再戦(?)
校庭を眺めながら、お弁当を食べるユウタ。
あれから、明らかにみんなに避けられてる。
当たり前か。みんなに人気の生徒会長をボコボコにしたんだから。
「わ……」
不意に、足を蹴られる。
「すみません。ヒクイドリ君。彼女、無口なもので」
灰色の髪の長身の女性。その隣に、ピンクの髪の小柄な女性。
「こんにちは。私はトキ・ユウカです。彼女はハシビロコウ・ユカリ」
「あ、あぁ……」
「彼女、『戦いたい』と言っています。どうしますか?」
「え、あ、いやいや。僕、その。戦いとか」
やんわりと逃げようとしたら、ユカリが肩を掴む。
「やれ。ボケカス」
「え、ボケカス?」
無理矢理、グラウンドの真ん中に連れてこられる。
「えー……いいんですか。ダチョウ君みたいに入院しても知りませんよ?」
「知るかボケ」
「分かりましたよ……せめて、峰打ちで」
その時だった。
ユウタはすぐさまユカリの足をかけ、倒れたユカリの首を掴む。
「お前の体幹、随分強いな。経験上、あぁ言うやつはひょいひょい避けまくって、疲れた隙を狙って猛撃を浴びせる……よく出来た戦術だが、どちらにしろ僕は倒せないな」
ユウタは一つため息をつく。
「僕をボケカスか……礼とは言わんが、良いものを見せてやろう」
ユウタは手を離すと、どこからトサカのようなものを取り出す。
「パワーヘッド。ヒクイドリ族に伝わる本来の戦闘力を引き出す道具……だが、僕の場合はどういうわけか、モードが3つあってね。最高のものを見せよう」
ユウタはパワーヘッドを頭の上に着ける。
【パスワードプリーズ】
パワーヘッドから声がする。
「マックス」
ユウタは赤いオーラを纏う。
「やはり、これが一番だな」
ユカリは翼を広げて、上空に飛び立つ。
(まずい……私がやられてしまう)
ユウタは砂を手でいっぱい掴むと、ユカリに向けてフルスイングで投げる。
ユカリは必死に避ける。
ユウタの投げた砂の飛距離は、直線距離に変換すると約200メートル。
ほとんどは100メートルに到達すると、風圧と衝撃でバラバラになってしまう。
「あ……」
ユカリの目に、砂が当たり目が閉じる。
「うぁ、あ……」
フラフラと滑空しながら落ちてくる。
ユウタは、地上に着地する寸前で、サッカーボールのようにユカリを蹴り飛ばす。
強烈に吹き飛び、奥の体育倉庫に背中を強く打ち付ける。
「いた……ぁ」
ユカリは腰を押さえる。
「もう終わりか?でかい口を叩いておいて、その程度なのか」
「はー、はー……あ」
立ちあがろうとしたが、背中の痛みでうずくまる。
(なに、こいつ……さっきの弱そうなヒクイドリはどこに行ったの……)
「立ち上がる強さ……それは讃えよう」
ユウタはユカリに手を伸ばす。
「あ……ありがとう」
手を取って立ち上がれると思いきや、強烈に投げ飛ばされる。
「だが、手加減はしない。愚かだな。僕に助けられると思ってるのか」
「…………」
すると、ユウタはくるりと振り返る。
「オウギワシか」
「ヒクイドリ君。元に戻りなさい」
「元に戻る?強さか?人格か?強さならこれで元に戻ってるが?」
「もちろん、人格です」
「でも、僕はまだ暴れ足りない。この女が伸びてるからな」
親指で、ユカリを指差す。
「それとも、オウギワシが相手するのか?3割未満の僕に勝てないオウギワシが?」
「……私も、また鍛え直しています。一筋縄では行かないと思いますけど?」
「でかい口だな。でかい口を叩く奴は大概負ける。最終的には泣いて命乞い。誰がお前なんかの命を奪うかって話だ」
ユカリは2人の会話を聞く。
(なに……本当にヒクイドリが別人みたい)
「まぁ、これだけは出したいって技があったが」
ユウタは人差し指を立てて、クルクルと回す。
段々回す速さが上がり、範囲は狭くなる。
そして、サキに向けて指を差した時、サキが4メートルほど強烈に吹き飛んだ。
「簡易式な空気砲だ。空気で空気を集め、圧縮させて爆発させる」
サキに近づこうと足を進めるが、ハシビロコウはユウタの足に抱きつく。
「ん?」
「させない……」
「邪魔」
顔を蹴って、無理矢理ユカリを剥がす。
「あ……」
すると、頭を抱えたユウタがそこにはいた。
「あ〜〜〜〜どうしよー。お姉ちゃんのパワーヘッドが出てきて、女の子の顔を蹴っちゃったなんて……うぅ。怒られる」
ユカリは呆気に取られる。
(え、ヒクイドリ・ユウタが……元に戻った)
そして、ユウタはユカリに土下座をする。
「大変申し訳ありませんでした。治療費を払わせていただきます」
「え、いや……」
「ハシビロコウ!」
ユウカが、ユカリに駆け寄る。
「大丈夫?」
「いや、背中が」
「あー。背中の骨もですか。なんでも言ってください。下僕でも何にでもなります」
「えー」
いきなりそんなことを言われても、自分にはどうすることもできない。
「それより、あそこで伸びてるサキを……」
「オウギワシさん……あ」
ユウタが見る先には、オウギワシと話している女子生徒。
「あ、お姉ちゃん……」
すると、彼女は振り返ってユウタを見る。
「ゴルァ、ユウタ。女の子に傷作るなんて許されねぇからな。帰ったら覚えてろ」
そう言って彼女は、ヒクイドリの脚力で校舎に戻って行った。
「あー。夕飯抜きとお菓子禁止……いや、僕が悪いんだけど」
「……ヒクイドリ。あの人は?」
ユカリがユウタに話しかける。
「僕の、姉です。ヒクイドリ・アリアです……このパワーヘッド、いつ自分が使うか分からないので、姉に預けてたんですけど……使いどきになると出てきちゃうらしいです……」
「なるほど」




