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カミラの目がにんまりと細くなった。
「良いところに気が付いたわね!偉いわ、褒めてあげてよ!!」
カミラは、満面の笑みで胸を張った。間髪を入れず、盛大なグレンの舌打ちが聞こえた。
「あれ、これ、聞いちゃいけないやつだった!?」
緊迫した政治の話には無頓着だったアイリスが、まずいことを聞いたかもと青ざめる。
カミラは先ほどまでの、威圧的な仮面をすっかり脱ぎ捨てて口元に手を当てて「ほほほ」と高笑いをしている。
「え、なんで?どういう状況なの!?」
底抜けに機嫌が落ちたグレンと、上機嫌のカミラを見比べてアイリスは困惑した。
勿論、サイファもオルガも全くついていけていない。
レイヴァンドがセドリックに視線を送ると、セドリックは頷いた。
「グレン、ちゃんと説明してくれるね?」
「説明しろ」という、はっきりとした命令だった。
グレンの眉間にしわが寄るが、上官としてのセドリックの言葉に従わないわけにはいかない。
恐ろしく渋々と説明しようとするが、それよりも早くカミラが勝ち誇ったような声でアイリスに自らの『作戦』を語って聞かせた。
「おまえの聖力を座標にして、転移魔法を発動したのよ!」
「私の…?」
アイリスがきょとんと目を丸くした。
カミラは胸を張ったまま、アイリスの目の前に人差し指を立てた。
「うちの転移魔法は座標を特定して魔力を発動することで、目的地に移動するということは前にも伝えたでしょう?」
「うん。私とセドの移動は石像に残された祈りの痕跡を使ったけど、本当は専用の魔鉱石を使うんだよね?」
「そうよ、よく覚えてたわね」
カミラは優秀な生徒を褒めるようにアイリスを褒めた。
アイリスが照れくさそうに笑う。
「でも、王都は遠すぎるからって、アスコット村にしたんじゃなかったっけ?」
アイリスが、自分たちが王都に一直線に飛べなかった理由を思い出しながらカミラに確認する。
確か王都は、距離が遠くて遮るものも多い。座標の特定ができないから、直接移動は無理だ、という話だったはずだ。
「そうね。祈りの気配だけで追うのは無理よ」
「だよね。だったらどうして…」
「だって、この神事とやらはおまえが聖力をフル発動する上に、神の力が降りてくるのでしょう?」
カミラの言葉にアイリスはぽかんと口を開けた。
ゆっくりと反芻してみる。
確かに石像に残る祈りの跡とは比べ物にならないほど、大きな聖力がこの場に満ちる。
「それだけはっきりと強烈な目印があれば、お父様とお兄様が座標を特定できないはずないわ!」
「だから、それのどこに根拠があるんだよ!」
多分、出発前からずっとこれを繰り返していたのだろう。グレンが上司と王太子をガン無視してカミラを怒鳴りつけた。
「お黙り!出来たのだから正しかったということじゃないの!」
「結果論だ!何があるか分からねぇんだぞ!」
横から割り込まれたアイリスは目を瞬かせて二人を見つめた。
そしてそのまま、その鈍感力を遺憾なく発揮し、素直に思ったことをポロリと口に出した。
「要するに、グレンはカミラに危ないことをさせたくなかったんだね?」
瞬間、セドリックがものすごい勢いで、口元を押さえて横を向く。
「なに言ってんだ、このボケナス!!」
グレンの盛大な罵声がアイリスに叩きつけられた。
「ここにきて、新しい罵倒…!」
アイリスと言えば、特に堪えたわけでもなく、新たな言葉に目を丸くした。
「わたくしが心配なら、そう素直に言えば良いのよ、この青二才!!」
「おまえに青二才って言われるほど若くねぇよ!」
あっという間に騒がしくなった控え室に、サイファは額をおさえ、オルガは胃に手を当てる。
レイヴァンドは、普段体験することのない騒々しさに、いっそ感心してその場を眺めた。
(セドの笑い上戸は相変わらずか…)
ふと、視界の端で小刻みに震えるセドリックを捉えて、なんとなく懐かしくなる。
まぁ、ある種の現実逃避かもしれないが…。
グレンとカミラ、そしてそこに参戦したアイリス達のやり取りに、肩を震わせていたセドリックがなんとか息を整える。
このままでは話が全く進まない。
深く息を吸い、三人の中に割り込んだ。
「ストップ。分かったから、一回落ち着け」
あまりの急展開に乱れまくったその場を何とかすべく、仕切り直しを図るのだった。
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