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セリーヌは馬車から降りてきた少女と二人の青年を見ると、にこやかに笑いかけた。
「ようこそ、アマンディアス皇国へ」
そして、一番貴族らしい態度のセドリックに目を向けるとおっとりと首をかしげた。
「あなたがヴァリエール様かしら?」
セドリックは自然な形で胸に手を当て、軽く一礼した。
「初めてお目にかかります。アシュトレイヤ侯爵夫人。突然の訪問をお許しくださりありがとうございます」
セリーヌはセドリックのそつのない動きに感心しながら、セドリックの背後に立つアイリスとグレンにも目を向けた。
グレンは目立たないようにそっと控え、アイリスはぬいぐるみをしっかり抱き締めたまま、どうしたら良いのか迷っているようだった。
セドリックはさりげなく移動して、夫人と二人の間に入る。
「二人は貴族ではないので、不躾でしたら申し訳ございません」
セリーヌを気遣うようでありながら、二人を庇う姿勢をセリーヌは好ましく思い首を振った。
「気にしてないわ」
「恐れ入ります」
貴族的な挨拶が続くかと思われたが、唐突にアイリスが切り込んだ。
「カミラのお母さんですよね?」
アイリス以外の三人がバッとアイリスを振り返った。
直球過ぎる。
セドリックが咄嗟にアイリスを背中に隠すように立ち、微笑む。セリーヌはアイリスの計算のないまっすぐな言葉に興味を引かれた。
それと同時にはっきりと見た。
「あなたのクマ、とても自然に動くのね?」
セドリックとグレンが天を見上げた。
フォローできない。
だが、なんとか切り替えたセドリックが辛うじて口を開いた。
「夫人…」
「いいのよ。さぁ、お入りになって」
セリーヌはくるりと向きを変えると、客人を応接室へ案内しようと、足を踏み出した。
「なんか、ごめんなさい…」
アイリスがしょんぼりと俯く。
多分、良く分からない複雑な駆け引きの途中だったのだろうと、遅ればせながら気がついたのだ。
「いや、気にしないで。このくらい、織り込み済みだよ?」
穏やかなセドリックの優しい嘘にアイリスの視界がじわりと滲んだ。
「メソメソしてもしょうがないわ。もともと、さっさとわたくしのことを切り出すつもりだったのだから、大したことじゃないわ」
カミラがアイリスの腕をペシペシと叩いた。
「それにあの夫人、このクマがめっちゃ動いたことの方が気になるみてぇだし、なんならコイツのせいじゃねぇ?」
「はぁ!?おまえの頭はどこまでポンコツなの!!」
いつもの調子で騒ぎだした面々にセドリックが深いため息をついた。
「ねぇ、もう完全にフォローできないからね?」
応接室の入り口で夫人が目を見開いてアイリス達を見つめていた。
「回りくどくなくて良いじゃないの」
カミラが、ふんと顎を上げた。
その様子にセリーヌが思わず手を伸ばす。
「カミラ…カミラなのね?」
セリーヌが目を潤ませたのを見て、アイリスが目を丸くして叫んだ。
「すごい!合言葉を使う暇がなかった!!」
「なんでだ?どこで確信できたんだ!?」
グレンとアイリスの疑問に答えることもなく、セリーヌがアイリスからぬいぐるみを受け取ると、きゅっと抱き締めた。
「カミラ…私の可愛い妖精!!」
「お母様、わたくしが分かるの?」
「分かるわよ!思ってたより可愛らしいお人形さんになってて驚いたけど、お帰りなさい、カミラ!!」
クマのぬいぐるみを娘だと確信できる肝の太さにセドリックは乾いた笑いを浮かべる。そして、この旅で随分と色々なタイプの女性の勉強ができたなと、遠い目をした。
「現実逃避するなよ…」
グレンが呆れたように声をかけた。
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