掛けられました。ダチョウより厄介でしたよ。まぁ、倒しましたけど。彼は厄介ですよ。まぁ、私は挑んでくるたびにぶちのめしてますよ。彼は夕方に勝負を仕掛けて、そこからの夜に真価を発揮します。くれぐれも、長期戦にはならないように。では、私はこれで」

 そう言ってサキは歩いて学校に戻って行った。



 サキは生徒会室に戻る。

「会長。なんでしたか?」

「フクロウでした」

「フクロウ……ですか」

 カラスは相槌を打つ。

「なにかあるんですか?」

「あぁ、いえ。風の噂なんですが、いや、本当に噂なんです。フクロウをリーダーに、不良のような集団がいまして……うちの生徒も何人か。他校のやつは1人。たしか、ハヤブサ。それと、うちの学校のモズだそうです」

「モズさん……が?」



             *



 フクロウは、体育館裏に行った。

「ハヤブサ」

 フクロウは、ハヤブサの肩を借りる。

「どうした」

「ヒクイドリに足やられた……なんだあいつ」

「折られたのか?」

「多分、ヒビが入った」

「ヒクイドリか。オウギワシとどっちが強い」

「絶対、ヒクイドリの方が強い。俺でも、あんなに一瞬でやられるのは無かった」

「そうか」

 ハヤブサはため息をつく。

「で、離れてくれないか?俺もヒクイドリとやらが気になるんだが?」



              *



 カラスは続ける。

「もっとも、彼らは不良と言っても、違法な行為に走らない連中です。やたら好戦的で、周りから不良と呼ばれているだけです……会長?どうかしました?」

「いや、モズさんが……」

「……確かに、モズはあまり学校に来てません。確か、少しだけ会長。彼女の家に行きましたよね」

「うん……まさか、それくらい強いなんて」

「気にするところはそこなんですか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。