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アイリスの無邪気な笑顔をカミラが見上げた。
「これも多分だけど、この子もイレギュラーなんだわ」
セドリックとグレンの手が一瞬止まる。だが、すぐに皿の料理に手を伸ばし何気ない会話を装う。セドリックがアイリスに向かって話しかけるようにしながら、カミラを促した。
「イレギュラーっていうのは?」
「神はいると思うわ」
慎重にカミラは言葉を選んだ。
「でも神のシステムに政治介入があったせいで、貴族への忖度のような流れも組み込まれている…。そこに、本来ならメンテナンスだけすれば良いはずの聖女から…」
「『聖女らしい』思考回路の聖女が現れた…」
カミラの推測に、セドリックがその指先を顎に当てて考え込む。
神の想定以上にアイリスが善良すぎた、というのだろうか。
「わ、私、何かいけないことをしたのかな…」
カミラを抱き締めるアイリスの腕に力が込もった。
「おまえが悪いんじゃないわ」
カミラが静かに首を振る。
積み上がった構造上の問題だ。
大聖女という存在に大金をつぎ込む必要はないと神殿の責任者であるサイファは考えたのだろう。実際にそれでもメンテナンスは正しく行われている。
「神の声を聞いた」という大聖女の自己申告だけが認定基準なら、同等の力をもつ聖女がいる今、敢えて探し出す必要はない。その方が予算も抑えられる。
「あの大司祭の厄介なところは、別にそれで私腹を肥やしてるわけではないということかしらね」
抑えた予算がどこに流れているのかといえば、福祉活動だ。
現在の神殿の活動履歴を見ると、これまでより頻繁に、大規模な慈善活動が行われているのが分かる。
「サイファ様はとてもお優しいの…」
アイリスがカミラに顔を寄せながら小さく呟いた。
「前にも言ったけど、お優しい方は平民の聖女は粗末に扱って良いなんて発想にはならないのよ」
「神殿の評価が上がることは、彼の評価が上がることだからね…」
カミラの言いたいことを察してセドリックが頷いた。
それは悪ではない。ただ、貴族らしいというだけだ。
「でも、それで助かった人達も沢山いるよ」
「…本来ならそれで問題ないと思うわ」
途方にくれたような目をしたアイリスにカミラが静かにもたれ掛かった。
「やり方が極端すぎるって話か?」
グレンが口を挟むとカミラは少し考えてから頷いた。
「そうね。あまりにも質素すぎるわ。もし今代の聖女達が貴族だったらこんな方法は取らないはずよ」
「村にいた時より贅沢だよ?」
アイリスの言葉にセドリックとカミラは沈黙した。
だからうまく誘導されて利用されているのだろう。
「おまえの村は…豊かではないのね?」
「良いところだけどね…」
はっきり応えられない事がその答えだ。
「とにかく、サイファの思惑がどうであれ、やることは変わらないわ!」
切り替えるようにカミラが強く頷いた。
「おまえの労働環境の改善よ!不当な条件を改めさせるわよ」
「労働環境…?」
目を瞬かせるのはアイリスだけではない。セドリックとグレンもカミラを見つめた。
「防衛上必要なら聖女システムに口を挟むことはできないわ。だけど、未払いの報酬と休暇はきっちりぶん取って、遊びまくるわよ!」
アイリスが目を丸くした。
セドリックは咄嗟に口を抑えて横を向く。その肩は震えている。
「おまえ、絶対元は盗賊かなんかだよ…」
「正当な権利の主張よ、無礼な男ね」
呆れたように残りの料理に口をつけながらグレンが指摘すると、カミラは不本意だと言わんばかりに顎を上げた。
「問題点が分かったのだから、あとは処理するだけよ!」
堂々と言い切るカミラにアイリスは少し首をかしげた。
「じゃあ、カミラは?」
「ん?」
「カミラはどういう存在になるのかな?」
奇妙な沈黙が落ちた。
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