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「『働き方改革』はよく分からないけど、分かったよ!」
分からないけど分かった。
この辺の感じは、今代の聖女達はみんな同じだな。
セドリックが面白そうに観察した。
ある意味、善人。
たが、思考する癖が付いていないとも言える。
(これも神殿のせいか…?)
いや、それだけとは言いきれない気もする。
セドリックは苦笑した。
それも、これからアイリスが変えていくだろう。
「そうだ、アイリス!儀式の衣装を合わせてみて!あたしに合わせたから少し調整がいるかも」
ターニャが慌ただしく、神殿の儀式についての情報共有を始めた。
毎年恒例でも、全く同じというわけでもない。
神事の手順は変わらないが、それ以外の変更は多少はあるのだ。
「そうだね。あとは席次表を見せて?」
「うん!今年は王太子様が来るんだよ」
知っている。
明日、取っ捕まえてグレンの聖騎士任命の話をしないといけないから。
そんなことを伝えるわけにもいかないので、軽く頷く。
「ここに座るの!めっちゃ、かっこいいんだって!!」
神事の重責から外れて緊張から解放されたのか、ターニャの顔が明るい。
たが、すぐにはっとして両手で口を塞ぐ。
「アイリスは、こんな話はあんまり興味ないよね?」
「え!?そんなことないよ!すごい気になってた、王太子殿下!!」
「そうなの!?珍しいね!!」
ターニャが嬉しそうに手を合わせた。
基本的にアイリスはこういうミーハーな話をしないので、王太子にも興味がないのだと思っていた。
「めちゃくちゃ、気になってたわ!」
大事なことなので二回言っておく。
そしてターニャから席次表を受け取ると、セドリックにも見せる。
「ここだって」
「俺は殿下の席より、アイリスの大聖女の衣装の方が気になるな?」
一応、渡された紙には目を通す。だが、そんなことよりも、とセドリックがアイリスを覗き込む。
ターニャが両手を頬に添えてパァッと赤く染めた。
内心で王子とあだ名を付けていたセドリックがアイリスに見せる態度が、乙女心をくすぐるのだ。
「王子、素敵!!」
「だから!ターニャ、この人は王子じゃないのよ!!」
興奮するターニャを宥めようとするが、ターニャは全く聞いていない。
「今年の聖女の衣装はちょっとシンプルになっちゃったけど着てみて!!似合うよ!!」
ターニャの台詞に、セドリックが眉を寄せた。
「シンプルに?」
「サイファ様、衣装も節約したんだ!!」
神事は神様へのお礼だから、本質的な意味では別にシンプルで構わない。
アイリスは神事さえできれば構わないので、単純に驚いただけだった。
どうやらセドリックは違うようで、少し考え込んでからアイリスに微笑み掛けた。
「衣装合わせ、してみてよ?」
「任せてください、王子!」
アイリスが返事をするより先にターニャが答えた。
「さ、行こう、アイリス!!綺麗にして王子に見てもらおう!」
「だからね、ターニャ!この人は…」
「早く、早く!!」
背中を押されてアイリスが遠退いていくのをセドリックは手を振って見送った。
そして二人が見えなくなると、すぐにそばにいた司祭のひとりを捕まえる。
「ちょっといいですか?」
その司祭に、いつくかの聞き取りをしながら、さらりと書き付けたメモを手渡す。
「それじゃあ、このメモを指定の店に届けてくださいね?あ、ヴァリエールからの急ぎの依頼だと伝えてね」
司祭が慌ただしく去っていったのを確認すると、改めて祭壇に目を向けた。
白い花で飾られた祭壇に、クゥ・ルーイが飾り置かれている。
花とクゥ・ルーイの香りが混ざり合い、華やかでいて厳かな場が完成されていた。
「そういえば、神殿の神事って見たことなかったな…」
これまで機会がなかったので当然だが、毎年アイリスが行っていたと聞くと見たことがないのが少し残念な気持ちになる。
(いや、知らなかったんだからしょうがないんだけど)
誰に言い訳するわけでもなく、ぼんやり祭壇を見つめる。
そのうちに、慌ただしいターニャとアイリスの声が戻ってきた。
「見てください、王子!アイリス綺麗でしょ!?」
「だからねターニャ、本物の王子が来たら不敬罪になっちゃうから!!」
どうやら、着替えの間もターニャの説得はできなかったらしい。
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