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「カミラは『呪い』に巻き込まれてしまったんだよ」


憂いを帯びたエドワードが眉を寄せて、ソファーに腰を下ろした。

膝の上にカミラを乗せている。

すると、それまで黙っていた兄レオニスが声を上げた。


「巻き込まれた!?違う、狙われたんだ!」


あまりの剣幕にアイリスが身をすくめて、セドリックの腕に置いていた手に力を込めた。セドリックがそっと自分の手を重ねて落ち着かせる。


「それは、カミラ嬢が呪いにかかっているということですか?」


落ち着いたセドリックの声が、応接室に静かに響く。


「わたくし、呪われているの?」


カミラが首をかしげると、レオニスはエドワードの膝に乗ったカミラに、片膝をついて視線を合わせる。


「カミラは覚えてないのかい?」


「ごめんなさい。ずっと記憶がなくて、お兄様達の事も検問所でやっと思い出したところなの」


カミラがレオニスの言葉に頷くと、レオニスはカミラを抱き上げて抱き締めた。


「可哀想に!いいんだよ、家族のことさえ思い出してくれれば!」


そして、ばっと目の高さに持ち上げ、カミラともう再び視線を合わせる。


「後は、綺麗さっぱり!なにもかも!!すべて!!忘れてしまえ!」


なんだか恐ろしく私怨のこもった慰め方だ。セドリックとグレンが顔を見合わせた。


「やめなさい、レオニス。お客様が困っているでしょう」


セリーヌの言葉にレオニスが渋々とカミラを下ろす。そしてソファの傍らに立ち、アイリス達に優雅に頭を下げた。


「失礼いたしました」


とにかく落差の激しい父子に戸惑いながら、アイリスが眉を下げて両手を振った。


「心配していた妹さんが帰って来たんですから…」


普通かどうかはともかく、取り乱すのはしょうがない。そう伝えるとレオニスはもう一度丁寧に頭を下げた。


「カミラ嬢は…というか、彼女の体は今、どうなっているんですか?」


とりあえず、様子のおかしいところは見なかったことにして、セドリックは先を進めた。気にしたら負けだ。


その割り切り方がお気に召したようで、エドワードの目が好意的に細められた。


「知識を持たぬものが、中途半端な実力で発動したので、解呪の手順が返って複雑になってしまったようでね…」


よく見るとエドワードの顔には疲労が滲んでいる。傍らに立つレオニスも同様だ。

言葉以上に難航しているのだろう。


「素人仕事ほど、後で面倒になるからな…」


グレンは思わず同情してしまう。

職人の領域に手を出されたことでもあるのか、妙に実感がこもっていた。


「はは。まぁ、ゴミクズみたいな連中のやったことだ。どうにかしてみせるよ」


エドワードがなんとか笑ってみせる。

アイリスはしばらく考え込んでいたが、スッと顔を上げて侯爵家の人達を見渡した。


「…呪いの解呪は聖女のお仕事です」


気の弱そうな少女が、視線を強くして宣言した。


「私、カミラを助けに来たんです」


「ちょ…、おまえ!」


カミラが慌ててアイリスに手を伸ばす。その手をアイリスがぎゅっと握った。


「きっと、そのためにカミラは私のところに来たんだよ」


アイリスが晴れた空のように笑った。


「私に任せて!」


カミラはポカンとアイリスを見つめた。

そして釣られたように笑った。


「なんなの、それは!上出来よ!!」


この場面でこれだけ、はったりを言える気合いがあるなら、任せてみようとカミラはアイリスに抱きついた。


カミラを受け止めると、アイリスは侯爵に向き直る。


「カミラは今、どこですか?」


エドワードはまじまじとアイリスを見つめた。


(魔力…?いや、違う…何か別の…)


アイリスの中にある見知らぬ力に困惑していた。

すっとエドワードの手にセリーヌの手が添えられる。


「お願いしてみましょう?」


セリーヌはエドワードが迷っている間に立ち上がった。


「いらっしゃい。こちらよ…」


こういう時、妻の決断はいつもエドワードを救ってくれる。

エドワードは心を決めて、立ち上がると妻の隣に立った。


「私が案内しよう…」


いつも読んでくださり、本当にありがとうございます!


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