外
ユウタは、ため息をついて帰っている。
(やれやれ。今日は色々あったな。帰って寝ようかな)
すると、ユウタの真上に雷のような速さで何かが落ちた。
「ハヤブサ……」
ユウタはソニックブームを飛ばして、戦闘モードに入っていた。
「久しぶりだな。ほら、見ろよ」
ハヤブサは右頬を指差す。
「お前に抉られたんだ。尻の肉を移植されたよ。まぁ、もう特になんともないが。にしても、よく覚えてたな。100人ボコったんだろ?」
「学生証とか名前を聞いたりしたから。機会があったら謝ろうとしてたら、引っ越してね」
「あぁ、そう。じゃあ、お前の謝罪はお前の死だ」
ハヤブサはユウタに向かう。
ハヤブサは善戦していた。ユウタに当たりこそしないが、ユウタの攻撃を避けていた。
すると、ハヤブサは羽を広げて飛び上がる。
「…………彗星か」
ユウタは昔を思い出したかのように言う。
「面白い」
パワーヘッドを召喚する。
ハヤブサは急降下している。
(あいつのことだ。パワーヘッドで強化を……ん?)
ユウタが見えてきたが、頭にパワーヘッドを被っていない。
(あの馬鹿。俺を探すのを諦めたか)
ついに、ユウタに接近する。
(あと80メートル、20メートル6メート)
その時だった。
強烈な拳が、ハヤブサの顔にめり込む。頭蓋骨に、大きなヒビが入る。
「うぎゃあーー‼︎」
衝撃と元々のスピードで、20メートルほど吹き飛んだ。
「……なんだそれは」
擦り傷まみれの顔を上げながら言う。
「パワーヘッド……あぁ、言えばパワーグローブか」
「ありえない……俺の見たパワーヘッドは、被るだけの」
「パワーヘッドには隠し機能があったらしい。僕も最近知った。パワーヘッドを被ったままの力を維持したまま、一点集中の攻撃を繰り出せる。だから、パワーヘッドを被った時の動体視力とパワーで、お前を殴り飛ばした……あぁ、このグローブで握力を50倍に強化できるらしい」
ユウタはパワーヘッドをしまう。
すかさず、ハヤブサは翼を広げて飛んでいった。
ユウタは追いかけなかった。もう、追撃する必要はないから。
「お大事にね」
*
ハヤブサはフラフラと、空を飛ぶ。
「くほ……あいふ……あごぉが、閉ぉじない……」
フクロウもヒクイドリにやられた。
「おぼえてろ、くほやろう……」
*
サキの足は、モズの家に来ていた。インターホンを押すと、聞き覚えのあるかわいらしい声が聞こえた。
『オウギワシさん』
「お久しぶりです。よろしければ、お話ししませんか?」
『どうぞ。話したいことがたくさんあるんです』
かちゃん、と鍵が開いてドアが開いて、小柄で可愛らしい女の子がいた。
「オウギワシさん」
「また背が伸びました?」
「いや、あまり……どうぞ」
「お邪魔します」
サキは家に上がって、リビングに上がる。
「待ってくださいね。ジュースにします?」
「では、それで」
ジュースが来て、モズに続いてサキが座る。
「オウギワシさんが来るのは久しぶりですね……2ヶ月ぶりですかね」
「1ヶ月半です」
「細かいですね。相変わらず」
サキはジュースを一口飲んで、息を吐く。
「時に、モズさん」
「はい?」
「…………いえ、違ったらすみません……あの、フクロウと聞けば分かります?」
「フクロウ……?あぁ。アハハハハハ」
モズは笑い出す。レイピアを握る手が震える。
「ハハハ……あー。フクロウですよね。確か、入学式で居眠りしてた子ですよね。あぁ、すみません。思い出しただけでまた笑っちゃうんです。ツボが浅くて……確か、オウギワシさん。ダチョウと戦ってましたよね」
「…………フクロウのこと、それしか分からないんですか?」
「え?そうですよ。クラスも違いますし」
サキの緊張がほろりと解けた。
「そうですか……それは、すみませんでした」
「なんで謝るんですか?」
サキはジュースを一口飲んだ。
(じゃあ、3人目は誰……いや)
「そうだ。モズさん。最近、私にダチョウ以外にライバルができました」
「え、誰なんですか?」
モズはワクワクした調子で聞く。
「ヒクイドリ君と言う、とても強い子です」
「へぇ。オウギワシさんが認めるなら、強いんでしょうね」
「強いなんてものじゃありません。もう、あれは異次元です。だから、私は今久しぶりに鍛えています」
*
フラフラでハヤブサは帰ってくる。
「おいカカポ」
そこには、誰もいなかった。
「……クほ。いない」
倒れている椅子を立たせ、それに座る。
すると、ドアが開く。
「ハヤブサ?」
そこにはフクロウがいた。
「あのやほうにやはへた」
「え?なんて?」
「こおんなふらたはらかかほをよほんでる」
「え?ま、いいや。とりあえずカカポ呼ぶわ」
いそいそとカカポは来た。
「はいこれ」
肥満気味な彼が差し出したのは、赤い木の実。
ハヤブサが取り上げて食べると、少しずつ傷が回復していく。
「あー。生き返ったわ」
ハヤブサの顎の骨が治ってきた。
「で……あぁ、ヒクイドリか」
フクロウは納得したように言う。
「俺も足折られたな。カカポ、木の実」
カカポは木の実を恐る恐る取り出す。
「治ってきた治ってきた。で、どうする?ヒクイドリ」
「俺とお前でやればできるか?」
「いいのか?昔ボコられたのに」
「別に。俺個人で復讐したいわけじゃない。あいつさえ消えればいいんだ」
「ほーん。ま、俺はヒクイドリとオウギワシかな。狙いは」
*
ユウタは姉のアリアの肩を揉んでいる。
「あー、やっぱユウタは最高だね〜」
「それは良かったよ」
「ユウター。ダチョウとかオウギワシさんと仲良いんだって?私の友達から聞いたけど」
「うん。仲良くさせてもらってるよ」
「そっか。ま、バトルもほどほどにね」
「わかってるよお姉ちゃん。これ以上、病院送りは嫌だからね」
*
カカポは帰ろうとする。
「おい、何帰ろうとしてんだよ」
ハヤブサが低い声で言う。
「で、でも……門限が」
「そんなんどうでもいいんだよ。お前は俺たちの回復と肉壁だぞ。お前だって戦力なんだよ。ま、足手纏いと時間稼ぎ役か」
このグループのリーダーはフクロウだが、実際はハヤブサが仕切っている。フクロウが作戦を立てる。
「フクロウ。夜までヒクイドリとかオウギワシを学校に閉じ込める方法は?」
「…………さぁ。あ、そう言えばモズってやつがいたな。声真似ができるとか」
「モズ?強いのか?」
「……さぁ、見たことがない」
「カカポ……いや、フクロウが行った方がいいな」
ハヤブサは考えを直す。カカポを失うと、大きな怪我の回復ができなくなるからだ。
「ハヤブサ。それは俺でもわかってたこと。カカポ。今日は帰って」
*
モズはお風呂に入ろうと立ち上がる。
「明日は学校に行けるかなー……」
背後に気配を感じる。
「モズさんかな」
「誰?」
「俺はフクロウ」
(フクロウ?オウギワシさんが言ってた人)
「ちょっと協力して欲しくて。声真似得意でしょ?」
「…………」
「どうなのかな?」
「得意……だけど」
「なら、いい」
フクロウは紙を落とす。
「そこに、俺のメアドが書いてある。必要になったら連絡する。ああ、もし誰かに言ったらオウギワシが夜に帰るタイミングを狙って襲う」
そう言って、風が吹いてくる。
振り返ると、閉めたはずの窓とカーテンが開いていた。
「…………やれやれ」
モズは窓を閉めてカーテンを閉める。
「戸締りが行き届いてなかったな…………1発殴った方が良かったかな」
(いや、夜の狩人のフクロウには勝てないか。私でどうにかできる奴じゃないか…………ごめんねオウギワシさん)
フクロウが落とした紙を拾う。
「手を貸すか……オウギワシさんでも勝てないヒクイドリ君が気になるし」
スマホを出して、アドレスを打ち込み始めた。
音もなくフクロウは夜の空を飛ぶ。
(あのでかい家はオウギワシか……さすがは令嬢)
モズの裏切りを予期し、サキの家を下見していた。




