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笑いすぎて過呼吸を起こしている二人を尻目に、カミラはサイファを睨み付けた。ほぼ八つ当たりだ。
「問題ないならさっさと処理しなさい。わたくしはこの無礼者達に話がありますので応接室を使うわよ」
サイファの片眉が上がる。
だが、すぐに胡散臭い笑顔を浮かべて一礼した。
「では、私は執務室で手続きして参りましょう。後程、応接室へ参ります」
そう言うと踵を返して颯爽と去っていった。
「ほらね。俺がいた方がスムーズだったでしょ?」
こちらも胡散臭い笑顔で小首をかしげた。あざとさまで上乗せしてくる。
カミラは不機嫌に息を吐くとさっさと歩き出した。
「応接室に人を近づけさせないで」
一番そばにいた司祭に命じると、セドリックとグレンを視線で促し応接室へ向かった。
パタン。
扉を閉めるとソファーの上座に優雅に腰を下ろす。
そして、後から続いてきた二人を振り返り正面のソファを指差した。
「そちらに座りなさい」
「息を吸うように上座を選ぶね?」
「当然でしょ?わたくしが主よ」
先ほどの大司祭とのやり取りでセドリックが高位貴族であることは分かったはずだ。
その上でこの態度。
「君は本当に何者なんだ…?」
「その話なら『知らない』と応えたはずよ」
「カミラは本当に何も覚えてないみたいなの」
大人しく腕に抱かれていたクマのぬいぐるみがつぶらな目で見上げてきた。
「そ、そう?」
このファンシーな世界観にいまだに慣れないセドリックは引きつった笑顔を浮かべる。
「ところで、おまえはいつまでクマなんだ?」
それまで黙っていたグレンがカミラの腕からアイリスを取り上げた。
「体を乗っ取られているのか?」
「失礼なこと言わないでちょうだい」
アイリスと目を合わせるように掲げて首をかしげるグレンを、カミラが睨み付けた。
「いつまでもこんな貧相な体にいるわけないでしょう!この交渉が終わったら体は返すわよ」
「って、カミラは言ってるし…」
アイリスがぽやぽやと応えた。
グレンの眉間にしわが寄る。
「おまえが選ぶことはできないのか?」
「え?できると思うけど…」
質問の意図が分からずアイリスが困惑した。カミラは正確にその意味を汲み取り嫌そうな顔をする。
「その男はわたくしがおまえを無理やり操っているのではないかと疑っているのよ」
「…えぇっ!?カミラはそんなことしないよ!!」
「ほらごらんなさい。本人はこう言っているわ」
カミラは目を細めて唇の端を持ち上げ、勝ち誇ったような顔をグレンに向けた。カミラとグレンに不穏な空気が流れる。
「おまえが何なのか分からない以上、警戒は…」
「…待って!!」
グレンがカミラに向かって口を開いたその時、アイリスが短く叫んだ。
これまでのおっとりした声ではない。
じっと気配を探るように集中している。
そして、ばっと顔を上げたかと思うとグレンの腕から抜け出し、カミラに突進した。
「ごめん、カミラ!ちょっと変わって!!」
「は!?」
カミラが反応を返すより早くアイリスが体当たりした。
ぱふっとぬいぐるみの体がぶつかり、かくんっとカミラがソファーに深く沈み込んだ。
ソファーに崩れ落ちたアイリスの髪の色が毛先から徐々に明るいブラウンに変わっていく。
閉じられた目が再び開いたとき、新緑のエメラルドグリーンが煌めいた。
「人が倒れてるの…っ」
バタンとアイリスが部屋から飛び出した。
「アイリス嬢、待って…!」
とっさにセドリックが後を追う。
それに続こうと、腰を浮かせたグレンはソファーに残されたクマの色がミルクティー色から真っ黒に変わっていることに気がつき、目を見開いた。
「ボサッとしないでわたくしを連れていきなさい!」
「か、カミラなのか?」
「他に誰がいると言うの!?」
非常識な出来事に加えて、理不尽に怒鳴りつけられたグレンは一瞬混乱する。それでも舌打ちしてカミラを抱き上げると、アイリスとセドリックの後を追った。
本日は2話公開です。




