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鉱物好物  作者: ヒロ
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そんな中、社交シーズも終わりに近づき、辺境伯様が領地にお戻りになる前にうちの村にお寄りになられた。

王都からうちの村まで5日かかる。

辺境伯領地は7日だ。

王都から辺境伯領との途中にあるといえばある。少し遠回りらしいけど、石焼き芋器のご家庭用をどうしても買ってかえりたくてお寄りになったそうだ。もちろん、うちに寄られたのは王都に行っていた辺境伯家全員ではなく、辺境伯様とそのお付きの方だけで来られたのだ、そんなに気にいっていただけたのなら嬉しい。


赤芋もついでに追加購入され、夕食でお出ししたポテトサラダにも驚かれ、白芋も大量に持ってかえることにされた。マヨネーズのレシピはお渡したよ。寄り親さんだもの。


「ジェマ嬢、もう一度辺境伯領に来てくれないか?あの時は王家直轄地巡りで、辺境伯領は少し横切っただけだった。山は売るほどあるんだ。どんな鉱石が埋まっているか気にならないか?」


なんという魅力的なお誘い!!

お爺様やお父様と相談して、寄親の要求は断ってはいけないと、お爺様と2人で辺境伯領へお邪魔することになった。辺境伯領まではうちから2日。行って帰ってくるだけなら一週間あれば足りる。


王家直轄地3か所巡りの1ヶ月よりずっとまし。お爺様と2人といっても、もちろんハンスはついてくる。7歳だから一緒に行く侍女はいらないことにした、辺境伯家には侍女もたくさんいらしゃるからねー。


そうして辺境伯様はうちで、家庭用石焼き芋器は当然として追加の箱庭テラリウムを買い、サンキャッチャーや水晶の栞、香炉や奥様に頼まれていた針山と針に、石の薔薇をお持ち帰りになることに。


お帰りになる辺境伯様の後追いで、わたしはお爺様と馬車に乗る、ハンスが御者だ。

冬の北の辺境伯領は、荒野と山だけだと辺境伯様は苦笑されるが、辺境伯領ほどの北側でも雪はあまり降らないそうだ。だから冬に死ぬ人は少なくて済むらしい。うちの国自体が全体的に温暖なのかも。


でも、魔獣は多いので、外を出歩く領民は少ないのだと言う。

辺境伯領に入ってすぐに牛のような大きな魔獣が出てきて、初めて見てびっくりしたが、辺境伯様とお付きの人であっさり倒されていた。これはこれで良い土産が出来たと笑われていた。辺境を守るっていうことなんだね。感謝。


2日後辺境伯家に着いたら、これは城?要塞?王都のタウンハウスが可愛いと思えるぐらいのがっつりとした大きな建物が現れた。全貌が見えぬ。


「ここ北の辺境は昔からドラゴンが住むと言われているから、対ドラゴンを想定してこれらの建物も建てられているんだよ。ちょっと厳ついけどね。」


対ドラゴン!!!!凄い。本当に異世界なんだと初めて実感した。

いや、わたしのスキルも前世まったくありえないものだけど、さっきの魔獣も凄かったけど、それでも、ドラゴン、ひゃあぁ感動する。


王都でも辺境伯家のタウンハウスで結構甘やかされた気がしたけれど、辺境伯領地でも結構わたしは可愛がられているみたいだ。

辺境伯家の侍女さんにお風呂に入れられ、綺麗なドレスをきて(長女さんの幼い時に着ていたドレスらしい)美味しいお茶にお菓子が出てきた。


例のお披露目パーティの時に石の薔薇を最初に話題にだされたお姉さんが辺境伯家の長女さんだった。後、嫡男の息子さんと次男さんがいるそうで、お2人は社交パーティでお留守のお父様の代わりに、辺境伯家を守っていたそうだ。


既にご長男さんは結婚していて、次男さんも婚約者がいて、辺境伯様がジェマ嬢を娘に出来なくて非常に残念無念と呟いておられていたけど、お爺様がしっかりガードしてくれていたから大丈夫。


わたしは結婚できるのかな。今はまったくその気がないや。7歳のジェマは恋愛感情に興味がないし、前世40歳のわたしも独身だった。精神年齢は7歳のジェマなみかもしれないけど、若い子に手を出す気はないな・・・。イケオジにはときめくけどね。まぁ一生お爺様と一緒というのもいいかもしれない。


充分寛いだ後、辺境伯様に連れられて家の前に出てきた、かなり寒い。

辺境伯様に、近場の山に何かないか、鉱物があるかどうかわかるか?と聞かれた。


わたしのスキルの探索は結構レベルが上がっているような気がする。広範囲で反応するようになったしね。辺境伯様に何の鉱物を検索したいのか確認してみる。それこそ硅砂や石灰とかだったら、どんどん反応しそうだけど、今回何がほしいのだろう。


「そうだな。領民の生活の質をあげてくれるようなものなら何でもいいんだけどな。」


ご自分の頭を搔きながら苦笑された。辺境伯様もこれといったものはないみたいだ。

んんん。ではMax能力で探索してみましょうか。生活の質を上げるといえば、宝石かな。宝石に準じるものぐらいも入れて検索を開始。


辺境伯家の広大なお城を出たすぐそこで、広い辺境伯領を調べる。んんん???

一か所なんだか金銀財宝宝石ざくざくの反応があるところがある。

北の山が重なっている辺り。

おかしいよね。一か所に集中して重なってざくざく反応している。


「あのー。辺境伯様、あっちの北の山の中腹あたりに、金銀財宝宝石ざくざくのところがあります。何種類もの宝石。大量の金銀の気配です。なんかありえないんですけど。心当たりありますか?」


それを聞いて、辺境伯様があーというようなお顔をされる。


「たぶん、ドラゴンの巣だ。父や祖父に聞いたことがある。あの山の中腹にドラゴンがいると。本当かどうかはわからなかった。でも、そう聞けばいるんだろうな。」


「どうしますか?行きます?」


「ん―――。難しいな。大事なお預かりしたジェマ嬢を危険な目に合わせられないし、だからと言って、知らぬ人間が巣を探せないだろう。」


「行きましょう。辺境伯様!!わたしドラゴンが見たいです!!!」


「ジェマ!!」


「ジェマ様!」


お爺様とハンスが慌ててわたしを止める。いやだって異世界だよ。ドラゴンみたい。

7歳のジェマもわっくわくだ。


「確かに、領地に残る伝説では、うちの領地に住むドラゴンは温厚で善のものであったというのは残っている。あくまでも伝説の話だ。」


「それでも、行きたいです。もし、遠くで見て危険ならすぐに逃げます。だから、ちょっとだけ行ってみたいです。」


うぬ。唸りだされた辺境伯様。お爺様もハンスもおろおろしている。


「よし、わかった。遠くで見て危険ならすぐに逃げるぞ。」


やった!!手を挙げて喜んでいると、お爺様もハンスも呆れた顔をしている。大丈夫よ。お爺様、わたしの直感、まぁ石絡みだけど、大丈夫だって言っているような気がする。


一緒に行くのは辺境伯様と、辺境伯領の強い護衛騎士が3名、従者が2人、わたしとお爺様とハンスだ。

護衛騎士はドラゴンが危険な場合、わたしとお爺様とハンスを担いで逃げてくれるらしい。わたしはいいけど、お爺様はがっつり筋肉質だから担げないのではないか?とちょっと疑問に思ったけど、黙っておいた。


「閣下、本当にあの山に行かれるのですか?」


護衛騎士のうち、副官と呼ばれる方が心配そうに聞いて来られたけど、腹をくくった辺境伯様は強い。


「ああ、領民のためにも行っておきたい。」


あの山は馬車で山の麓まで行けば、山中は1日で中腹まで行けるだろうと言うことだった。

準備を整えて、覚悟を決めたメンバーは硬い表情で山を目指す。


途中、あ、この辺、銀鉱脈ありそうです。あ、こっちは蛍石ありますよ。とか歩きながら反応があるところを指摘すると、辺境伯様は驚かれる。いや、そんなにたくさん埋まっていないけど、銀は樽10個分はあるかも。蛍石は樽2個分ぐらいかな。今はドラゴンが優先なので、後ろ髪ひかれつつ、先を急ぐ。


ああ、この辺ちょこっとだけ金ありそう。あの辺、サファイア出てくるかも。


気になるが気になるが、先を急ぐ。


山も少し登ると足元が悪い。護衛騎士の方が疲れてそうだ。山の多い村育ちのジェマも鉱山の管理しているお爺様も一緒に歩くハンスもまだまだ元気だ。


わたしが反応した金銀財宝宝石ざくざくの反応が強くなってきた。後少しだ。


「辺境伯様、あの岩の向こう側が反応が強いです。もしドラゴンがいるならそこだと思います。」


「そうか。ゼノン、そっと様子を見に行ってくれ。」


「はっ!!かしこまりました。」


そうご指名されたゼノンさんという方がさささと動かれていく。


「彼は慎重で身軽で信頼できるものなんだ。」


辺境伯様はドラゴンを気にして小さな声で囁かれた。お爺様をはじめ、一緒にきたものは全員ちょっと緊張している。


さささと岩の向こうを見に行ったゼノンさんが戻ってきた。顔が紅潮している!


「閣下、いました!ドラゴンがいました!!」


出来るだけ小さな声でも、かなり興奮されているのがわかる。

それを見て聞いて、周りのものも興奮しだした。だって伝説のドラゴンだよ。この世界にいるとは聞いていたけど、身近に見たことなんてなかったもの。


「ドラゴンは寝ています。そっと行けば大丈夫です。」


みんなでそっとそっと大きな岩のところまで進んでいくと、岩の裂け目から見ると、山の中腹が巨大な洞窟のようになっていて、巨大なドラゴンが寝ているのが見えた。うっわー。本当にドラゴンだ。ああ。これが見ることができただけでもここに来て良かった。


ずっとみんなで息を殺してみていると、ドラゴンがちょっと体を揺らした。みんなはっとして後ろに下がると、頭の中に声が聞こえてきた。


『にんげん・・そこににんげんがおるな・・・。ああ。だいじょうぶだ。攻撃などしない。面倒だからな。そこ。その一番ちいさいの。おまえを知っている。おまえの魂を知っているぞ。水晶の養い子よ。』


情報が多すぎて、みな思考停止してしまっている。ドラゴンが話しかけている??攻撃しない??わたしを知っているの!!!???


「ドラゴンさん、わたしを知っているの!!??」


7歳のジェマが我慢できないとドラゴンに声をかけた。ああ、前世のわたしだって飛び出したいぐらいだった。水晶の養い子って何?


『ああ、おまえだ。よく来たな。歓迎するよ。こっちまで下りてくるか。そこらのにんげんもいっしょに招待しよう。』


そうドラゴンに誘われて、皆で気をつけてドラゴンの巣まで下りていく。下りれば気づく。ドラゴンの巨大さを。めちゃくちゃ大きい。何十メートルあるんだろう。

でも、頭の中に響く声は優しい。だから、みんなここまで下りてこようと思ったのだ。


「ドラゴンさんは、ここで1人なの?寂しくないの?」


『昔は空を飛んだり、友に会ったり、にんげんに崇められたりしたな。今は寝ていることが多い。そういう時期だと思う。寂しいという感覚は持っていない。1人でも友がいてもにんげんと関係していても、いつもそういうものだと思うからな。』


「そうなんだ。今回お邪魔してうるさくなかったですか。」


『いや、このぐらい大丈夫だ。あ。せっかくここまで来たのであれば、にんげんに崇めたてられていた時にたくさんの財宝を供えられた。それが寝床を邪魔して寝返りがうちにくい。ちょっと処分してくれないか。この辺からこの辺まで邪魔』


そういって、しっぽでこの辺からこの辺を知らせてくれるけど、結構広範囲。いいのか?


「財宝も金貨銀貨も多いですが、宝石も多いです。構わないですか?」


『ああ、にんげんが宝石を呼ぶものは、我が寝ていると、その辺の土や石が変化するのだ。勝手に宝石になるので好きにするがよい。』


え?勝手に宝石になる?んですか?は?へ?えええーー??

よく見てみれば、ルビーやサファイア、ダイヤモンドなどはカットされていない原石のような感じでごろごろ転がっている。

ドラゴンがいれば、普通の岩も宝石になるのか。なんだか凄いな。


「ドラゴン殿、頂いた金貨銀貨、財宝、宝石の原石は処分というのか、わたしたちが頂いてそれを加工して売っても良いのか。」


覚悟を決めて辺境伯様がお聞きしている。


『ああ、我には邪魔のものだから、好きにして良いぞ。ああ、この壁も我のせいでミスリルになっておる。少しぐらいなら持っていって良いぞ。我がいると銀岩盤もミスリルに変化してしまうのだ。』


ほえー。ミスリルだよ。異世界ファンタジーだよ。びっくり。まさか辺境伯領でこんな出会いがあるなんて!


金銀財宝宝石類はわたしのインベントリに入るものはせっせと入れていく。寝返りを打つ時邪魔と言われたあたりはすっきり片付けた。

ミスリルは銀が魔力で変化したものだと言う。長年ドラゴンが寝ていて、魔力も駄々洩れだったのではないかと推測。

これまた、こっからこの辺りまで良いぞと言われたところを、採掘切り取り抽出でゲットする。


よし、ドラゴンに指示されたことは全部できたなと思った時、ドラゴンがちょっと笑った気がした。


『ちっこい、にんげん、そなたのすきるとやらは、養い親の水晶から伝わってきたことがある。

Mineral Affinity Resonance with Crystal Veins Custodia Minera Philia 古代語だ。古代語が読めないやつには、読める部分だけ翻訳されて表示されていただろう。石と共鳴する石の守り手という意味合いを持つ、これらの金貨銀貨財宝宝石も、おまえの手元にいきたかったのだろう。よきかな、よきかな。』


そういうと、またドラゴンは寝てしまったので、わたしたちも山を下りることにした。

なんだか、本当、世界が違ってみえる感じだ。


辺境伯領のお城の前に辿り着いた時、みなで大きなため息をついた。ああ。びっくりした。驚いた。でも、素敵だった。かっこよかった。本当に凄かった。息を飲んだし、興奮したし、飛び上がって、ドラゴンに会ったの!と叫びたいぐらいだ。


大人たちは少し放心状態。何も考えられませんといった感じ。

剛毅なお爺様もひょうひょうとしたハンスもそれなりに衝撃を受けていたようだ。メンタルお強そうな辺境伯様が一番に我を取り戻した。


「ジェマ嬢、今回は本当に感謝する。北の辺境伯家として感謝する。北を守護するドラゴンと会話できるとは思ってもみなかった。ドラゴンはジェマ嬢を知っていると言っていたが、以前会ったことがあったのか?」


「いえ、今回初めてです。わたしもびっくりです。なにがなんやらわからないです。」


「そうであろうな。わたしでも初めて会った、ほんと信じられないぐらいの感動と動揺だった、でも、終わってみれば上手くいって良かった。」


辺境伯様がじーんと感動を味わっておられたけど、いつまでも財宝持っているのもなぁ。自分のものじゃ無ければ全部出してしまいたい。


「それで、辺境伯様、ドラゴンの巣から持ち帰った金貨銀貨財宝宝石はどこに出しましょうか?」


「ああ、そうだな。舞踏会を開ける大広間があるから、そこに出してもらうか。今から一緒に向かおう。」


玄関で放心状態だった皆も、はっと気づいて後ろを着いてくる。歩きながら、だんだんドラゴンに会って、財宝を邪魔だから片付けてねーと頼まれたことが、本当のことだったのだとじわじわ実感が出てきたのか、みな興奮してきたようだ。


大きなホールに辿り着いた。300人ぐらいは入れそうな広さ。縦にも横にも広いし高さもある。なんだか凄いところにきちゃった。

辺境伯様の館ってお城みたいで要塞みたいで凄いと思ったけど、中も凄いね。


この凄いところに、ドラゴンから邪魔だから処分してと頼まれた、金貨。銀貨。財宝。宝石の原石をごろごろ出していく。金貨多いな。いや、宝石の原石も多い。財宝は宝石の飾りのついた刀や、指輪、メダル、壺とか多そう。でも、ドラゴンに指輪ってなんなのと思わないでもないけど。それにしても凄い量だ。ドラゴンの巣ではそれほどと思わなかったけど、あれはドラゴンが大きすぎて比較対象ががばがばだったのだ。


小山になってきたそれをみて、辺境伯様も驚いた顔のまま固まっている。護衛騎士様もお爺様もハンスも同じように固まっている。


宝石はルビー、サファイア、ダイヤモンド、エメラルドかなぁ。カットしていない岩がごろごろだ。前に王妃様にお渡ししたルビーの原石ぐらいは皆ある。それが何十個もある。あ、ミスリルも出しておこう。インゴットをずらずらと並べる。重いからもちろんスキル運搬を使っている。これがないと貴金属って全部重いから、非力のわたしじゃ持ち上がらない。スキル様々だ。


「これは、王宮にどう報告すべきか、悩ましい。もちろん、ごまかそうとするのではないが、ありのまま伝えて伝わるのか。これだけの量をすべて数えて報告しなくてはいけないのが、大変だなとか。思うと・・・。ため息が出るよ。領民のためには絶対になるのに。辺境伯も国も潤う。わたしは、この地で優しいドラゴンの話を語り継ぐ事にするよ。」


わたしたちがドラゴンの巣から財宝を持ち帰ったと館内で通知が出回ったのか、奥様と娘さんが大広間に顔を出されて、小山になっている財宝等に目を輝かせた。


「お、お父様、これは、ドラゴンの財宝ですか?お父様がお持ち帰られたのですか?!」


「ああ、なし崩しにそうなった。まずは王宮への報告が先だ。そこでどれぐらい王家に献上すべきか、どれぐらい辺境伯家の取り分となるか、そのうち、グラニット子爵家にどのぐらいお渡しすべきか決まるだろう。」


え?うちの分?いや、うちはいらないですよ!!


「辺境伯様、うちは必要ありません。今回は辺境伯領の鉱物をジェマが探すといった案件でした。探したものを受け取るつもりはありません。」


そうそう、いっちゃってお爺様。うちはそんな財宝もらうと盗賊がきたら怖いものね。

それにわたしはドラゴンから自分のスキルを聞けてそれだけでいいかな。古代語の方は何言っているのか、さっぱりわからなかった。

だから、こっちの司祭様は『石好き』と感じとり、わたしは前世の知識で『鉱物好物』と感じたのだろう。だから、『石と共鳴する石の守り手』と言ってもらえたのが嬉しかった。今回の報酬はそれで充分だよね。


奥様や娘さんが金銀財宝宝石ざくざくの小山に近づいて感動していた中、辺境伯様は、うちが辞退したけど、王宮の判断に任すということになってしまった。


使用人たち総出で、金貨、銀貨、財宝、宝石の岩石を分けて数を数えていくそうだ。


「国家予算を超えるかもしれぬ。わたしは領地の領民の暮らしを良くしたいためにジェマ嬢を招いたが、何故、国家予算規模の財宝が大広間に積みあがっているんだろうな。」


「ええっと。ドラゴンに邪魔だって処分してくれって頼まれたからだと思います。」


「ああ、そうなんだよな。ドラゴンに寝返りうつときに邪魔だって言われたよな。確かにそうなんだ。いや、領民のために欲しかったんだけど、なんか違う気もする・・・」


まぁいいじゃないですか。これでガラス工房も無事に稼働したみたいだし、きっと辺境伯領も豊かになりますよ!!!と、綺麗に纏めておこう。


「あ、どうしても受け取らなければいけないのであれば、ミスリルを少し下さい。何が作れるか興味があります。」


「ミスリスは魔力を通すから、魔剣が作れる。」


それを聞いて、周りの騎士たちが野太く、おおーっと声があがる。これだけの量があるから、魔剣を手に出来る人も多くなるだろう。なんだか作業に気合が入ってあるように見える。


「魔獣と戦う時に非常に助かるだろう。辺境伯領としては、王宮に選ばしてもらえるのであれば財宝よりミスリルを多くいただきたいと思う。」


それを聞いて、財宝の山から綺麗な指輪やネックレスを見ていた奥様と娘さんが驚く。ええっといった感じだよね。


まぁ全部王宮次第なんだけどね。

その後、わたしたちは、この騒動のまま、帰宅し、平和な村での生活をしていた時に、辺境伯様よりお手紙が届いた。


王宮にすべて報告したこと、おおよそ金貨10,000枚、銀貨20,000枚、宝飾品が100個、壺が10個、宝石の岩石が30個ほどあったらしい。そのうち、半分を献上することにしたそうだ。ドラゴンと会ったこと、ドラゴンに処分を頼まれたこと、そもそも北の辺境伯領の守護竜ではないかということで、全部国に差し出すことはしなくても良いということになったのだとか。


半分でも、国家予算程度の価値はあるとかで、辺境伯領としての予算とすれば7年間分となるらしい。日本円で500億円程度だそうだ。

辺境伯領って年間予算70億円なのか、すげー。うちの村が1億円って本当慎ましい感じだったのね。まぁ辺境伯領は使用人も多いし、護衛騎士団も多いし、人件費かかっているだろうし、王都のお城のようなタウンハウスの維持費、こっちの要塞のようなお城の維持費も凄いだろう。領地も広いしね。桁が違うね。


ミスリルも王宮と辺境伯領は半分にしたそうだ。これで魔剣がたくさん作れると喜んだと書かれていた。そして辺境伯領の取り分から、ミスリルのインゴットを3個、ルビーとエメラルドとサファイアとダイヤモンドの原石が1個ずつ、金貨が100枚、銀貨が200枚が我が家の取り分として受け取ることになったそうだ。えー。多くない?


金貨だけでうちの年間予算じゃない?お爺様もお父様もお婆様もお母様も声が出ないようだった。わたしとお爺様がほんの1週間程度辺境伯領へ行っただけで、いただける量としては破格だろう。


「宝石は当分原石のまま売らないでおこう。これはいつか何かあった時のうちの隠し財産にしよう。」


お爺様はそう決定した。いつか何かあった時のためのもの。保険みたいだね。備えは大事。これで飢饉の時も村人を救えると、お父様は心からほっとしたようだ。


ミスリルは、1本は宝石と一緒に何かあった時用に保管、もう1本はゴンゾさんに頼んで魔剣を作ってもらうそうだ。これは男のロマンなんだとお爺様とお父様がうっとりしているけど、使うのはお母様なんだろうな。


もう1本はわたしが貰った。何を作ろうか悩むところだけど、これはいつかティオやネオが剣技のスキルがあれば剣に、魔法のスキルがあれば杖を作れるように保留しておくことにした。可愛い弟の門出を祝うのだ。ふふん。ちょっと良いお姉様になった気がする!!


ドラゴンのことは不思議だけど、いつ会ったんだろう。水晶の養い子ってなんだったんだろう。でも、それを聞くと懐かしい気がする。いつかどこかで会っていたのなら、覚えていないぐらい昔の話かも、前世を思い出した今だからわかる。前世と今世の間で会ったのかもしれない。そんな気がしてきた。また会えるかな。いつかまた会いに行こう。


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