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鳥衆  作者: 小早川お甘白
1/8

ライバル宣言

 とある学校――

 獣人の中でも、特に鳥の生徒が多い学校。

 そんな学校で彼、ヒクイドリ・ユウタは生活をしている。

「おいヒクイドリ。バトルしようぜ」

「え、あ……いや、僕。バトルなんか……」

「お前が強いことくらい知ってるんだよ」

「でも……」

 すると、2人の間に白髪の女子生徒が入ってくる。

「本人が嫌がってるのに、戦うと言うのは良くないですよ」

 にこやかな笑顔で言うのは、生徒会長のオウギワシ・サキ。清楚で容姿端麗で、誰にでも優しい。

 そして、彼女は猛禽類最強の称号をも持っている。

「……わ、わかった」

 そう言って彼は下がっていく。

 彼女の肩書を真っ先に理解しているから。

「お、オウギワシさん……ありがとうございます……僕なんかを助けてくれて」

 彼女は笑って言う。

「“なんか”ではありませんよ。ヒクイドリ君は生徒以上に、私のクラスメイトなのですから。さて、ホームルームが始まってしまいますよ」


             *


 昼休みになると、戦いたい連中がうるさいのでユウタはいつも外でご飯を食べていた。

「はぁ……」

 自分が強すぎるせいで……もっとも、こんな性格で友達なんてできなかった。

「あ、ヒクイドリだ」

「え……」

 いつの間にか、大柄な男子がいた。

「俺ダチョウ。ここが廊下かなって思ってたんだけど、違くて。自分の教室とか分からなくてさ」

「あ、あぁ……」

「ま、いいや。バトルしない?俺、強いから」

「え、え……いや、ダチョウ君が強くても、僕じゃ相手にすらならない……」

「え、ヒクイドリって弱いの?」

「ううん。全然逆……」

「いいじゃん。俺、強いやつ大好き。いつでも覚えてられるもん」

「でも……」

「いいから」

 ダチョウはグイグイとヒクイドリの腕を引っ張ってグラウンドの真ん中に連れ出す。

「やろうぜ……」

 ユウタは乱暴に頭をかく。

「分かった。どうなっても知らないから」

「お、そうこなくっちゃ」

 すぐさま、ユウタの周囲にソニックブームが起きるがダチョウは高速で後ろに回り込む。

(ヒクイドリ、もらった)

 すぐさま、ユウタの裏拳がダチョウの顔に当たる。

 間髪入れず、ユウタの蹴りの応酬。

 ダチョウは、すぐさま走ってユウタから距離を取るが、後ろに回ったユウタに飛び蹴りをされて2メートル吹き飛ぶ。



「おい、見ろよ。アホのダチョウがヒクイドリとバトってるぞ」

 廊下の窓から、グラウンドを見てる生徒たち。

 サキは立ち上がって野次馬に混ざってグラウンドを見る。

「ヒクイドリ君……カラス」

「会長……」

 黒髪の男子生徒、カラス。

「先生に粘着ネットの手配を」

「粘着ネット……でも、それは……」

「なんですか?」

「ヒクイドリのレベルだと、粘着ネットは引きちぎられる……」

「いいから。少しでも注意を逸らすだけでいいんです。私はダチョウの危機を感じたら彼と戦います。頼みました」

 そう言ってサキは白い羽を広げて窓から飛び立つ。



 ダチョウは息を切らしながら、四つん這いで移動する。

(逃げないと……ダメだ。殺される)

 追いついたユウタがダチョウの尻を蹴って倒す。

「立て。僕に勝負を挑んだのはお前。所詮、口だけの雑魚か」

 ユウタはゆっくりと足を上げて。ダチョウの頭を踏みつける。

「僕の足蹴りは鉄扉を凹ませるパワーがあるそうだ。試してみないと分からないが……」

 ユウタが思いっきり踏みつけようとするが、ダチョウは転がって回避して起き上がる。

「雑魚は粘るから嫌いなんだ」

「俺は、はぁ……雑魚じゃないね」

 息を切らしながら言うダチョウ。

「馬鹿の一つ覚えだな」

 ユウタに飛びかかるダチョウ。

「やけくそは痛い目を見る」

 足をかけてダチョウを倒すと、腹を蹴る。鉄扉を凹ませる力で。

「あああーーー‼︎」

 断末魔が響く。

「うるさい。聞いてられん。ま、息の根止めれば良いか」

 再度、蹴りを構えるユウタ。

「ヒクイドリ君!」

 すぐ正面に、オウギワシ・サキがいた。

 構えたもんだから、とりあえずダチョウにもう1発蹴りを喰らわせる。

「ヒクイドリ君……もう、いいのです。戦わなくて。このアホも十分分かったことですし」

「…………」

「だから、戻ってください」

「……ま、そうだな。あいにく、女を殴る趣味はない」

 ほっとしたのも束の間、ヒクイドリが残像を作る勢いでサキに近づく。

 すぐさまサキは、羽を広げて飛び上がって回避する。

 空から見たユウタの目は、純黒と表しようがない。

(あれが、ヒクイドリ君の力……)

 自分は飛べる。対するユウタは飛べない。

(非力なので、こちらは武器を使わせていただきます)

 腰に刺しているレイピアを抜く。

 その瞬間、自分と同じ目線にユウタがいた。

「あ……」

 顔を掴まれて、為す術なく地面に叩き落とされる。

 一瞬だけ見えた、砂の盛り上がり。

(まさか……あの砂山を踏切台にして……)

 ぼんやりする視界。

「飛ばれたら困るからな。引きちぎっておいた」

 恐る恐る、風通しのいい右肩を見る。

「きゃあああーー‼︎」

 翼が引きちぎられていた。

「しばらくすれば、また治るんだろ?僕らは傷を治せるからな。爪みたいに……な」

 ユウタがゆっくりと近づく。

 レイピアを探すが、遠くにある。あの時、強く握っていなかったから。

「僕は攻撃を攻撃で返す。防御してくるんなら、攻撃で返す。それだけは覚えろよ。生徒会長さん」

 パキパキとユウタの指が鳴る。

 生まれて初めてだった。サキの目に、涙が溢れたのは。

「やめて……ヒクイドリ君」

 でも、このまま泣いて命乞い。

 プライドが許さなかった。

 素手でもなんでも、彼を倒すしかない。

 翼をしまって、ユウタに立ち向かう。

「これだから雑魚は」

 呆れた顔でユウタは、片手だけでサキの両腕を掴んでバンザイをさせる。

「お前を動けなくさせるなんて、両手があれば充分だな」

 足をかけて、サキをゆっくりと倒す。

「さて、どうやって」

 その時だった。

 ネットがヒクイドリに被さる。

「……あ」

 粘着ネット。凝固剤が即座に固まって、対象を動けなくさせるもの。

 すぐに引きちぎるユウタ。

「僕がこんなので。笑えてくる……」

 ネットが発射された方角を見る。

「良い度胸の連中だな」

 すぐさま、サキはユウタの足を掴む。

「ヒクイドリ君……!」

「面倒な野郎……」

 ユウタの声が小さくなる。

「…………ごめんなさい」

 かすかに聞こえた声。

 グラウンドから校舎裏まで、一っ飛びでユウタは消えていった。

 カラスがすぐに駆け寄る。

「会長……」

「良い。私より、まずはダチョウを優先してください。あのアホの意識と記憶があるうちに」

「は、はい……!先生方は会長を運んでください!」



             *


 ユウタは、屋上で膝を抱えて座っている。

「ヒクイドリ君……」

 振り返ると、後ろには包帯が見えるサキ。

「……あ、オウギワシさん」

「お強いんですね。私も、生まれて初めて恐怖を感じました」

「……ごめんなさい」

「謝ることはないです。私は怒っていません」

 サキはユウタの隣に立つ。

「なにか、悔やみですか?」

「……はい。このまま帰ると、あんなに野次馬が……お姉ちゃんに怒られます」

 サキはクスリと笑う。

「お姉ちゃん、怖いんです。顔を掴んでしまったから、『女の子の顔を傷つけるな』と怒られます」

「ヒクイドリ君のお姉さんも、お強いんですか?」

「いえ……あまり強くありません」

「そうですか。安心しました」

「え?」

 サキは一つ息を吐く。

「私は、いつかあなたを倒します」

「……え」

「私のプライドはボロボロです。なので、私はあなたを倒します」

「倒すって……そんな」

「えぇ。あれは不意打ちなので」

「いや、完全に」

「不意打ちです」

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