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「えっと…カミラ、さん?」
恐る恐る声をかけるとクマが膝の上から見上げてきた。
…か、かわいい。
アイリスがプルプルと肩を震わせる。
カミラはふんと鼻を鳴らし、膝に座り直した。
「カミラで良いわ」
アイリスの目がきょとんと丸くなる。
「良いんですか?」
「良いわよ。逆になにか問題があるのかしら?」
アイリスはふるふると首を振った。
「ううん、カミラがそれで良いなら良いの!」
「呼び方などより確認しなくてはいけないことが山ほどあるわ。他人行儀にしていたら時間がかかって仕方ないでしょう」
ファンシーなクマは驚くほど効率主義だった。
アイリスがポカンと見つめると、クマは腕を組んで見上げてきた。
偉そうにしているのだろうけど…。
ひたすら可愛い。
「まず、おまえは聖女なの?」
「え、違うよ?」
カミラの問いかけにアイリスはあっさり首を振った。
「では、なぜ聖女と呼ばれているの?」
「わからないよ」
困惑したアイリスの顔に嘘はない。
「聖女って神様の声が聞こえるらしいけど、私は聞いたことないし。だから違うと思うんだけど…」
「それを人に言ったことは?」
「あるよ、司祭様に」
困ったような笑顔に、アイリスが何と言われたのか想像がつき、カミラは再びため息をついた。
「聖女として振る舞うように、神殿に言われてやっているのね?」
「神様、怒るかな?」
「怒らないわよ、そんなくだらないことで」
この状況でアイリスを叱るような神なら捨ててしまえ。吐き捨てるようにカミラが切り捨てた。
「カミラってすごいね?」
「利用されて、それでも人々のためにとか言ってるおまえのメンタルの方が怖いわ」
「利用って…」
明け透けな言い方にアイリスが戸惑う。神様から貰った力はみんなに使うものだ。
そう言われたし、そう思ってる。
違うのだろうか…。
「もしかして、カミラって神様のお使い?」
「呆れた!どんな思考回路を持っていたらそんな結論が出せるのよ!」
念のため聞いてみただけだが、思ったより強く反発された。
「だって、急に出てきて助けてくれたから、何かなって…」
「髪を引っ張られるような違和感があって、気がついたらおまえの中だったのよ!」
アイリスの受けた感じと似ている。
というより、ほぼ同じ状況だ。
「強い光…のようなものに、引かれた気がするのだけど」
顎に手を当て、首をかしげる。
「やっぱり、かわいい!!!」
「危機感のない娘ね!!」
見た目がぬいぐるみのせいか、何をしてもただ可愛く見える。
アイリスはほんわかとクマを見ながら目元を緩めた。
「じゃぁ、カミラは何なんだろうね?貴族のお嬢様みたいにも見えるけど、神様のお使いにも見えるし…」
「おまえ、わたくしが神の使いに見えるの?頭がおかしいわ!」
カミラは若干引き気味だ。
記憶は全くないが、そんなことは言われる性格ではないと絶対の自信がある。
「んー。でも困ってるときに助けてくれたから、やっぱりそう思っちゃうよ」
眩いアイリスの笑顔にカミラはぐっと言葉につまった。
「か、神の使いではないことだけは確かよ!」
思わず怒鳴りつける。
だが負け惜しみのようになってしまったことに気がついてカミラは地団駄を踏んだ。
ぬいぐるみの体は感情表現が難しい。
「とにかく!おまえが気がついてないだけで、おまえの心は疲れ切っているの!」
アイリスの体に引きずり込まれ、その心の内を見たカミラがびしっと宣言した。
「そんなこと…ないと思うけど?」
「自覚がないのが一番ヤバイのよ!」
カミラがグイッと顔を寄せた。
「わたくしは、しみったれたことが大嫌いなの!まずはおまえのその偽善者根性を叩き直してやるわ!」
カミラだって自分自身のおかしな現状が気にならないわけではない。
だが、それ以上にこのイライラする状況を解消したかった。
どうせ考えても分かりそうもないなら、目の前のことから片っ端から片付けていく。
記憶にはないけどそういう性格なんだろうと結論付けた。
「まずはおまえに護衛を付けさせるわよ!」




