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鉱物好物  作者: ヒロ
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朝!わたしの朝は早い。前世から朝型で目がすきっと覚める。前世、子どもの時、起こされる時殴られたり蹴られたりしたから、そうされないように危険察知のため早く起きることができるようになったのかも。早く起きて安全な場所に移動しておくこと。小さな子どもでも生存率あげるための知恵だったのかもしれない。痛いのは嫌だものね。

今世はそんなことはないけど、魂に刻まれているのか朝は早く目が覚める。

清々しい気持ちの良い朝だ。


朝食を食べて、お弁当に茹でた芋をいくつか包んでもらって、お爺様とハンスと一緒に出掛ける。ハンスは御者をしてくれているけど、下働きもするし、こうしてお爺様と一緒にお出かけもする。常にお爺様と行動している。貧乏男爵家だからのあるあるで1人の使用人がいろんな役目をこなしてくれている。有難い。お弁当の芋もハンスが持ってくれている。


廃坑は村を抜けて、しばらく歩いたところにある。昔、鉄鉱石が取れたそうで、村の資源にもなっていたそうだ。鉱山はシーカーや斥候のスキルを持った人が山を歩き、それっぽい石を見つけたら、報告し、山師や鑑定士に判断してもらうという方法を取っているとお爺様が教えてくださった。

この廃坑は、見える範囲にもうすでに鉄は無いと鑑定士が判断したそうだ。昔は鉱山の村もあったらしいけど、今は、人は誰も住んでいない。埃っぽい廃村になっている。


お爺様はそんな廃坑に足を運び、魔物が住み着いていないか確認しているのだと聞いた。


村に役立つなら鉄もいいだろう。でも、他の金属はまだあるんじゃないだろうか。人のいない寂れた廃坑に何かあるような気がしてわくわくしてしまう。


「お爺様、わたしここで、『鉱物の探索』使ってみます。」


「おお、ジェマ頼むよ。」


ソナーのように、自分を中心に村に必要な金属と特定して探索をする。ぴこんと頭に中に何かが引っかかる。こっちの方角だ。


「お爺様、こっちです。」


「ジェマ、ちょっと待ちなさい。そっちは少し地盤が緩い、だから奥まで行くと危ない。」


「お爺様、大丈夫です。『鉱物の硬化』これでこの辺は岩盤が硬くなりました!」


「え?硬くなった?」


「ええ、スキルに『鉱物の硬化』があって石を硬くできるんです。この岩盤を硬くしてみました!」


「お、おう。そうなのか。ジェマは凄いな。」


お爺様とハンスが何やら言いたげな顔をしていたが、わたしはぴこんと反応した金属を早く見てみたくて、速足で坑道の奥に進む。手に持つランタンの中のろうそくの灯がひらひらと揺れる。消えると真っ暗になるから気をつけないと。


ここだ。この辺り、坑道の壁に『鉱物の鑑定』銅?なんか緑っぽいけど、銅だ。


「お、じ、い、さ、まー。こっちです。」


「ジェマ、どうした。何か見つかったのか。」


「お爺様、この辺全部銅鉱石です。この緑っぽいところ。銅です。」


「な、何!!銅だと。ここは廃坑ではなかったのか。鉄はもう無いという鑑定だったのだ。あの鑑定士、鉄以外については、鑑定しなかったのだな!!!」


「お爺様、ここちょっと採掘してみます。」


「じぇ、ジェマ?採掘とは?ジェマはツルハシ持っておらんよな。」


「お爺様大丈夫です!なんとわたしのスキルで採掘できちゃうのです。」


スキル『鉱物の採掘』魔力を使っているのか、よくわからないけど何の力も使わず、ざっくり掘れた。へへへ。結構な塊。


「お爺様、これを持って帰って、村の鍛冶屋のゴンゾさんに見てもらいましょう!」


「ジェマのスキルはなんていうことだ。魔力は大丈夫か。使いすぎていないか?」


「お爺様大丈夫です。この銅の銅鉱石を運搬して収納も出来ます!」


「ジェマは凄いのう。さすがわたしの孫だ!ゴンゾにこの塊でどのぐらいの銅が精製できるか試してもらわないとな。銅が取れたら、鍋や釜、やかんも作れる。青銅や真鍮にすることも可能だ。上手くいけば売れる商品も作れるかもしれないぞ。」


「そうなんだ。青銅と真鍮か、良いものが作れるといいな。」


青銅と真鍮、あ、真鍮って黄銅だよね。10円と5円の材料だなと前世の知識がふと浮かぶ。


「ジェマはここの銅がどのぐらい埋蔵されているのかわかるか?」


「ええっと、ちょっと待ってね、お爺様。」


『鉱物の探索』で探索範囲を広げてみる。ううん。銅鉱石は、わたしの部屋の10個分ぐらいに広がっている。結構みっちりあるように感じる。多いのか少ないのかわからない。


「お爺様、銅鉱石は、わたしのお部屋の10個分ぐらいはありそうです。」


「そ、そうか、結構あるな。良し。ゴンゾに、このひと固まりでどのぐらい銅が精製できるのか確認してから、山師を呼ぼう。」


「お爺様、わたし銅鉱石近辺の坑道の岩盤硬くしておきました!!銅鉱石はさくっと採取できるはずです!」


「おお、そうか助かったぞジェマ。だが、ジェマは無理をするな。ここからは大人の仕事になるからな。」


「はい。お爺様、皆さんの邪魔にならないようにします!」


「はは、ジェマに何か褒美を出さねばならないな。」


「それならば、今度行商人のおじさんが来る時にお小遣いを下さい!」


「ああ、いいぞ、今度来た時に500ノル渡そう。紐なら結構買えるぞ。」


「お爺様、ありがとうございます!とっても嬉しいです!」


「そうか、また銅が本格的に採れて採算がある程度とれたら、またお小遣いをやろう。」


お爺様もにこにこである。2人で手を繋いで坑道を歩いている。ハンスはわたしたちの前を歩いてくれている。3人のろうそくが楽しそうに揺れている。坑道は広めで大きいので閉塞感はない。ここで鉄がたくさん採れた時代をわたしは知らない、少し裕福だったのだろうか。


テンション高めのお爺様と一緒にゴンゾさんの鍛冶屋に行き、収納していた一抱えの銅鉱石(50センチ四方)を取り出す。


「旦那様、これは?」


「ゴンゾ、例の鉄の廃坑で見つかったのだ。おまえの感覚ではどんなもんだ?」


「へえ、結構銅は多めに含まれていますね。良い銅鉱石です。」


「そうか、これがジェマの探索だと、12畳の部屋10個分ぐらいはあるそうだ。」


「な!それは凄い。旦那様、一儲けできそうですね。」


「ああ、明日以降忙しくなるぞ。ゴンゾはどのぐらいここから銅が取れるのか精製してくれ。」


「かしこまりました。スキルを使えばすぐなので、少々お待ちください。『抽出』」


一抱えあった銅鉱石があっという間にレンガぐらいの大きさの銅のインゴット8個分になっている。な、凄い!ゴンゾさんのスキル凄いよ!あ、抽出。わたしも持っている。そうか、こんな感じで使えば良かったのか。


「旦那様、この銅鉱石凄いですよ。あの大きさでこの銅の含有量。全部がそうではなくても、結構採れそうですね。含有量としては2割から3割ですね。優秀です。」


「そうか、それは良いな。ゴンゾ、しばらく働いてもらうぞ。」


「はい。旦那様。楽しみですね。」


ゴンゾさんのように抽出のスキルを持っているものが、鉱山に行き、採掘された鉱石を鉱山の前の広場でインゴットにしてから運び出すそうだ。大きな鉱石のままだと運搬も大変だものね。


「最近は、鍋や釜の修理ばかりで仕事が減っていたので大変ありがたいです。」


「ゴンゾ、よろしく頼むぞ。」


「かしこまりました。」


お爺様もゴンゾさんもいい笑顔だ。

明日から忙しいぞとお爺様がゴンゾさんに声を掛けながら外に出る。

鍛冶屋の戸が閉まると、外の空気がひんやりしている。鍛冶屋はやはり熱気があるんだね。銅のインゴットは、1個以外はゴンゾに預けてきた。残り1個はお爺様がお婆様やお父様に見せたいというので、わたしの収納に入っている。


あの廃坑の奥、薄暗い岩肌にあの緑の石がまだ眠っている。そう思うと飛び上がりたいぐらい嬉しい。スキル授与されて、鉱物に関する勘が良くなっている。お爺様が鉱山の管理に領地の鉱山を回られていると聞いた時、廃坑が気になってしまった。行きたいと感情が出てきていた。何かまだあると予感がした。本当に銅が出るなんて嬉しい。家族の役に立つのが嬉しい。


今世の家族は、ちゃんと優しく名前呼んでくれる。ちゃんと目を見て話してくれる。褒めてくれるし、否定もされない。前世思い出してから何度この幸せを感じたか。

ちゃんと幸せになろう。今度こそ。絶対この大事な家族をわたしが幸せにしたい。


わたしは自分の中で決意新たにしながらも、今日の収穫でうきうきでテンションが高いままだ。お爺様もわたしも家に戻る足取りが軽い。早くみんなに報告したくてついつい速足になる。


「旦那様、ジェマ様、そんなに慌てて歩かれますと石に躓かれますよ。お気をつけてくださいませ。」


「いや、だが、ハンス、銅が見つかったのだ。嬉しいではないか。」


「ようございました。これで村も少し潤うでしょう。」


ハンスもお爺様としばらく忙しくなるだろう。ハンスのお仕事はお爺様付だから仕方ないだろう。


「お爺様、家が見えてきました。わたし先に戻ります!」


7歳のジェマは猪突猛進だ、彼女に体を任すといつでも駆けだしてしまう。前世、委縮して卑屈になって固まり切ったわたしの心が、7歳の天真爛漫なジェマの心に癒される。裏表もなく、ただただ嬉しいー。っていう気持ちだけで駆けていける。なんて気持ちいいんだろう。

7歳のわたしに前世の40歳のわたしが便乗する。初めて知る、心の底からの楽しいっていう気持ちを味わう。大好きな家族のいる家に。さぁ帰ろう。


「ジェマ、待ちなさい。そんなに走ったらこけるぞ、待て、待ちなさいー。」


お爺様とハンスも後ろで駆けてきている気配がするけど、わたしは一気に家まで駆けていった。楽しくて楽しくて仕方がないのだ。


「お婆様、お父様、お母様、ティオ、ネオ、ただいま!」


息が切れてきた。春なのに走ったせいで体中熱い。後ろでハンスが苦笑まじりに肩をすくめていた。


「お嬢様、どうか落ち着いて。」


「ジェマ、いつの間にそんなに早く走れるようになったのじゃ、やっと追いつけた。」


「まぁまぁ、お爺様にジェマおかえりなさい。ハンスもご苦労様。」


「ジェマ一体どうしたの?」


「これ、見つけたの。廃坑で見つけたの。」


インベントリから銅のインゴットを取り出すと、お父様の目がきらりと光った。手を差し出したお父様にインゴットを手渡した。見た目はレンガぐらいだけど10キロぐらいはあるんだもの重い。


「ジェマが廃坑で、銅の鉱脈を見つけたのだ。廃坑にする前に頼んだ鑑定士は『鉄はもうない』としか鑑定してなかった。鉄以外があるのかなんて指示されていなかったからしなかったというのだろう。」


「ジェマが見つけたのか、凄いな。」


「まぁ。ジェマ凄いわ。廃坑から銅なんて。」


「姉さま、銅って何に使われるのですか?」


「ティオ、銅はね、お鍋作ったりするのよ。」


「おなべー?」


「ネオはお鍋みたことないかしら。今度一緒に厨房へ見に行きましょう。」


「あーい。」


ああ、可愛い。ハグしちゃおう。ネオに抱き着くと、きゃっきゃと嬉しそうに笑う。ああ、可愛いー。小さなおてても、高い体温も、少し汗ばんだ髪の匂いも可愛い。


「姉さま、僕も一緒に見たいです。」


「ええ、ティオも一緒に見せてもらいにきましょう。」


ティオの頭も撫でてあげると、目を細めてきゅっとして笑う。可愛い。うちの弟まじ可愛い。


「マルタの邪魔をしちゃダメですよ。」


「「「はい!」」」


「それにしても、銅か。鍋にするか、インゴットのまま売るか、青銅にしてナイフでも作るか。さて、どうしようか。」


「まぁ父さん、とりあえず採掘して抽出してインゴットで保管すればいいじゃないですか。」


「そうだな。とりあえず全部インゴットにしてしまおうか。1階の倉庫で使っていない空倉庫あったな。そこに保管しよう。ゴンゾとゴンゾの弟子のシナイが大変だな。」


「うちの領地でも銅が採掘できるなんて、嬉しいわね。少し真鍮にしていただこうかしら。」


「あら、お義母様、真鍮ですか?」


「ええ、燭台や小さな化粧箱も良いかもしれないけど、ジェマの裁縫道具、鋏や指ぬきなどに良いかと。」


「え、お婆様。わたしの裁縫道具ですか!」


「ジェマはこれからもアミュレット作るのでしょう。ジェマ専用の裁縫鋏あると便利ですよ。」


「お婆様!!真鍮は黄銅のことですよね。お婆様は真鍮の方が馴染んでおられるのですね。真鍮は亜鉛が要りますね。亜鉛もうちの領内にあるか探索してみます!!」


「ジェマ、よく真鍮は銅に亜鉛って知っていましたね。亜鉛はあんまり無理をしてはダメですよ。」


「ジェマは亜鉛も探すのか。ああ、銅の鉱脈の近くに一緒にある可能性があるな。次に廃坑に行く時探索してみるか?」


「亜鉛って銅鉱脈の近くにあることが多いんですね。是非。一緒に行きたいです。」


「まぁ銅の話は、今はこれぐらいで、もうすぐ食事の時間ですよ。旦那様とジェマは外から戻ったそのままでしょう。着換えていらっしゃい。」


「はいお婆様。すぐに着替えてきます。」


「姉さま、また銅のお話を聞かせて下さい。」


「ぼくもー。」


「ええ、銅鉱石がどんなに綺麗だったかお話するわ。とりあえず着換えてきます。」


その夜の夕食では、お爺様と一緒に廃坑の銅鉱石の話をたくさん披露させてもらった。岩盤を硬化することができたという話はお母様が興味津々だった。緑の石が、鈍く赤く光る銅色のインゴットになる過程が不思議だとティオが言う。話が弾み、今度真鍮も作ってみるねという話で終了した。

ちなみに夕食は野菜のスープ塩味とベーコンと目玉焼きだった。お父様の野菜は美味しい。塩味でも滋養の味がする。もっと美味しくしたいんだけど、山にハーブでも探しにいこうか。悩ましい。


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