友達と来訪者
お昼になると、自慢の脚力でダチョウが来た。
「ヒクイドリ。昼飯食おうぜ」
すかさず、サキも大慌てで来る。
「ヒクイドリ君。私もいいですか?」
「いいよ」
サキはダチョウを睨みつける。
「ヒクイドリ君。私も友達ですよね」
「え、うーん」
ダチョウは笑いながら言う。
「ほらほら。お前じゃダメだってよ」
「違うよ。ほら、散々暴走しちゃったから、友達って言ってもいいのかって」
サキは苦笑いを浮かべる。
「気にしなくていいんですよ。私はヒクイドリ君に悪い感情は持っていませんから」
「じゃあ、友達で」
サキは胸を張る。
「ほらアホ。私もヒクイドリ君の友達です」
「えー。お前と一緒かー」
「不服なら決闘しましょうか」
「いや、いいや。まだ勝てないから」
ユウタは不思議に思いながら、ウィンナーを食べた。
(仲良さそうなのに、なんで連携して僕を倒さないんだろう……2人なら戦闘モードの僕を五分五分で倒せなくもないのに)
サキもダチョウも、かなりの実力があるのに協力して自分を倒そうとしない。
(まぁ、オウギワシさんプライド高いし。ダチョウ君なら、喜んで協力してくれるのに……オウギワシさんって、なんだかんだ難しいな)
「……なんですか?ヒクイドリ君」
首をかしげて、サキはユウタを見る。
「あぁ、いえ……なんでもないです」
「そうですか」
*
ユウタが家に帰ると、ソファに人が座っていた。
「おじいちゃん……」
「ユウタ」
ユウタの曽祖父。御年、98歳。それでも足腰が動くのは、戦闘力の高いヒクイドリ族の証。
「転校したって聞いて引越しっちゃった」
「引っ越したって……お金は大丈夫なの?」
「昔の賞金がいっぱいあるからな」
「あぁ……」
曽祖父は、無敵の格闘家だった。レスリング、ボクシング、キックボクシングなど全ての格闘技を制した伝説の存在。オリンピックにも出て、金メダルを取ったことさえある。
「まぁ、今の俺は遊んで暮らせるほどの金がある」
とても、98歳とは思えない。筋肉もついてて、熟練の格闘選手にも見える。
「まぁ、この家だと肩身が狭いよなユウタ。穏やかな人たちが多いのに、ユウタは凶暴で」
「……僕はヒクイドリ族の穏やかさと、おじいちゃんの強さを受け継いだんだね」
「そうだなぁ……あ、パワーヘッドは?」
「僕が持つと怖いから、お姉ちゃんが持ってるけど」
「なんだか、久しぶりにパワーヘッドをつけたくなったな」
ユウタは悪態をつく。
「誰がおじいちゃんを止められるの?」
「ユウタなら止められるんじゃないか?」
「いや、流石に僕でも」
「まぁまぁ」
いつの間にか、曽祖父の手にはパワーヘッドが握られていた。
「……!」
「知ってるか?パワーヘッドの持ち主になると、どこにあっても欲しい時に出るんだ。便利だろ」
そう言って、曽祖父はパワーヘッドを被る。
「待って、おじいちゃ」
その時だった。自分は、いつの間にか空中にいた。
壁を突き破って、高層階のマンションの外に放り出された。
「あーもう」
ユウタの目が純黒に光る。
そして、近くの民家の屋根に受け身を取って着地する。
「ご老体だろうから、程々にしてやる」
「初めてだな。ユウタとの直接対決は。改めて名乗ろうか。ヒクイドリ・ケンゾウだ」
「相手から名乗るのは久しぶりだな。ヒクイドリ・ユウタだ。この性格と強さで“ユウタ”は無理があるが」
「いや。いい名前だぞ」
「ありがとう」
ユウタは、近くの公園に吹き飛ばされる。
(ご老体だと侮っていたな……さすがは、伝説の格闘家なだけあるな)
ケンゾウの猛撃を、ユウタは避ける。
(ま、ボチボチ本気になるか)
ケンゾウの腕を受け止めて、半球の遊具に背中を叩きつけると、そこから回し蹴りで横腹を殴る。
(パワーヘッド……やっぱり侮れないな)
ケンゾウは腕を振り払って、今度は蹴りを中心に攻撃をする。
(キックボクシングか?)
「ヘイ」
ユウタは指をクイクイと、ケンゾウを挑発する。
「若造が」
ケンゾウが足をくり出した瞬間、ユウタはすぐさま足を掴んで、そのまま背負い投げのように投げるが、空中で受け身を取られる。
(多少は侮れないな。パワーヘッドを取るか)
所有者のものたちが理解する、パワーヘッドの弱点。それは、自身の激しい運動では外れないが、相手からの攻撃で容易く外れてしまうこと。
(もちろん、おじいちゃんもそれを分かってるか)
ユウタはケンゾウに向かうが、一瞬のジャブで顔が横を向く。
「ジジイを甘く見るな若造。お前がやることなどわかるぞ。俺の孫だからな」
「孫じゃない方が良かったって思えてくるよ」
「え、悲しい」
「悲しんでたら僕に一撃もらうぞ」
ユウタは、さっきのジャブを見る。
(あれか。ゴーストジャブ)
かつてのケンゾウの必殺技。素早く繰り出すジャブにより、相手を怯ませるのが目的だが、威力が強すぎて相手を一撃KOしたと言う技。
延髄斬りに並んで、有名な技でもある。
(これじゃ、間合いを意識しないとまた飛んでくるな。あれだと、あと3発でやられる……なら)
ユウタはケンゾウに迫る。
(ジャブを出せないくらいに攻撃すればいい)
ユウタの連撃が、ケンゾウを襲うがケンゾウは冷静にいて一撃ずつさばく。
(でも、攻撃は出せない)
隙をついて、ユウタはパワーヘッドをはたき落とした。ケンゾウの連撃を避けて、落ちたパワーヘッドを手に取る。
「……久しぶりだな。やってみろ」
ユウタはパワーヘッドをかぶる。
【パスワード・プリーズ】
「マックス」
赤いオーラにユウタが包まれ、ケンゾウに走る。ゴーストジャブを繰り出した時だった。
ユウタにゴーストジャブを出した腕を掴まれる。
骨がミシミシと音を立てる。
「やはり、ユウタ。お前は天才だ」
ユウタのパンチが、ケンゾウの腹をへこませて気絶させる。倒れたケンゾウを、ユウタが支える。
「…………天才なんかじゃない。普通で、アンタに負けるんだ」
パワーヘッドを外して、いつものユウタに戻る。
「さ、戻ろうかおじいちゃん」
肩を貸して、家に戻る。
「…………穴は、破片を集めて直すか」




