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どうやら気難しい老婆に気に入られたらしい一行は、なぜか老婆の家の片付けを手伝っている。
「何で、こんなこと…」
グチグチと文句を垂れるグレンに老婆が後ろから蹴りを入れる。
「泊めてやるんだから、年よりの手伝いくらい黙ってやるんだよっ」
「…っ、痛ぇな!この、くそばばぁ!」
何が年寄りだ。猪より元気じゃないか。グレンは背中をさすりながら、納戸の二つ目の棚に手を掛ける。既に隣の棚はきっちり片付けられている。
「流石、セドに整理整頓を叩き込まれてるだけあるね!」
埃避けの三角巾を頭に巻いたアイリスが、感心してグレンの手際を褒める。グレンに整理整頓を叩き込んだセドリックはといえば、老婆からのんびり話を聞きながら、仕分けの指示を出している。
「あいつ、楽しすぎじゃねぇ?」
「ふふ。おばあちゃん、楽しそう!」
結局、女はセドリックが担当ということで落ち着いたようだ。
「ぐだぐだ言ってないで、手を動かしなさいよ。日が暮れるわよ」
グレンに飛び蹴りをかまして戻ってきた老婆の膝の上でくつろぐカミラが、アイリスとグレンをせっついた。
グレンの鼻に皺が寄る。
カミラと老婆。天敵が一気に二人に増えた気分だった。
「カミラとおばあちゃんってなんか似てるよね」
アイリスがほのぼのと二人を見つめた。全く碌でもない。
グレンが苦虫を噛み潰したような顔をした。
「あんなのが二人もいるなんて、最悪だ!」
忌々しげに吐き捨てたが、その手は迷いなく次々と整理を進めている。
「あ、グレン。それはそっちじゃない」
途中に挟まれたセドリックからの指示に、グレンは心底嫌そうな顔で怒鳴り声を上げた。
「おまえもやれよ!!」
「俺はご夫人の相手に忙しい」
涼しい顔で切り返されて、グレンがへっと顔をしかめた。
「こいつはこいつで、腹立たしいし!!」
それでも何だかんだと全ての要望を聞き入れて動き回っているのだから、アイリスはやっぱり感心してしまう。
「そうだわ…」
忙しく動き回るアイリスとグレンをよそに、のんびりおしゃべりを楽しんでいたカミラが、ふと老婆を見上げた。
「アイリスが聖女になったのなら、新しい神殿がここにもできたのかしら?」
上限が八棟と決まっているなら、どこかがなくなって、ここに新しい神殿があるはずだ。
「ああ、少し先の村にあった神殿から石像が運ばれてきたよ」
「割と近くにあったのね?」
「まぁ、この村から聖女が誕生したのも初めてじゃないから、昔の神殿をそのまま使ってやったわ」
何てことないように老婆がヒヒヒと笑った。ずいぶんと打ち解けたが、何度聞いても笑い方が怖い。
「昔もこの村から聖女が?」
セドリックが興味を引かれて尋ねると老婆はふふんとカミラを撫でながら顎を上げた。ぬいぐるみの手触りが気に入ったようだ。
「そうだね、この辺は必ずどこかの村に神殿があるね。ありゃ回覧板みたいに回ってるよ」
神聖な石像も形無しだ。
セドリックは老婆の言い方がツボにハマったらしく、「っぐ…!!」と息をつまらせて、横を向いて震えた。
「そうだ、おばあちゃん。明日の朝、石像にお祈りしてから出発して良い?」
「あぁ、好きにしたら良いさ」
アイリスが離れた場所から大声で呼びかける。
「ばあさんの許可は、いらねぇだろ?」
グレンが首をかしげると、アイリスもこてんと首をかしげた。
「いるよ。おばあちゃん、この村の司祭様だもん」
グレンがあんぐりと口を開けた。
「人手不足か、この村は!!」
失礼な言いぐさに草履が飛んできて、グレンの頭に直撃した。
「おまえ、司祭だったの?」
カミラがきょんとすると、老婆はにたりと笑う。
「こんな田舎の村じゃ、誰がやったって構わないのさ。あたしが一番年寄りだから回ってきただけさ」
この国の国境沿いをぐるりと囲むように立てられる神殿の司祭達もまた、かなり雑に決められていた。
「よく分からない決まりと規則は王都にしかないのね…」
人の意思が介入してない分、田舎の神殿の方がもともとの真実が分かりやすいのではないか。
カミラは顎に手を当てて考え込んだ。
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