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ガタガタと揺れる田舎道を走る馬車が、ようやくルウイ村に到着した。
アイリスは馬車から飛び降りると、ぐっと背中を伸ばす。
「んー!!すごい久しぶり!」
「ちょっと、おまえ!わたくしを置いて飛び出すなんて、どういうつもりなの!」
セドリックの腕に抱かれたカミラがきゃんきゃんと吠えた。
「うるせぇ…」
グレンが顔をしかめると、今度はグレンにも噛みつく。
「おだまり!この三流御者!!」
「はぁ!?俺は普通だ、この高飛車クマ女!」
アイリスとセドリックは、また始まったと視線を合わせた。
アイリスがセドリックからカミラを受け取り、きゅっと抱き締めて宥める。
「カミラ、落ち着いて」
「もう!そもそもおまえが悪いんじゃないの!」
「ごめんって」
きゃあきゃあと騒ぐ二人の声を聞き付けて村から人が出てくる。
「アイリスじゃないの!」
その騒がしいのがアイリスだと分かると女は、大きな声で叫んだ。その声にアイリスは懐かしそうに目を細めた。
「ナチャおばさん!!」
アイリスが駆け寄ると、ナチャは両手を広げてアイリスをぎゅっと抱き締めた。
「元気そうね、アイリス!」
「おばさんも!」
二人の感動の再会に、セドリックとグレンは肩をすくめて、顔を見合わせる。
「あら、アイリスは、まだこの子がお気に入りなのね?」
アイリスの腕に抱かれたカミラを見ると、懐かしむようにまた笑う。
アイリスも花がほころぶように笑った。
「大事な友達なの!」
故郷に戻って浮かれているのだろう。それは分かるが、カミラは頭を抱えた。
(それじゃぁ、良い年をしたぬいぐるみ好きの痛い女だわ…)
幸いなことにナチャはアイリスのそんな様子にも動じることはない。
「あら、そうなの」と軽く受け流す。
そして、ぬいぐるみよりセドリックとグレンの方が気になるようで、チラチラと視線をやりながら、アイリスに耳打ちをした。
「で、どっちが本命なんだい?」
若い娘の恋ばな好きか!
カミラはさらに頭を抱えたくなった。たが、そこはセドリックがさらりと引き受ける。
「こんにちは、ご夫人。俺たちは聖女アイリスの護衛なんですよ」
田舎では、お目にかかれない色男の甘い挨拶にナチャは高い声を上げた。
「まぁ!ご夫人なんて初めて言われたわ!!」
そりゃ、そうでしょうとも。
カミラの心の声は誰にも届かず消えていく。
グレンは女性の対応はセドリックに丸投げと決めているのか、しれっと黙って控えている。
「おばさん!二人はそういうんじゃないの!!」
大きな声で慌てるアイリスにナチャはニマニマしている。そして「ふーん?」と納得したのかしてないのか分からないような顔でアイリスを見つめた。
「まぁ、いいわ。久しぶりに戻ったんだもの。おばあちゃんのところにも顔を出してあげなさいな」
まだ聞き足りないような顔をしていたが、それでもさらりと話を変えて、アイリスを可愛がっていた村一番の年寄りへの挨拶を促した。
「うん!」
アイリスがセドリックとグレンを振り返る。
「紹介するよ、私のおばあちゃん!」
終始嬉しそうなアイリスに二人の騎士は苦笑しながら頷いた。
アイリスは、王都に行く前まで毎日通っていた小道を歩く。道端の花も遠くに見える山も、全てが懐かしかった。
そして、小さな一軒家の前に立つと元気良く扉を叩いた。
「ただいま、おばあちゃん!!」
その瞬間、扉の向こうから怒声が返ってきた。
「押し売りならお断りだよ、帰っとくれ!!」
威勢の良い声に、セドリックとグレンは唖然とし、カミラはアイリスを見上げた。
「元気なおばあさまね?」
「うん、とっても元気な人なの!」
なんだか思っていたのと違うばあさんが出てきそうな予感に、アイリス以外の三人は、ほんの少し不安を感じて身構えた。
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