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バァン!!
「セリーヌ!カミラについて何か分かったのか!?」
大きな音を立てて応接室の扉が開いた。アイリスはビクッと肩を震わせて扉の方を振り返った。
そして飛び込んできた背の高い二人の男達の、あまりの美しさにあんぐりと口を開けて凝視してしまった。
「お母さんも美人だけど、ご家族揃うと圧巻だね…」
つい漏れてしまったアイリスの言葉に、セドリックとグレンも思わず無言で頷く。
視界を塗りつぶすほどのキラキラを撒き散らした美男美女が揃ってこちらを見ている。
「な、なんか、綺麗すぎて怖いね…」
アイリスが引き気味にセドリックの腕を掴んだ。
「これは、なんていうか…。カミラ嬢も、凄いんだろうね?」
これだけ美形が揃って娘だけ違う毛色ということもないだろう。まだ見ぬカミラの本体に二人は戦慄した。
「セリーヌ、カミラは…っ」
詰め寄るエドワードの鼻先に、可愛らしいクマのぬいぐるみが突きつけられた。
「お、お父様…」
恐る恐る腕を伸ばしたカミラは、強く抱き締められてむぎゅっと、潰れた。
「カミラ!!」
悲鳴を上げたアイリスの声など、全く聞こえないのか、エドワードはぬいぐるみをひしっと抱えて離さない。
「父親もかよ!」
一体どこで判断しているのか、カミラの家族は、迷い無く娘がクマのぬいぐるみであることを受け入れている。
グレンが思わず叫ぶと、ようやくカミラ以外に気が回ったのか、初めてエドワードの視線がグレンへ向いた。
眉間に深く皺が寄る。
「誰だね、このいけ好かない男は…」
底冷えする、地を這うような低い声にアイリスが息を飲んだ。思わずセドリックの腕にしがみつく。
セドリックはアイリスの背中を軽く叩きながら、体を緊張させる。
その時――
ペチッ…
エドワードの頬をセリーヌの扇子が叩く。
ペチ、ペチ、ペチ!
そのまま何度も往復する。
エドワードの覇王のような気迫がみるみる萎んでいくのが分かった。
「あなた…」
鈴のようなセリーヌの声がエドワードの頭を押さえつける。
「それが娘を保護して、連れて来てくださった恩人に対する態度ですか?」
エドワードが何かを口にする前に、セリーヌはさらに言葉を重ねる。
「それが皇国を代表する貴族であるアシュトレイヤ侯爵家の当主のなさることですか?」
エドワードがどんどん肩を縮めていく。そして蚊の鳴くような声で謝罪を口にした。
「礼を欠いた振る舞いだった。…失礼した」
「や…、いえ。き、気にしてませんので…」
グレンはそう答えるのが精一杯だった。
(アシュトレイヤ家、怖!!)
カミラ以外の三人は同時に震えた。
「ごめんなさいね?」
一番恐るべき夫人から、もう一度謝罪されて、余計にグレンは一歩後退りする。
「ほんとに、気にしてねぇんで…」
正直、こっちの事は忘れて本題に入って欲しい。
必死にセドリックに目配せする。
(面白そうだったけど、残念)
セドリックはグレンの視線を受けて軽く頷いた。
気になることはたくさんあるが、カミラの件を片付けよう。
「それではカミラ嬢はこちらのお嬢様でお間違いないですね?」
ここまで疑われてないなら、こちらの説明などいらないだろう。むしろ、アシュトレイヤ側の話を聞きたいくらいだ。
カミラに何があったのか。
その核心にセドリックは踏み込んだ。
エドワードはセドリックを値踏みするように見つめたが、腕の中のクマのぬいぐるみがきゅっと力を込めたので、諦めたように息を吐いた。
カミラが認めているなら、信じても良いだろう。…そう判断した。
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