友達宣言
現在――
ユウタが帰っていると、誰かが自分の前に出る。
「よ。ヒクイドリ」
長身の男子――
「ダチョウ君」
「久しぶりだな」
「…………退院したんだ。ごめんね」
ユウタはダチョウを素通りする。
「アホの俺でも覚えてるんだぞ。珍しくないか?」
「……なんで?」
「俺の家族ってさ、皆アホなんだよ。数分前にあった人さえ忘れてるほどの。でも、俺はオウギワシとヒクイドリは覚えてる」
ダチョウは、ユウタの方に腕をかける。
「なんでだと思う?そうだな。お前たちが強いからだ。俺は強いやつが大好きだ。覚えられるからな」
「…………」
「でも、オウギワシはまだしも、お前は戦いたくない。そこで俺は考えたんだ。ダチになれば良いんじゃないかって」
「え」
ユウタは肩にあるダチョウの顔を見る。
「どう?ダチなら何も気にしなくてよくない?」
「でも、まだ病院送りに」
「大丈夫だよ。病院なんて慣れてるから」
「でも」
「あー、焦れってーな」
ダチョウのパンチがユウタに当たる。
痛みで、ユウタは頬を抑える。
「え、あれ……あ、ごめん。戦えばどうかって」
「いや、これでいいから。でも」
「ん?」
「久しぶりにイラッとしたよ。あともう少しで戦闘モードになりそうだった」
「はーん。ま、吐き出せば良いんじゃねーの?俺だって、やられてお終いじゃないぞ。特訓したんだからな」
すると、ユウタから強い風が吹く。ソニックブームだ。
「…………いや、やっぱりいいや」
ユウタはダチョウを素通りして、歩いて行った。
「んー。あいつ、まだ学校かな」
ダチョウは走って、来た道を引き返す。
*
学校を出るサキ。
「お、いた。オウギワシ」
「アホ。退院したんですね」
彼女の前には、ダチョウがいた。
「ヒクイドリに会ってきたぞ。相変わらずだな」
「ちょっと待ってください。ヒクイドリ君の家って、ここから30分くらいですよね。あなたの脚力は化け物ですか。私、さっき、ハシビロコウさんと飛行対決してたんですけど、そんなに速くはないんですけど」
「そうなの?勝った?」
「勝ちました。あと、あなたの足はどれくらい速いんですか?」
「めっちゃ速い」
「忘れたことは理解しました。で、何か用ですか?」
「ヒクイドリに会ってきた」
「さっき聞きました」
「そうなの?」
サキはため息をつく。
「で、ヒクイドリ君に会って何を?」
「友達になった」
「そうですか…………え?」
サキは背伸びして、ダチョウの胸ぐらを掴む。
「詳しく聞かせてください。私が先じゃないんですか?」
「落ち着けよ。ヒクイドリ、お前のこと、なんも思ってないんじゃねぇの?」
「バカ言わないでくさい。私は、ヒクイドリ君のライバルです。私が彼を必ず倒すんですから」
「奇遇だな。俺もヒクイドリを倒すんだ」
「そうですか。なら、あなたが降りてください。私だけがヒクイドリを倒すのです」
「やだ」
「そうですか。なら、また病院に送ってやるからグラウンドに顔出せやテメェ」
サキの口が悪くなった。それに気づいて、胸ぐらを掴んだ手を離して、サキは咳払いをする。
「ダメですね。このアホといると知能が下がってしまいます」
「褒めてるの?」
「あなたには善悪がないんですか?」
「てか、また病院に送るって言った?じゃ、行こうぜ。入学式以来だし、俺もまた強くなってるぜ」
「はぁ……分かりましたよ。3分だけですからね」
グラウンドに出ると、上着を脱ぎ捨てるダチョウ。
白い羽を広げるサキ。
「やー。懐かしいなー。また挑発しようか?」
「病院じゃないところに送りますよ?」
「こわ」
早々に、サキはレイピアを抜いて飛び上がると、高速で滑空してダチョウに迫る。
「お、見たことない技」
避けると、またサキは飛び上がって突撃を繰り返す。
「甘いな」
避けると同時に、サキの横腹を殴りつける。
ステップを受け身代わりに、サキは地面に着地した。
見合い、同時に突撃する。
武器と素手だと、あまりにも差があるように見えるがダチョウは難なく攻撃をしている。レイピアも振るが、ダチョウは効いてないようだ。
(なにこの筋肉バカ。鍛えすぎて剣さえ通らない)
慌ててダチョウと距離を取るが、彼の脚力ですぐに追いつかれて一撃を入れられる
「……骨でも折れるんじゃないかと思いましたよ」
「さぁ。筋肉でもつけたらどうだ?」
レイピアをブンブン振るサキ。
「まず、口から殺した方がいい?あ?どうしたい?」
「さぁ」
「お前はもう手加減する相手じゃないからやってやるよ」
サキはレイピアをしまうと、胸ポケットから取り出したのはサバイバルナイフのように、短い短剣。
「それがお前の本気?オウギワシ」
「本気じゃなかったらなんだよ。そっちこそ本気じゃないだろうが」
「いやー。本気とかわかんねぇな」
「ダメだこのバカ」
サキは、ダチョウに突撃すると、短剣の連撃をダチョウに喰らわせる。
(なんだこいつ、速い)
ダチョウは慌てて距離を取るが、サキが猛追する。
「さっきの勢いはどうしたアホ野郎」
ダチョウは攻撃を喰らいながら、全速力でサキから離れる。
(さっきより全然速い……オウギワシめ。最初に俺と戦った時は手加減してたのかよ……こりゃダメだ)
ダチョウは、サキの周りを走ってクルクルと回る。
「そんなの通じねーよ」
短剣を投げると、ダチョウに刺さる。
「いって」
(ち、動体視力もかよ……でも、お互い丸腰。オウギワシは非力)
逃げるのではなく、立ち向かうダチョウ。
だが、そうは行かなかった。殴りかかろうとしたが、ジャンプしたサキに頭を掴まれ、頭を地面に叩きつけられ、背中に乗られる。
そして、ガスガスと肘を頭に入れられる。
「ちょ、待って痛い……参った参った。俺の負け」
サキはダチョウから降りる。
「ほら。アホは私に勝てませんよ」
サキは襟を整える。
「お前、本気でバトルすると口が悪くなるだろ」
ダチョウは起き上がる。
「あーあ。切り傷がこんなに」
ダチョウは血まみれの腕を見る。
「浅いから3日経てば治りますよ。それに、それで済んだだけマシと思いなさい。前は入院したでしょう」
「そうだな」
「それに」
サキは胸を張って言う。
「ヒクイドリ君のライバルは私です」
「まだ言ってんのかよ。ライバルは俺だ」
「私です」
「俺だ」
「私です」
*
翌日――
ユウタの机の前に、サキとダチョウがいる。
「ヒクイドリ君。あなたのライバルは私ですよね?」
「いいや。俺だろヒクイドリ」
ユウタは困惑していた。
「えー、どっちも決められないよー」
「じゃあ、ヒクイドリ君」
サキが身を乗り出す。
「私の方が強いですよね?昨日、ダチョウを倒しました。今もトレーニングを欠かしません。どうですか?私がライバルですよね」
「お前、泣いてたらしいじゃん。俺は泣かなかったぞ」
「あなたは逃げようとしたじゃないですか」
2人の喧嘩は不思議な気がする。学年一の秀才と学年一のアホがユウタで喧嘩をしている。
「じゃあダチョウ。勝負しましょうか?どっちがヒクイドリ君と長く戦えるか」
「そんなことしなくても、俺はヒクイドリの友達だぞ」
「な……ちょ、ヒクイドリ君。私も友達ですよね」
「う、うん。お互い、友達だよ」
すると、授業で入ってきた先生に「ダチョウ、自分のクラス戻れ」と言われた。
ダチョウだけが、クラスが違うのだ。
「せんせー。ヒクイドリのダチは俺ですよね?」
「知らねーよ。ダチョウ、もうすぐで授業始まるぞ。お前、スポーツコースだろ。着替えてないだろ」
「座学ですよー。ヒクイドリ、授業なんて無視して俺と戦おうぜ」
「おーいダチョウ、ヒクイドリの成績を落とさせる気かー?あと、オウギワシ、お前も座れ」
「…………」
サキは、観念したように自分の席につく。
「ダチョウ……」
「嫌です!なにがあろうと、俺はヒクイドリとバトルするまでここから離れません!」
「ダチョウ君」
ヒクイドリが名前を呼ぶ。
「お、バトルする?」
「授業受けて」
「えー……あ、はい」
いそいそと、ダチョウは自分の教室を出る。
「え、ヒクイドリ……なんかしたのか?」
先生が聞く。
「友達ですから」
その言葉を聞いて、サキは机を殴った。
「……あのアホに先を越された。私のプライドが」




