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「大聖女を見極める基準があまりにも雑すぎる…というのがまず気になるわ」
案内された食堂の隅に陣取ったアイリスたちはそれぞれの情報交換を始めていた。解放された神殿の食堂は昼時もあって賑わっており、ざわざわとした活気に満ちている。
たまに村人ではないアイリスたちに目を向ける者もいたが、神殿の客だとわかると特に興味を持つこともなく、各々食事の席に着く。
アイリスたちが何を話していようと、特に誰も気にしていない。
そんな空気の中カミラが真っ先に感想を述べた。
「雑…?」
問いかけながら、セドリックが目の前に置かれたランチプレートの唐揚げを口に運んだ。
「そう。初代の大聖女は確かに神託を受けているわ。それはもう細かい指示が示されているの。どこに神殿を配置してどのように結界を張るか、その祈りの方法はどうするのか」
「それは随分具体的だね?」
「神託ってもっとフワッとしてんじゃねぇの?」
アイリスにグレンが訪ねる。
目の前のオムレツに目を輝かせていたアイリスが、口に運ぼうとしたスプーンを止めて首を振った。
「私、神託は聞いたことがないから分からないよ」
「そうなのか?」
グレンが首をかしげるとアイリスはこくりと頷いた。二人に構わずカミラは続けた。
「問題はその次の代からよ。その後は今に至るまで具体的な神託はたった一つしかないの」
それが、次の聖女達の現れる場所の予言だ。
「そんなことあるかな?」
「それっぽいことは伝わってるけど、確認しようのない当たり障りの無いものばかりよ」
セドリックの疑問に、カミラはアイリスの膝の上で不機嫌そうに首を振った。
「初代の大聖女の作ったシステムを次世代の聖女達が運用してるだけに見えるの…」
「『まず』ってことは、他にも気になることがあるんだね?」
セドリックはカミラの話を一度切って、次を促した。
「そうね。あとは大聖女の立場や扱い、費用については途中の聖女に貴族が入ったからだと思うわ」
初めの大聖女の時は、保障する対価も妥当であった。もっとも初代の大聖女は高位貴族のようだったのでお金にも困ってないようだったが。
三代目までは聖職者の一般的な費用で賄われていた。四代目に伯爵家の娘が選ばれた際に、護衛の義務と莫大な予算が追加されていた。
「信仰ではなく政治の介入だわ」
グレンは黙りこくった。
アイリスも無言だ。
「…なぁ、おまえ、分かるか?」
「ごめん、さっぱり分からないよ」
平民二人には難しすぎる展開だった。なんとなくニュアンスは分かるが、実感が伴わないので内容が頭を素通りしていく。
「でも、考えても分からないことは、考えちゃいけない気がする!」
アイリスはキリッとした顔でスプーンに救ったオムレツを口に運ぶ。
グレンが「なるほど」と同意しようとしたとき、カミラがアイリスの腕を叩いた。
「おバカ!思考の放棄は怠慢よ!」
「だって!!」
アイリスも何か言いたいが、うまく言葉にならなくて口ごもる。
代わりにグレンが口を開いた。
「要するに、大聖女って何なんだよ」
グレンの端的すぎる質問に、今度はカミラが口ごもる。
「たぶん…、二代目以降はメンテナンス要員よ」
さすがに神聖な聖女をそこらの整備員と同等に扱うことに抵抗があったのか、その声は頼りない。
だか、小さい声ながらカミラははっきり呟いた。
「重要なのは結界を維持するのに必要な土地の場所なんだわ…。極端な話、神はそこに住んでいる者なら誰でも良いと思っているのよ」
セドリックとグレンが顔を見合わせた。
それなら色男好きの美人なお姉さんが聖女に選ばれても不思議ではない。
セドリックとグレンはザックの言っていたことを思い返す。
ある日唐突に、光が降り注ぎ村の娘が聖女になった。
「結界維持に必要な土地に、適当に光を当てて一番強く受け取ったやつが大聖女か…」
「まぁ、雑っちゃ、雑だね」
アイリスがポンと手を打った。
「そうそう、うちの村も急に光が降ってきたんだよ!」
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