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「だから、待て!!なんでお前らは俺を置いて話を進めんだよ!!」
「うるさいわね!今、大事な話をしているの、黙っていなさい!!」
意味の分からない展開にグレンが声を上げたが、すぐさまカミラがピシャリとはねつける。
「いや、俺の話だろ!」
「いいえ、わたくしの話よ!!」
ばっさり言い切られて、グレンが言葉に詰まる。
珍しい光景にアイリスが目を瞬かせてセドリックを見上げると、セドリックは耐え切れずにアイリスの肩に頭を乗せて震えた。
「ねぇ…二人ともすごく本気なんだから笑っちゃ悪いと思うよ?」
アイリスは困ったように眉を下げてセドリックの肩を叩く。そして途方に暮れたようにレイヴァンドを窺い見た。
「うん。お前たちの話が意味が分からないことだけはよく分かったよ」
「ええ!?それじゃあ、困ります!」
にこやかにレイヴァンドに微笑まれてアイリスが焦った。
ここまで来てグレンの話を反故にされては困ると思ったのだ。
「いや、意味は分からないが国益があることはわかったよ?」
「つまり、どういうことですか!?」
政治的な駆け引きなんて無縁のアイリスに遠回しな言い方は分からない。
認めてくれるのかくれないのかはっきりして欲しいのだ。
「まあ、陛下に前向きに進言しておくよ」
「結局、どっち!?」
混乱するアイリスの肩に、ようやく落ち着いたセドリックが手を置いた。
涙目のアイリスに、大丈夫だからと頷く。
「殿下。昔ゲームで勝った時、褒美に『何でも聞いてやる』って言ってましたよね?」
「ああ、あのおまえのいかさまゲームの時か?」
ずいぶん昔の話を引っ張り出してきたな、とレイヴァンドが笑った。
すました顔でセドリックが頷く。アイリスは不安そうにセドリックを見る。
「いんちきってバレてるよ…」
「そりゃ、王太子には影がついてるからね?本人を騙せたとしても周りは無理だよ」
「ええ!ダメじゃん!!」
アイリスの顔が絶望に染まる。
セドリックがアイリスの頭に手を乗せて、軽くなでると心配ないと笑った。
「はは。本当にダメだったらその場で首を落とされてるよ」
「なんでそんなにギャンブラーなの!!!」
アイリスの理解を超えたセドリックの学生時代の話に思わず肩をつかんで揺さぶってしまう。
「落ち着いて、アイリス」
「大聖女は忙しいな」
「私は普通です!!」
もう何から話を進めていいのか分からなくなって、アイリスは自分が王太子殿下に大声をあげてしまっていることにも気が付いていない。
「いや、分かった。大丈夫だ、約束は守ろう」
アイリスを含めた、本来ならありえない諸々の態度もすべてまとめて、レイヴァンドは問題ないと鷹揚に頷いた。
「アマンディアス皇国との友好関係の手段としてだけでも、この話には大きな魅力がある。陛下はちゃんと説得するから、安心しろ」
この騒がしくも意味の分からない会談をさらっとまとめてしまった。
もはや口をはさむ隙も無かったサイファとオルガは未来の国王の器にただ感服した。
何を言っても無駄だと悟ったグレンが、大きく息を吐いた。
勝ち誇ったようなカミラに言いたいことはあるようだが、ぐっと堪えてカミラの頭に手を置いた。
「頭に手を置くのをやめなさい!何なのよ!」
「おまえ、まだ言っておくことがあったんじゃないのか?」
頭に置かれた手を振り払おうとしたカミラが、グレンの言葉に手を打った。
自分のことに夢中で忘れるところだった。
「そうだわ、もう一つ手土産をお持ちしたのだったわ」
カミラがレイヴァンドに向き直ると、もう一つエルダリア王国に良いことがあると切り出した。
「この国のクゥ・ルーイは神事以外に使い道が無いと伺っているのだけど、それでよろしいですわよね?」
「ええ。そうですね?」
真意を探ろうとレイヴァンドの目が細くなる。
カミラはアイリスに向かって微笑んだ。
「喜びなさい。おまえの故郷の経済をこのわたくしが活性化してあげるわ!」
「ルウイ村の?」
カミラは大きくうなずいた。
「アシュトレイヤ家にルウイ村産のクゥ・ルーイを売っていただけないかしら?」
貿易の申し入れだった。
あの、神事以外に全く使い道のない、ただ不味いだけの果物に何の価値があるのか。
アイリスが目を丸くして、レイヴァンドは首を傾げた。
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