第2章:時計の囁き
第2章:時計の囁き
牢獄の夜は果てしなく長かった。
彼は天井を見つめていた。3年。ここに来てから一度も外の空を見ていない。
錆びた鎖が手首を締め付ける。体中傷だらけだ。
王に裏切られた罪で、地下牢の最下層に投げ込まれた。
「もう終わりだ...」
その時だった。
ポケットの中で、かすかな光が灯った。
誰も気づいていない。看守も、他の囚人も。
彼はゆっくりと手を伸ばす。
そこにあったのは、小さな懐中時計だった。
銀の蓋。古い模様。だが間違いなく彼のものだ。
子供の頃、父からもらった唯一の形見。
「なぜ今...?」
震える指で蓋を開く。
中から青い光が漏れ出した。
カチッ... カチッ...
針は逆回りしている。12から11へ、11から10へ。
普通の時計じゃない。
突然、頭の中に声が響いた。
女の声。優しく、だが悲しげな声。
「よく頑張ったね...」
「誰だ!?」
「私はこの時計。お前を助けに来た」
「お前は選ばれた者。異世界へ行く運命の者」
彼は目を見開いた。
「異世界?何を言ってる...」
「時間が来た。お前の檻はもうすぐ壊れる」
「だがその前に、一つだけ約束してほしい」
時計の光が強くなる。青い炎が鎖に触れる。
金属が熱を持ち始める。
「何の約束だ...?」
「新しい世界で、誰かを愛してほしい」
「一人ぼっちで死なないでほしい」
その瞬間、遠くで鐘の音が鳴った。
ドォォン...
看守の足音が近づく。だが彼はもう笑っていた。
時計が再び囁く。
「怖くないよ。私はずっと一緒だ」
青い光が爆発する。
鎖が溶け、檻が揺れる。
「第1の扉が開く」
彼は立ち上がった。
3年ぶりに、自分の足で。
外の世界が、彼を呼んでいる。




