53-パペッティアのマリー
こんにちは橘 弥鷺です。
元コンビニSVのダンジョン運営に、ご興味をいただきありがとうございます。
お読みいただければ幸いです。
尚、前作の完結しておりますSTRAIN HOLEもあわせて、是非、お読みいただければ、うれしく思います。
STRAIN HOLE
N6940GN
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ルイガノたち救助隊は、陥没した穴からアルトたちの行方を捜索していた。急傾斜の洞窟を降りると、平坦な洞窟へと出た。
「地下水脈か、陥没の影響はこれか? アリエテ隊長一度ここで車輌を止めよう。この先は、斥候を出してもらいたい」
ルイガノが無線越しにアリエテに依頼する。そこへニセンが口を挟む。
「ならば、うちの兵を出すが」
ニセンの言葉にアリエテが軽く笑って返答する。
「大隊長殿配慮には感謝するが、うちには適任なのがいるんだ。マリー聞いてたな一体を斥候にまわしてくれ! 大隊長のところの兵は連れてきた探索者たちと、この周囲の警戒と仮設施設の設営をお願いしたい」
ニセンが了解と返答し、指示を出すために車外に出ていく、マリーから応答が返る。
「了解しました」
ミーナが、首をかしげながら誰とはなしに口を開く。
「一体を斥候に? マリーちゃんて新人さんのオペレーターだったよね? 」
ややあって、後方のマリー搭乗する戦闘車側から、ミーナたちが乗るデイル搭乗の指揮車脇をトコトコと通りすぎるのが、外部モニター越しに映りこんだ。
「何!? あのぬいぐるみ…… 」
ミーナはピンク色の熊のぬいぐるみを見て唖然としている。クスクスと笑いながらデイルがミーナの疑問に答える。
「マリーちゃんが、新人なのにオペレーターに抜擢されたスキルよ。彼女はパペッティアの能力を有しているの」
「パペッティアって…… 人形使いの能力だったよね? 確かに珍しいスキルだね」
「そうね。ミーナちゃんは17式1型の弱点は、知っているかしら? 」
「えーと、弱点? 量産性、整備性、汎用性に優れているから、うちも旧式と入れ替えたんだよね…… 」
ミーナが、17式1型の利点は出て来るが、欠点や弱点は記憶にないようだが、仕方がないことだ。ミーナはオペレーターでもない、下界のダンジョン探索に向かう時に乗っていく戦闘車の欠点までは把握していない。ルイガノがデイルに引き継ぐように口を開く。
「ミーナは、いままでなぜ交互に戦闘車と装甲車が開発されたかはわかるかい? 」
「戦闘車は機動性や武装装備を優先する必要があるし、人員輸送型は逆に防御力と搭乗人数が優先でしょう…… そうか、両方の良いとこ取りだけど、その分不足する性能や機能もあるってこと? 」
デイルがにこりと笑い頷き口を開く。
「正解よ。17式1型は戦闘車よりの設計思想よ。もちろん、機動性を最低限確保しないといけないし、魔砲も他の武装も探索エリアによっては、装備する必要性があるの。だから、その分旧型装甲車に比べると装甲には難ありってわけ」
戦闘車としての装甲は確保しているが、人員輸送を主とした装甲車としての装甲を満たしていないのが、17式1型である。旧型の装甲車は、堅牢な装甲を誇る代わりに機動性に問題があり、その鈍重さによってモンスターに襲われたり、戦闘車が身代わりとなることもあった。しかし、戦闘装甲車として開発された17式1型は、戦闘型の機動性で人員輸送型も随伴ができ、装備によっては戦闘型の援護も可能で、機動性を活かして人員輸送型は自力回避を選択することも可能とした。
「それであの熊のぬいぐるみが防御担当と…… 」
「そう、だから、部隊長が開発に関わる以上、装甲の欠点を補う方法を模索していたわけ、マリーちゃんのパペッティアの能力は本物よ、それに新人とは思えないほどのタンクオペレーターしての操作技量もね。本人はあまり自覚がないのだけれど」
パペッティアのスキルとは、人形使いとされているが、要は物質を自身の手足のように操作できる能力である。パペッティアのスキルを持つ者自体が少数派ではあるものの、まったくいないわけでもないし、知り合いの探索者にひとりやふたりはいたりするのだが、ほとんどの者が、人形に護衛させるか、自身の周辺にある物を動かしたりせることから、探索者では、武器や盾を浮遊させ自身の周囲に展開する者が多いのだが、マリー・オリビアのパペッティアスキルは別格だった。マリーは、動かした物や人形を1キロ程度であれば操作が可能で、さらにその人形に戦闘や防御をさせることも可能であり、類稀な才能から、ランクの上がりにくい後衛でありながら、17歳の年齢で探索者ランクがBランクとランクアップのスピードは、前衛のミーナあたりと変わらないほどだ。ワールドトレックの中では、アルトやミーナたちに続く期待の新人であるのだが、マリーの性格と本人の希望により、着飾るタイプではなく、地味な外見やあまり目立つのが好きでないとのことで、手先が器用なことを買われ、武器や防具の修理や補修をおこなう、装具課に配属され後方の仕事をしている為、探索者の中での認知度は低い存在のマリーが、無線越しに大騒ぎしていることに、皆が驚きを隠せないほどだった。
「なんで?! 意味がわからないんですけど! 」
「どうしたマリー? 」
アリエテがマリーに返答を求めるが、マリーは気が動転しているのか、何か独り言を騒いでいてアリエテのの質問には答えられないでいる。
「なんで?! なんで?! 」
「マリー・オリビア返答しろ! 」
「マリーちゃん落ち着いて! 」
「わたし直接行ってくるよ! 」
アリエテとデイルがふたりで声をかけるが、マリーは
応答できないほどに、困惑しているようだ。それをみかねたミーナがデイルの戦闘車から飛び降りて、マリーが搭乗する装甲車へと走った。
「マリーちゃん! しっかりして! 」
ミーナがマリーの装甲車の扉を開き、操縦席のマリーの肩を揺らすが、マリーはカラダを震わして何か恐れてあるような様子にミーナには見えた。
「しかたない…… 」
ミーナは魔法を発動させてマリーへとかける。その魔法は、探索者のほとんどが使用できる低位の精神系安定魔法であり、探索者が戦意高揚や下界で孤立した場合に、心が折れないように使用することが多い魔法だ。
「ミ、ミーナさん…… す、すいません」
「それは、いいけど…… みんなが心配してる。アリエテさんに返答して」
「はい、隊長、副長取り乱してすみません……」
「何があった? 」
マリーの謝罪にアリエテが優しく諭すように応答した。マリーがひとつ息を吐いてから、その質問に答える。
「斥候に出したモモが乗っ取られました」
「乗っ取られた? 距離が遠くなって操れなくなっただとかじゃないのか? 」
「いえ、操作可能範囲外に出ることがないように、わたしたちパペッティアは操作するんです。しかし、さっきのは、強引に糸を引きちぎるような感覚です。ブツリと…… この先に何かいます! 」
マリーは、洞窟の先を睨みつけるようにしながら、応答した。
「わかった。聞いたか? ルイこの先に何かいる。おそらくアルトと姫様もだ。戦闘態勢で進むのがよさそうだ」
「了解した。選抜隊を編成します。戦闘車はアリエテさんとデイルさんが随伴してください」
「了解した」
マリーの操るぬいぐるみとの繋がりが切れたことによって、救助隊の警戒が高まることとなった。
お読みいただきありがとうございます。
次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。
前作のSTRAIN HOLEも何卒よろしくお願いいたします。
N6940GN
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