ハシビロコウ・ユカリ
ダチョウは入院することになった。肋骨が2本折られていたらしい。
サキは先生と話しているユウタを見ている。
「ヒクイドリ君。どうかなさいました?」
「あ、あの、先生にダチョウ君の入院先を……」
「オウギワシさん。こいつ、またダチョウをボコさないか心配で教えられないんだ」
「……そうですか。ならば、私も同伴しましょう。昨日は不意打ちですし」
ユウタは、「そこは譲らないんだ」と小さくつぶやいた。
放課後――
ユウタは見舞品を持って、サキと歩く。
「ヒクイドリ君。私、また鍛え直しています」
「……そうですか」
「あぁ、お姉さんには怒られましたか?」
「いえ。バレてませんでした。あれ
ほど目立ってのに。多分、お友達と話してて気づかなかったんです……」
病室に入ると、そこには昼寝をするダチョウがいた。
「起きなさい」
「………ん?あ、オウギワシだ。お。ヒクイドリ!」
「騒がしいですね。同室の方の心中をお察しします」
この2人の仲がいいことくらい、ユウタも分かっている。
「ヒクイドリ。またバトルしようぜ」
「…………」
「ヒクイドリ?」
「ごめんね」
「ん?」
「僕、ダチョウ君を散々ボコボコにしちゃった」
しばらく、沈黙。
「ああ、気にすんな。怪我なんて治るんだし。病院なんて1度や2度じゃないし」
ダチョウは怒っていなかった。むしろ、喜んでいた。
「俺、入学したての時にオウギワシに喧嘩売ったんだよ。こんな女が猛禽類最強なわけないって。散々煽って表に出したら、まぁ、これが強くってねぇ。一撃与えるのもやっとだった。それでも、ダメージは受けてたけど」
「そのせいで、あなたのあだ名はアホですけどね。入学当初から有名だった私を煽って負けたんですから」
サキはレイピアを握りしめる。
「再戦なら、受けて立ちますよ」
「お、いいね。じゃ、俺も鍛えないとな」
*
病院を出て、2人は帰路に着く。
「ダチョウはまたあなたとバトルをしたいそうです。それに、元々彼は怒っていなかった。自業自得なことくらい、あのアホな脳みそでも分かりますよ」
「……そうですか」
「どうかなさいました?そう言えば、ヒクイドリ君は戦闘モードの時は別の人格があるのですか?」
「……いえ、無いです。頭の中に破壊の本能がひたすら流れ込んでくるんです。あくまで、僕の感覚です」
「なるほど。でも、私はあなたを倒します。これは変わりません」
「…………」
折れたように、ユウタは息を吐く。
「分かりました。倒してみなさい」
そう言ってユウタはサキより速く歩いた。
「あぁ、あと一つ……」
ユウタは振り返ってサキを見る。
目が、純黒……
「挑むと言うなら、僕もお前を滅多打ちにする。これだけは覚えておけ」
そう言って、家の屋根に飛び移って帰って行った。
*
翌日――
「サキさん。ハシビロコウが『飛行レースをまたやりたい』と言っています」
生徒会室で、彼女の同級生ハシビロコウ・ユカリの友人兼通訳のトキ・ユウカが言ってきた。
「あぁ、ごめんなさい。後日にしてくれますか?」
「『忙しいの?』とハシビロコウが言っています」
「いや。トレーニングを。ライバルができましたので」
「『それは誰?』とハシビロコウが」
「ヒクイドリ君。この前、ダチョウをボコボコにした……」
「あぁ、彼。そういえば羽がちぎられたんだって?」
ユウカがサキに言う。通訳以外はタメ口。
「えぇ。あと1週間で治りますので……」
「…………ユウカ。行くよ」
ユカリがユウカの手を引く。
「ハシビロコウ?どうしたの?」




