33-誘導
こんにちは橘 弥鷺です。
元コンビニSVのダンジョン運営に、ご興味をいただきありがとうございます。
お読みいただければ幸いです。
尚、前作の完結しておりますSTRAIN HOLEもあわせて、是非、お読みいただければ、うれしく思います。
STRAIN HOLE
N6940GN
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「この谷を進むのか? 」
ジークがアルトに尋ねると、アルトは一度黙考するがすぐに返答する。
「そうだな、入った時間を考えれば、もうすぐ日没だろうから、ささっと通り抜けよう」
「今回は、お前のナビで短縮できてるからな、よし、警戒を厳に行くか! 」
ダンジョン内は、すでに日が沈みかけており、谷を抜けるまでに日没を迎える可能性が高い。下界は、夜になると危険度が増す為、警戒と休息に当てるのが、経験値の高い探索者が、生き延びた教訓でもある。谷に入ると片側の斜面が太陽を遮るので、既に外より暗く足元も渇いた砂地から岩がゴロゴロと転がり歩きにくい。
「ここを1キロも歩けば、また視界のいい平野になるから、そこで今日は終わりにしよう。ルイとセリカさんは、警戒監視を頼む」
「了解」
ルイガノとセリカは、アルトに言われた通りに魔法による警戒監視を行い、各五感を鋭敏にし了解に展開すると、セリカが口を開く。
「まるで罠みたいな谷だわ。谷の壁面に横穴がいくつかあるようですね。シャドウが日没を待ち遠しそうに頭を覗かしています」
「シャドウが上から降ってくるのか鬱陶し」
ニセンがセリカの話しにやれやれと頭をかいている。セナが口を開いた。
「夜のシャドウはそれほど手強いのですか? 当然座学や教訓では話しには聞いているのですが…… 実感がなくて…… 」
「シャドウは、昼間は弱いしどこにでもいるからね。昼間でも強いモンスターって数がそこまでいないから、そのモンスターの縄張りに入らなければ、遭遇することもそこまでないからね。シャドウは、音も立てずにそれこそ忍び寄るって感じだから、兄さんやセリカさんみたいに警戒できる人がチームにいないと厄介でしかないかな」
「なるほど…… 」
ミーナに説明されたセナは、まだ実感はできていないようだが、一応シャドウの危険性は改めて理解できたようだ。その様子を見ていたアーリエもミーナに尋ねる。
「脅威度の高ランクモンスターの縄張りも把握されているのですね」
「ドラゴンの巣は有名でしょ。それ同様に下界での生息域は調査してるよ。なりたて探索者の仕事ってその手の仕事が多いんだよ。その情報と自分たちの調査を元にダンジョン探索ルートを決定して、新しいダンジョンを見つけるはずなんだけどね~ 」
ミーナは肩をすくめてみせた。最近ダンジョン探索が失敗に終わっていることを言っているようだ。ミーナは呆れた感じに続きを話す。
「どこの探索者組合もそうだけど、開発部のレベルが落ちていて、自分の足で探索する人が減って、探索者の情報のみで探索ルートを決めている人が多いんだよね。もちろん探索者の人たちの努力で発見できることもあるんだけど…… 探索者組合の開発部ってそれなりの実力者のはずなんだけどね。楽して稼げるみたいに考えるおバカさんも多いんだよね」
「なぜそれほどレベルが落ちてるのですか? 」
セナが尋ねるとミーナが答える前にアーリエが口を開いた。
「ドラゴン遭遇事件が探索者の方々にも被害があったってことですか? 」
ミーナは苦笑して頷き口を開く。
「そっ…… 騎士の人たちもかなり被害あったって聞いてるよ。うちの父親やアルトの両親とかね」
「やはり…… わたしの父と祖父やセナの父君もです」
「そっか…… もしかしたら親同士も交流があったかもしれないね」
ドラゴン遭遇事件とは、約5年前に大々的に行われたダンジョン探索作戦時に、ドラゴンとの不意遭遇によって、騎士、探索者共に大きな被害が発生した。難易度の高い探索作戦の為に、当時の上位ランクの探索者が参加していた事により、その被害は探索者組合にとって大打撃となった。
「それだけ下界は過酷って教訓だからわたしたちも頑張るぞ! って感じ! さっさとこの谷を抜けてしまおう! エイエイオー! 」
沈んだ雰囲気を払拭するように、少しオーバーなくらいに拳を突き上げて、ミーナがアーリエとセナに向き直り声をかけると、ミーナに呑まれたのか、ダンジョンに入って高揚したせいか、いつもであれば、はしたないとしないだろうが、拳を突き上げて「オー!! 」と声をあげ、笑いなが3人で顔を見合せクスクスと笑っていると、先を行くジークが声をあげる。
「谷の出口が見えたぞ! 」
その声に反応して目を凝らすとアーリエたちのところからも谷の出口が白く小さく見えた。ジークが皆に声をかける。
「直線距離500メートル程度か、少し急ごう谷の中がだいぶ暗くなってきたから、シャドウが動き出しかねない」
「イヤ、急ぐことはない」
「どういうことだ? 」
ジークの言葉にアルトが即答し、ジークは怪訝そうにアルトを見ている。アルトはそのままベントレーに視線を向けて声をかける。
「ベンじぃいいか? 」
「いつのまにかアルトも意地の悪さを覚えたか…… 気がつかないふりまでしおって…… やれやれと、皆、目を閉じるか、こちらを直視しないようにな」
ベントレーがアルトの返答にぼやきで返しながら肩をすくめ、次には魔法を顕現させる。ベントレーの魔法は周囲に閃光を放ち、白一色の景色へと帰る。ベントレーの注意がなければ仲間とて、一時的ではあるが視界を失っていただろう。
「よし、後は自分たちで頑張ってもらえばいいだろう」
「なんで魔法を? 」
ジークがあらためてベントレーへと尋ねる。ベントレーは歩きながら返答する。
「この谷に入る前に、アルトが開発部の連中を見つけてのぉ、連中は先にこちらに気がついておってな尾行されていて、まぁ連中のことだ我々が目的地に到着したら横取りでも考えていたのじゃろうな」
「尾行? 」
「尾行と言っても連中にも隠蔽魔法が使える者があるのじゃろうて、隠蔽魔法を使うわしとて看破できぬ距離をアルトが看破してみたわけだ」
ジークは、ベントレーの説明に驚愕しながら、視線をアルトに向ける。アルトは何もなかったように肩をすくめておどけてみせた。ベントレーの隠蔽魔法は探索者や騎士の中でもトップクラスであることをジークも把握しているからこそのリアクションである。アルトはスーパーバイジングのスキルが戦闘後に魔法行使の警告が出たので、ベントレーへと声をかけたが、ベントレーではなかったことを知り、気がつかないふりをして誘き寄せた。ベントレーとルイガノには説明しこの谷をあえて突き進むルートを選んだ。アルトたちが谷から無事出たのと同時に後方から開発部の数人が悲鳴と共に走りながら谷から抜け出してきたようだが、ダンジョンに入った時よりも明らかに人数が足りない。
「仲間を見捨てて谷を抜けたのか? 」
「ウチの管理ダンジョンなんだからかまわんだろ! 」
ここは、下界の環境を模したダンジョンだからこそ、重傷や死亡判定されると強制的に出口へと転移させられるようになっている。アルトは地面に座り込み肩で息をしているマークの胸ぐらをつかみ尋ねる。
「いない連中は全員この谷のシャドウって訳じゃなさそうだな? 」
「ふんっ! お前らに関係なかろう? それとも正攻法でも我々に諭すつもりか? 」
「いくら判定で転移させられるとは言っても、一瞬に感じる痛覚や恐怖心はあることは、理解してるんだよな? それで復帰に時間がかかる探索者だっているんだよ! ましてやあんたの部下は開発部に選ばれるくらいの探索者だ! 最低限Bランクに限りなく近いCランク以上の探索者にはなっていたはずだ! 上位ランク探索者の方が、その感覚はキツいはずだ。なんの為にダンジョンガイドがいるのか探索者組合の理事が知らないとは言わせないぞ! ウチの理事にこんな探索者の風上にもおけないヤツがいるとは思っていなかったな」
アルトは、マークに凄みのある視線を向けて一気にまくし立てた。親子ほど年の差があるアルトに説教をされてプライドを傷つけらたマークは顔を真っ赤にして何か言おうとしているが、現役のダンジョンシーカーのアルトの凄みに怖じ気づいたようだ。
「マークここまでだな…… 」
ベントレーが自身が副装備として持っていたダガーをマークの膝元に放り投げた。
お読みいただきありがとうございます。
次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。
前作のSTRAIN HOLEも何卒よろしくお願いいたします。
N6940GN
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