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「クゥ・ルーイを買ってどうするの?」
不思議そうにアイリスが首をかしげる。
カミラが腕を組んで誇らしげに顎を上げた。
「売るわ!」
「ええ!!あれ、すごく不味いよ!?」
あまりに堂々と言い切られたが、アイリスが慌てて止める。
レイヴァンドもその認識に異存はないので不思議そうな顔のままだ。
「おまえ達はプロデュースの仕方を間違っているのよ」
カミラは腰に手を当ててアイリスの前で人差し指を左右に揺らす。
アイリスはその指とカミラの顔を交互にみつめて目を瞬かせた。
「プロデュース?」
「レイヴァンド殿下やそちらの大司祭様は、実際にルウイ村を訪れたことはおありなのかしら?」
カミラが不意に二人に問いかけた。
二人は静かに首を振る。
「いや。訪ねたことはないな」
「私もです」
「そうでしょうね?」
カミラは予定どおりの答えに頷く。
アイリスはカミラが何を言おうとしているのか分からずカミラを見つめたままだ。
「まあ、女性好みの発想ですから、殿方が訪れたところで思いつくかどうか分かりませんが…」
「えっと、どういうこと?」
やっぱり分からなくて、ついに口に出してしまった。
カミラもセドリックも貴族として話を始めると、結論にたどり着くまでが長すぎる。
「食べ物ではなくて、装飾品として売るのよ」
「装飾品?首飾りとか?」
「バカね、それじゃ大きすぎるでしょう」
装飾品といわれても良く分らない。
アイリスが困ったように眉を下げると、カミラが自信満々に胸を張った。
「ランタンよ」
「ランタンっておばあちゃんたちが作る、あのランタン?」
「そうよ」
はっきり言い切られたが、アイリスは半信半疑だ。
おばあちゃん達には悪いが、あんな誰でも作れるような田舎のクラフトアートみたいなものが商品になるだろうか。
「私は好きだけど、あれ売り物になるかなぁ」
アイリスの言葉に、カミラは大げさにため息をついた。
だが、どこか自慢気でもある。
その価値に気が付いたのが自分だけということが嬉しいようだった。
「ちゃんと手をかけて綺麗な彫りを施すの。宝石で飾ってもいいわ」
「あんな果物に!?」
「おバカ。『神秘のランタン』として売るのよ」
自分達を置いてけぼりにして、どんどん話を進める二人の少女に、レイヴァンドが口を挟んだ。
「クゥ・ルーイは先ほどの神事に使われた実だね?ランタンになるのかい?」
王太子が割って入ったことによって、カミラが改めて外交用の説明をする。
「産地では加工してランタンにしておりましたわ。淡い光を発光する薫りの良いランタンで、造りそのものは悪くありませんでしたわ」
一呼吸おいて、レイヴァンドの目を見る。
「わたくしの呪いを解呪する際にも使われました」
確かに、一時的にアイリスの体を守るために使った。
アイリスはその時のことを思い出していた。
あの時は夢中だったし、言ってることは経験的に本当のことだったが、根拠など一つもない。そのことを話さないままカミラは話を進める。
「呪いを払うことができる縁起ものですわ。実際にわたくしは解放されましたし、誰かに聞かれたら、わたくしの家ではそう答えます」
皇国の大貴族が公言するとなれば、それは絶大な広告になるだろう。
レイヴァンドは顎に手を当てて考えを巡らせた。
「わが国ではあれをそのように捉えておりませんでした。アシュトレイヤ家が黙ってそれをされても気が付きませんでしたが?」
無価値だったものを、親切にその価値を示して貿易に持ち込むほどのメリットがアシュトレイヤ家にあるとも思えない。
「感謝の証ですもの。損得は度外視させていただきますわよ」
いまいち嘘か本当かわからない言葉だった。
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