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鳥衆  作者: 小早川甘白
6/8

友達と来訪者

 お昼になると、自慢の脚力でダチョウが来た。

「ヒクイドリ。昼飯食おうぜ」

 すかさず、サキも大慌てで来る。

「ヒクイドリ君。私もいいですか?」

「いいよ」

 サキはダチョウを睨みつける。

「ヒクイドリ君。私も友達ですよね」

「え、うーん」

 ダチョウは笑いながら言う。

「ほらほら。お前じゃダメだってよ」

「違うよ。ほら、散々暴走しちゃったから、友達って言ってもいいのかって」

 サキは苦笑いを浮かべる。

「気にしなくていいんですよ。私はヒクイドリ君に悪い感情は持っていませんから」

「じゃあ、友達で」

 サキは胸を張る。

「ほらアホ。私もヒクイドリ君の友達です」

「えー。お前と一緒かー」

「不服なら決闘しましょうか」

「いや、いいや。まだ勝てないから」

 ユウタは不思議に思いながら、ウィンナーを食べた。

(仲良さそうなのに、なんで連携して僕を倒さないんだろう……2人なら戦闘モードの僕を五分五分で倒せなくもないのに) 

 サキもダチョウも、かなりの実力があるのに協力して自分を倒そうとしない。

(まぁ、オウギワシさんプライド高いし。ダチョウ君なら、喜んで協力してくれるのに……オウギワシさんって、なんだかんだ難しいな)

「……なんですか?ヒクイドリ君」

 首をかしげて、サキはユウタを見る。

「あぁ、いえ……なんでもないです」

「そうですか」



              *



 ユウタが家に帰ると、ソファに人が座っていた。

「おじいちゃん……」

「ユウタ」

 ユウタの曽祖父。御年、98歳。それでも足腰が動くのは、戦闘力の高いヒクイドリ族の証。

「転校したって聞いて引越しっちゃった」

「引っ越したって……お金は大丈夫なの?」

「昔の賞金がいっぱいあるからな」

「あぁ……」

 曽祖父は、無敵の格闘家だった。レスリング、ボクシング、キックボクシングなど全ての格闘技を制した伝説の存在。オリンピックにも出て、金メダルを取ったことさえある。

「まぁ、今の俺は遊んで暮らせるほどの金がある」

 とても、98歳とは思えない。筋肉もついてて、熟練の格闘選手にも見える。

「まぁ、この家だと肩身が狭いよなユウタ。穏やかな人たちが多いのに、ユウタは凶暴で」

「……僕はヒクイドリ族の穏やかさと、おじいちゃんの強さを受け継いだんだね」

「そうだなぁ……あ、パワーヘッドは?」

「僕が持つと怖いから、お姉ちゃんが持ってるけど」

「なんだか、久しぶりにパワーヘッドをつけたくなったな」

 ユウタは悪態をつく。

「誰がおじいちゃんを止められるの?」

「ユウタなら止められるんじゃないか?」

「いや、流石に僕でも」

「まぁまぁ」

 いつの間にか、曽祖父の手にはパワーヘッドが握られていた。

「……!」

「知ってるか?パワーヘッドの持ち主になると、どこにあっても欲しい時に出るんだ。便利だろ」

 そう言って、曽祖父はパワーヘッドを被る。

「待って、おじいちゃ」

 その時だった。自分は、いつの間にか空中にいた。

 壁を突き破って、高層階のマンションの外に放り出された。

「あーもう」

 ユウタの目が純黒に光る。

 そして、近くの民家の屋根に受け身を取って着地する。

「ご老体だろうから、程々にしてやる」

「初めてだな。ユウタとの直接対決は。改めて名乗ろうか。ヒクイドリ・ケンゾウだ」

「相手から名乗るのは久しぶりだな。ヒクイドリ・ユウタだ。この性格と強さで“ユウタ”は無理があるが」

「いや。いい名前だぞ」

「ありがとう」



 ユウタは、近くの公園に吹き飛ばされる。

(ご老体だと侮っていたな……さすがは、伝説の格闘家なだけあるな)

 ケンゾウの猛撃を、ユウタは避ける。

(ま、ボチボチ本気になるか)

 ケンゾウの腕を受け止めて、半球の遊具に背中を叩きつけると、そこから回し蹴りで横腹を殴る。

(パワーヘッド……やっぱり侮れないな)

 ケンゾウは腕を振り払って、今度は蹴りを中心に攻撃をする。

(キックボクシングか?)

「ヘイ」

 ユウタは指をクイクイと、ケンゾウを挑発する。

「若造が」

 ケンゾウが足をくり出した瞬間、ユウタはすぐさま足を掴んで、そのまま背負い投げのように投げるが、空中で受け身を取られる。

(多少は侮れないな。パワーヘッドを取るか)

 所有者のものたちが理解する、パワーヘッドの弱点。それは、自身の激しい運動では外れないが、相手からの攻撃で容易く外れてしまうこと。

(もちろん、おじいちゃんもそれを分かってるか)

 ユウタはケンゾウに向かうが、一瞬のジャブで顔が横を向く。

「ジジイを甘く見るな若造。お前がやることなどわかるぞ。俺の孫だからな」

「孫じゃない方が良かったって思えてくるよ」

「え、悲しい」

「悲しんでたら僕に一撃もらうぞ」

 ユウタは、さっきのジャブを見る。

(あれか。ゴーストジャブ)

 かつてのケンゾウの必殺技。素早く繰り出すジャブにより、相手を怯ませるのが目的だが、威力が強すぎて相手を一撃KOしたと言う技。

 延髄斬りに並んで、有名な技でもある。

(これじゃ、間合いを意識しないとまた飛んでくるな。あれだと、あと3発でやられる……なら)

 ユウタはケンゾウに迫る。

(ジャブを出せないくらいに攻撃すればいい)

 ユウタの連撃が、ケンゾウを襲うがケンゾウは冷静にいて一撃ずつさばく。

(でも、攻撃は出せない)

 隙をついて、ユウタはパワーヘッドをはたき落とした。ケンゾウの連撃を避けて、落ちたパワーヘッドを手に取る。

「……久しぶりだな。やってみろ」

 ユウタはパワーヘッドをかぶる。

【パスワード・プリーズ】

「マックス」

 赤いオーラにユウタが包まれ、ケンゾウに走る。ゴーストジャブを繰り出した時だった。

 ユウタにゴーストジャブを出した腕を掴まれる。

 骨がミシミシと音を立てる。

「やはり、ユウタ。お前は天才だ」

 ユウタのパンチが、ケンゾウの腹をへこませて気絶させる。倒れたケンゾウを、ユウタが支える。

「…………天才なんかじゃない。普通で、アンタに負けるんだ」

 パワーヘッドを外して、いつものユウタに戻る。

「さ、戻ろうかおじいちゃん」

 肩を貸して、家に戻る。

「…………穴は、破片を集めて直すか」

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