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急変したアイリスの様子と姿に神官たちはざわめいた。
「か、髪の色が黒く…」
「あの瞳の色は何だ?まるで血の様な……」
恐怖と戸惑いの入り交じった視線を受け、アイリスが鼻で嗤った。
「どいつもこいつもまるで愚図ね。静かになさいと言ったはずよ?」
「お、おまえなんか聖女なんかじゃないっ…!!」
先ほどの男の子がさらに声を張り上げた。
アイリスの目がすっと細くなった。
「当たり前でしょう。なぜわたくしが聖女なのよ?ただ聖力が強いだけよ」
わけの分からないことを言うなと切り捨てる。
「し、神殿は困ってる人を助けるのが仕事だろう!!」
「何故わたくしがそんなことをする必要があるのよ?」
「神様の加護があるからだろう!!」
この神殿の教えだ。
神から加護を得た聖女たちは、その力で困っている人々を救う。
「神がわたくしに与えた加護をどう使うかは、わたくしが決めるわ。おまえに指図される謂れはないの」
「アイリス!!」
司祭が声を張り上げた。
いつものアイリスなら、声の大きさだけでへたり込む。
だが、今日は全く勝手が違った。
「煩いわね、黙りなさいと何度言わせる気なの?」
冷ややかな視線が司祭に突き刺さる。
「おまえ、そんな態度で…」
「わたくし、一切の力の行使を止めても良いのよ?この国を覆い尽くす結界が破れても構わないのかしら?」
さらりと告げられた言葉に司祭が固まる。
文句ひとつ言わずに黙々と働くアイリスに押し付けた結界魔法の強化は、本来なら五、六名の聖女が数時間も時間をかけて行うものだ。
「今まで、黙って従っていたのに…なぜ、急に…」
「愚かね。そんなこと、おまえに説明する筋合いはないわ」
バッサリと切り捨てるアイリスは確かにこれまでの彼女とはまるで異なっていた。
「それで、どうするの。結界を消滅させるのが望みなのかしら?神殿の大失態になるわね?」
「ま、まて!いや、待ちなさい。つ、疲れているんだろう。少し休みなさい」
これ以上、民衆の前に晒すのはまずい。本能的な勘が警鐘を鳴らす。
「言われなくとも休むわ」
尊大に言い放ち、治療を待つ人々に背を向ける。
「ま、待ってください!私の怪我はどうなるの…っ」
ようやく順番が来たというのに。
思わず女が叫んだ。
「怪我や病気なら病院へ行きなさい!無料で簡単に治そうなんて図々しいわね」
アイリスは女の方を振り返ると、不快感を隠しもせず片眉をあげた。
「し、神殿の聖女が…そんな…」
まだ恨みがましい目を向ける集まった人々にアイリスがはっきりと告げた。
「なんでもかんでも魔力で治したら自然治癒能力が衰えるでしょうが。だからおまえたちは軟弱なのよ」
顎を上げて吐き捨てる。
そして今度こそ振り返らずに、その場を離れた。
「あ、アイリス!」
その後ろを慌てて司祭が追いかけた。




