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鉱物好物  作者: ヒロ
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だんだん外の寒気が和らいてきた気がする。春だ。春が来る。

前世の記憶を思い出してもうすぐ1年だ。1年間いろいろあったけど、最近7歳のジェマと気持ちが反することがなくなってきた。ジェマが行くよーっと駆けだすとわたしの気持ちも一緒に駆け出している。うじうじしたり、卑屈になったり、人の顔色みたり、逃げたりしたい気持ちが減ってきた。ああ、わたしはジェマなんだなとふと思うと、すとんと腑に落ちた。


甘えたことがなかったから、甘え方がわからなかった。殴られる、叩かれるだけの大人の手で優しく頭を撫でられる、抱きかかえられるなんて知らなかった。名前を呼んでくれ、笑いかけてくれた時に、どう返せばいいのかなんて経験したことがなかった。


それを全部7歳のジェマが教えてくれた。


生まれた時から愛されていれば、受け入れられていれば、暴力や暴言にさらされていなければ、きっとわたし、猪突猛進の何にも考えない楽しいと思うだけで駆けていく性格だったのだ。7歳のジェマは別人格ではなく、もし愛されて育てられていたら本来の自分はこうだっただろう。7歳のジェマの性格はわたしと同じだったんだ。


そんな性格だったなんて前世ではまったく気づかなかったよ。自分は真面目で慎重でこつこつ型だと思っていた。でもそれは大人の機嫌を取るため、1人で生き残るために必要だったからの擬態だったんだね。

この1年、ジェマが駆け出した時、わたしの心も駆けていった。気持ちよかった。だんだんジェマの猪突猛進に違和感がなくなってきた。わたし、本当はこんな性格だったんだ。


ジェマはわたしだ。わたしはジェマだったんだ。そう思えたら。涙が出てきた。

こっちの世界で大事に育てられている。

誰からも愛され受け入れられている。

毎日幸せで幸せで、戻る場所、帰ってくる場所はここなんだと実感する。


ああ、わたしはありのままの自分でいて、そんな自分でもいいよと受け入れてくる、自分が存在して居ても良い場所を探すために生まれ変わったんだろうか。

根無し草だった前世のわたし。

今この村でしっかり地に足をつけて生きているよ。


この村から出かけても、おかえりと迎えてくれる家族がいる。

全身で大好きと慕ってくれる弟たちがいる。

凍り付いていた前世の自分の心がこの1年でゆっくり溶けていったのを感じる。

前世を思い出して1年。ようやく7歳のジェマとわたしが融合し、新生ジェマは8歳になる。


この先もずっと、家族を愛し、石を愛し生きていこうと思う。

何十年か先に、この村が全部見える北の山のてっぺんにお墓を作ってもらって、「石を愛し、石に愛された子、ジェマ、ここに眠る」とか書いてもらおうか。


一気にお墓まで意識が飛んじゃったけど、この先、学園にも行くのだろう。磁器もガラスも色をつけてみたい。王宮から呼び出しがあったり、ヴェルナー様とアシュクロフト様と一緒に国中の鉱山を巡るだろう。前世大好きだったライラドライトの石にも会いたい。村のボーリング大会も続けたいし、リバーシ大会もやってみたい。


前世希望がなかったから、いま、やりたいことが浮かぶのが嬉しい。この村で出来ることがあるのが嬉しい。村が豊かになってきたのが嬉しい。わたしの人生これからなんだ。


遠くでティオとネオの遊んでいる声が聞こえる、お爺様がわたしを呼ぶ声も聞こえる。


「はーい!お爺様、今行きます!」


ぜんぜん淑女らしく無いけどわたしはわたしだ。

甘えてもいいのだ、萎縮しなくていいのだ、笑っていてもいいのだ、ここはわたしの帰る場所。


ふふふ、ははは。さっきまで泣いていたのに、今は笑いが止まらない。

わたしはジェマ。新生ジェマだ。さぁこれからも猪突猛進に生きていこう。ただ前だけ見て行こう。


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