41-現場待機
こんにちは橘 弥鷺です。
元コンビニSVのダンジョン運営に、ご興味をいただきありがとうございます。
お読みいただければ幸いです。
尚、前作の完結しておりますSTRAIN HOLEもあわせて、是非、お読みいただければ、うれしく思います。
STRAIN HOLE
N6940GN
https://ncode.syosetu.com/n6940gn/
街道入口である駅前広場では、規制線が引かれ、駐留軍と自治区警察機構合同で、管理下におかれていた。戦闘車で駆けつけたアルトたちは、そこで停止することとなった為、一度戦闘車からおりて様子を伺っていると、アリエテが含み笑いとともにアルトへと声をかける。
「アルト言わんこっちゃない。軍から政府に依頼がなければ、ここで待機だぞ」
「まぁ待ってる間に25式の操作を確認しておくさ」
「いくらお前でもそう簡単に最新鋭技術をこれでもかって詰めこんだ試作機を使いこなされるとは、思えないのだがなぁ」
アルトは、アリエテが呆れるほどに、25式の操縦に楽観的な発言をしているのだが、その余裕の態度には理由があった。アルトは、視界の端で明滅するところに意識を向けると、25式操作アシストの項目を選び、内容を確認する。
25式操作アシスト
25式高機動戦闘車の能力を最大限活かせるようにアシストします。
内容になんの問題もないので受け入れる。これで、25式の操作に関しては誰よりも上手いことになるだろう。そこに後方から声がかかる。
「アルトの暴走も、さすがにこの先には行けなかったかい」
「ルイか、暴走などしていない。想定していたし、もうじき依頼が来るだろう」
「アルトがそう言うならそうなんだろうね」
ルイガノが、意味ありげな視線は、アルトのスキルで、何かを知りえたのだろうと、言わんばかりの視線を送る。アルトはそれに気がつき頷いて返答する。
「アルトくんを甘やかすのもほどほどにしてくださいね」
「デイルさん別に甘やかしているわけではないですよ」
デイルに指摘されても、ひょうひょうとかわすルイガノの隣にいるデイルを見ると、信頼する上司に対して以外の、何かしらの思いを含む姿に、アルトは気がつく、以前の記憶をたどれば、それに気がつくことはなかった。以前のアルトは節操がなく、自身の基準を満たす異性であれば口説いている男だ。それはデイルも対象で、過去の記憶では顔を会わせれば、口説いている記憶しかない。しかし、今のアルトにしてみれば無謀と時間の浪費に過ぎないと、過去の自分に呆れてしまう。アルトはそんな心中をおくびにも出さずに口を開く。
「まぁ今までのオレを見てればデイルさんもそう言いたくもなるよな。ルイもデイルさんが気にするほどにオレを擁護しなくていいからな」
「特に擁護なんてしてないんだけどね」
そんなアルトとルイガノのやり取りを見ていたデイルの表情が固まっている。いつもなら完璧なほどの微笑みを常に表情に浮かべているのがデイルだ。計算高いにせよ、本能的にやっているのかまではわからないが、自分の見せ方と相手にとっての自分の価値を理解していて、嫌味なく自分の価値をさらに引き上げられる女性。しかも、仕事ができるともあれば、好感を持つ人間は多いだろう。現代日本での社会人経験のあるアルトにとっても、味方につける相手であって絶対に敵にしてはいけないタイプだ。計算高くやっているのであれば、もっとも恐ろしい相手だ。まだ陰口を吹聴するような相手であれば、聞く耳を持たない人間もいるだろうし、本人も悪評がつくリスクもあるが、彼女のようなタイプは、人を介して周囲の空気を変えてしまうある意味スキルを要している。今のところ年下の盛りのついた調子に乗ったガキくらいの印象しか持たれていないのが、救いではあるだろうが、今後のコミュニケーションは気をつけるべきだろう。そんな事を考えていると、デイルが再起動したようでアルトに尋ねる。
「本当にアルトくんなの? ケガの後遺症かしら」
「後遺症って…… まぁ今まではガキが調子にのってたって思ってくれれば助かるかな」
「はぁ…… 」
デイルはアルトの返答に呆けている。今までのアルトならば、人目もはばからず口説き文句のひとつも言ってきただろうし、デイルもそれを軽くあしらって終わるのがアルトとの会話だったのだが、アルトがまともな会話をしようとしているのが、信じられないでいるようだ。
「アルトも心を入れ変えたってとこかな、デイルさんも驚きを隠せないようだね」
「まともな子になられたら弱点がなくなるじゃない…… 」
ルイガノがクスクスと笑いながらデイルに声をかける。デイルは少しだけうつ向いて小声で何か言っているが、ルイガノは聞こえずに苦笑するが、アルトはニヤリと笑い声をかける。
「まぁこれでルイにも迷惑かけることは減るからいいんじゃないか? 間接的にデイルさんにも迷惑かけただろうし、これからはルイのことで何かあれば協力するからさ」
アルトが意味ありげに言うと、デイルががばりと顔をあげる。その顔はデイルには珍しく真っ赤な顔をしている。異性から好意を向けられることには馴れておるのだろうが、自身が他人へ好意を抱く経験はあまりないようで、それをアルトに気取られたことと、好意を向けるルイガノの前でほのめかされたことで、デイルの思考は追いついていないようで、いつもよりも高い声音で声が漏れた。
「戦闘車で待機します! 」
「どうしたんだ? デイルさん」
ルイガノが気がついていないようでデイルの行動に疑問を口にするが、アルトはデイルに少しばかり同情する。
「乙女にはいろいろあるんだろう…… 」
「そうね~ 乙女っていろいろ大変なの」
そのアルトの言葉に後ろから声がかかる。アルトとルイガノが後ろを振り向くとそこにはセリカが立っていた。
「セリカさん乙女って…… 」
デイルよりさらに年上のセリカが乙女と言うことに引っ掛かりを感じたが、セリカの目がスッと細められたので、アルトはそれ以上は口にしなかった。
お読みいただきありがとうございます。
次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。
前作のSTRAIN HOLEも何卒よろしくお願いいたします。
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