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「聞いてカミラ!」
嬉しそうに駆け寄ったアイリスが、グレンからクマのぬいぐるみを受け取ってくるくると回った。
「季節のパフェを食べたの!すっごく可愛くて、とっても美味しかったよ!」
「分かったから落ち着きなさい!」
きゃあきゃあとはしゃぐアイリスとカミラを見守りながらセドリックとグレンは視線を合わせた。
「操られてるわけでは無さそうなんだよね。信じられないくらいお人好しだから、利用される可能性はありそうだけど…」
「…それは心配ねぇ。あのクマ、高飛車だが割と単純だ」
セドリックが小さく吹き出した。
「随分、仲良くなったんだね?」
「なるか」
そこへアイリスが満面の笑顔で寄ってきたので、二人は会話を打ち切った。
クマを抱いたアイリスがピョコンと頭を下げる。
「セド、ありがとね!あと、グレンさんもカミラと一緒にいてくれてありがとう」
「…俺も、グレンで良い」
短く告げるとアイリスは弾んだ声で頷いた。
「分かった!ありがとう、グレン!」
「なぜ、この男に礼が必要なのよ。何もしていないじゃない!」
「てめぇ、ここまで運んでやったろうが!」
話しだすと何故かいつも怒鳴り合いになる二人にセドリックは肩をすくめた。
「仲良しだよねぇ?」
「ねー」
「「良くない!!」」
綺麗に重なった声にセドリックが盛大に吹き出した。アイリスは楽しそうにセドリックに囁いた。
「二人ともすごく似てるね?」
「言えてる」
「もうっ、その話は良いわ!これからのことを決めるわよ!」
カミラが忌々しそうに二人の会話に割って入った。
「これからの?」
「そうよ。神殿を直ぐにでも出たいけど、おまえの引き継ぎとかあるんでしょう?」
カミラとしては必要を感じてないが、アイリスがマニュアルとやらを渡すなら時間が必要だろう。
「結界強化はマニュアルがあれば平気だよ。ターニャ達には前に見てもらってるし」
「…は?」
「ん?」
アイリスがにこにこと首をかしげた。
セドリックとグレンも咄嗟にどんな反応をしたら良いのか戸惑った。
「つまり、もともとおまえが朝から晩まで働かなくても替えがきく状況だったということかしら?」
心持ち低くなったカミラの声に、全く気がつかずにアイリスが頷いた。
「うん。でも私がやった方が全然早いし、他の人達だとローテーションを組んでも、次の日に動けなくなるほど疲れるんだよ?かわいそうじゃない」
怪我や病気の治療も同じ思考回路で引き受けていたに違いない。
全くの善意ではあるが…
「この、お人好しのまぬけ!!!」
カミラが怒鳴りつけた。
アイリスは目を丸くする。
「ええー!なんで!?」
「おまえのそのまぬけな善意が、神殿の機能を低下させたのよ!この、おバカ!」
「いや、そこまで言わなくても…」
怒り狂うカミラの迫力に押されながらも、セドリックがまぁまぁと宥める。
「お黙り!おまえだって分かるでしょう!」
「いや、まぁ…分かるけど」
「…つまり、他の連中でもやればできることだったってことだろ?」
歯切れの悪いセドリックに代わってグレンがアイリスの方を向いた。
「役割分担だ。おまえが全部することによって、仕事を失うやつがいる。気を付けねぇと恨まれるぞ?」
アイリスが目を瞬いた。
思ってもみなかったことを言われたときの癖なのだろう。
「えっと…悪いことをしてた、…のかな?」
途方に暮れた目をした。
カミラがパフパフとアイリスを殴る。
「『悪い』んじゃないの、『まぬけ』と言ってるの!!」
「カミラ…?」
「そんなんだから、おまえは休みがなかったのよ!遊び損ねてるわ、人生を損してるわ!!」
畳み掛けるように勢い良く罵られた。
困ったように笑うアイリスに、グレンが更に追い討ちをかける。
「まぁ、やらなくて良いことをやって勝手に煮詰まった感じはあるな?」
「そ、そんな…」
分かりやすくアイリスが肩を落とす。
セドリックが不憫そうにアイリスの頭を撫でた。
「まぁ、これから気を付ければ良いんじゃない?今からでもたくさん遊びに行けるし、ね?」
「ね?じゃない!甘やかさないの!」
二人まとめて怒鳴り付けて、カミラは有無を言わさぬ声で宣言した。
「何があろうと、明日の朝一番に神殿を出るわよ、良いわね!!」
「えぇ、でも引き継ぎ…」
「出 る わ よ !!」
慌ただしい出発が決定した。




