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「聖女のシステムが、長い時間をかけて少しずつ変わっちゃったのは分かったけど、カミラみたいな存在って初めてじゃない?」
素朴な疑問にアイリスは首をかしげた。カミラもアイリスを見上げて、同じように首を捻った。
「まあ、そうね?」
そのまま続けようとするのを、セドリックが片手を上げて会話を遮った。
「待った。ここに長居しすぎてもアレだし、内容も内容だから場所を変えよう?」
グレンもそれに従うように、食べ終えた皿の乗っているトレイに手を掛ける。
「一旦、宿に戻ろうぜ?」
そう言うと、返却口へ向かう。
アイリスが慌ててトレイを持って後を追う。
「…ここでは話せないことでもあるのかしら?」
「やだな、勘ぐりすぎだよ」
残されたカミラがセドリックを見つめると、セドリックは肩をすくめた。
戻ってきたグレンとアイリスと入れ替わるようにセドリックも、トレイを戻しに返却口へ向かった。
「お待たせ、カミラ」
アイリスがカミラを抱き上げる。そのまま戻ってきたセドリックと合流し、神殿の食堂を後にした。
「美味しかったね!」
オムレツの味を思い出して、頬に手を当てうっとりとするアイリスにセドリックが苦笑した。
「玉子料理、好き?」
「うん、好き!」
相変わらず屈託無く笑うアイリスにカミラがやれやれと息を吐く。
「おまえは、嫌いなものを探す方が難しいじゃない」
「ふふ。豊かな人生だよね!」
嫌みの一つも通じないアイリスにカミラは呆れてアイリスを見上げた。ぬいぐるみだから分からないが苦い顔をしているのだろう。
セドリックはいつものように面白そうに目を細める。この二人の関係はずっと奇妙だ。友達のようで、先生と生徒のようで…。それでも初めほどアイリスはカミラに依存しなくなったようにも見える。
「少しずつ自分の意見が言えるようになったのかな?」
ふと、セドリックとアイリスの目が合う。アイリスが花のように笑った。
聞こえないくらいの声だったと思うが、しっかり聞こえてしまったらしい。
「私、この旅で色んなことを勉強してると思うよ!」
弾むような声に、思わずセドリックも釣られて笑ってしまう。
「そう?でもカミラ嬢のようになっちゃったら大変じゃないかな?」
「そんなこと無いよ、すごく楽しいと思う!」
「ほほほ、わたくしの様にですって?とんでもない身の程知らずね」
ばっさりとダメ出しをされてアイリスは不満げに頬を膨らませる。セドリックはまぁまぁと肩を叩いた。
「ほら、初めから高すぎる目標でもね?」
「高すぎるんじゃねぇ。絶対目標にしちゃダメなやつだから考え直せ」
先を歩いていたグレンが振り返って釘を刺す。
アイリスの腕の中で、カミラがフフンと笑った。
「おまえのような未熟者にとったら、遥か高みだものね。せいぜい下から見上げてるのがお似合いよ」
カミラとグレンの間に不穏な空気が流れ始めたのを感じてアイリスが慌ててカミラを強く抱き締めた。
「もう!喧嘩しないで!!」
些細な喧嘩すらどうやって止めたら良いのか分からずオロオロしていたアイリスにしては上出来だ。
カミラがちょっとだけアイリスを見上げると、ご機嫌な様子で体の力を抜いた。
「そうね。こんな無礼者に目くじら立ててもしょうがないものね」
「すぐ、そういうことを言うー!」
ちょっとした軽口が叩けるほど距離が近くなっている。その事に当の本人達は気がついていない。セドリックはもう一度、二人に目を向けると目元を緩めた。
「やっぱり、少しずつ変わってるね」
「…あのクマが何なのかは、相変わらず分かんねぇけどな」
グレンは注意深くセドリックに囁いた。
「まぁ、それっぽい情報は届いてるが…」
「そうだね…それも含めて部屋で話さないとね?」
アイリスとカミラの間に芽生えている友情のようなものが、このまま育つと良いと願いながら、セドリックは頷いた。
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