47
そしてランチ形式の披露パーティ当日。
わたしは冬場で咲いている花が少ないから石で花を作って飾らせてもらった。白い石はアラバスター、少しピンクの石はピンクカルサイト、半透明の黄色の石はハニーカルサイトを全部薔薇の花にして茎と葉は翡翠で出来上がったら硬化して壊れないようにした。ヨシ。綺麗。素敵。可愛い!!自画自賛だ。一緒に飾るのを手伝ってくれた辺境伯家の使用人のお姉さんが「とても綺麗ね。」と褒めて下さった。へへへ。嬉しい。
お爺様、お父様、お婆様、お母様はお客様のお出迎えだ。ティオとネオはフィーナと一緒にまだ奥の部屋にいるみたいだ。あんまり早く出てくると飽きちゃうからね。
わたしも石の花を飾り終わったら、お母様の侍女のリーゼと控室で待っていることになった。お母様から「呼ばれるまでここでじっとしておくのですよ。」と言われていたので、待っているけど、なんか落ち着かない・・・。
ドレスは変じゃない?今日は初めてうちで買ったドレスだ、淡いブルーであまり装飾はなくあっさりしている、いや、シンプルと言える、お婆様やお母様のドレスも作るからわたしのは、簡単なのにしたのだ、今になってちょっと落ち着かない。
リーゼに聞いてみると、「お嬢様お綺麗ですよ。」と答えてくれるけどー。髪飾りなんていつもつけないからなんか変な感じ。髪飾りはドレスのハギレで大きなリボンをつけているのだ、やっぱりちょっと落ち着かない。
馬車の音がする。またどなたか来られたようだ。まだかなぁ。パーティってこんなにどきどきするんだ。
ずっとそわそわしていたら、辺境伯家の執事さんが呼びに来られた。
「ジェマ様、皆さまお揃いになりました。」
おお。時間なんだ。おおお。緊張する。7歳のジェマも初めての体験だ。一緒に緊張する。
会場に行くと、大きなテーブルに皆さん着席している。わたしは前で立っているお父様の横に行く。お父様も緊張しているみたいだ。少し手が震えている。ふぅ。おんなじだね。
「本日はお忙しい中お集り下さりありがとうございます。この度、男爵家から子爵家に陞爵されました。また、娘のジェミナールが準男爵を拝命いたしましたことをご報告いたします。」
そこで促されて一歩前に出さされた。お。わたしか。次は。
会場を見回すとヴェルナー様やアシュクロフト様のお顔が見える。リーテおばちゃまもこっちを見ている。今日のご招待は10家族でひと家族2名から4名、アシュクロフト様みたいにお1人の方もいらっしゃるけど、30名はいる?ええい。頑張ろう。
「グラニット子爵家、長女のジェミナール・グラニットでございます。どうぞよろしくお願いいたします。」
ここで、淑女の礼だ。カーテシーだ。ふぅ。やりきったよ!
「今日はわたしたちの村の特産品をたくさんお持ちしました。村の恵みをお楽しみください。」
おお。お父様もやり切ったね。ほっとしながら、自分の席に座る。給仕が始まり食事が進む。なかなか好印象だ。うちの村の特産品美味しいものね。
「村の野菜はいつも美味しいね。」
「村の特産品のワインも前より美味しくなったか。」
ヴェルナー様や辺境伯様が場を盛り上げてくださる。
それに続き、ほう、とか、おおとか、これはこれはとか料理を褒めてくれる感嘆の声も聞きつつ、男爵家から子爵家になったことを祝福する言葉が続く。
お爺様やお父様がそれに無難に返答する。わたしの『石好き』のスキルはバレているようだから、それのお陰で王妃様に気に入られたという感じで後ろ盾の存在をアピールしていた。
まぁ、リーテおばちゃまのお知り合いは皆さん気の良い方々みたいだし、ヴェルナー様や辺境伯様は心強い味方だ。
最後の石焼き芋と干し柿が提供され、最初の見た目は芋に柿だ、スィーツではないことに落胆しているのがわかる。それでも、辺境伯様が率先して口に運ばれ、美味しいそうに眼を細めたのを見て、他の人も続いたところ、目が輝いた。
「な、これは!」
「なんて美味しいのだ。ただの芋なのに。おかしいぐらい美味しい。」
「甘い。これはスイーツに引けを取りませんわ。」
「美味しいです。甘いです。こっちのオレンジ色のドライフルーツでしょうか。これも大変美味でごさいます。」
「いや、やられましたな。グラニット卿。素晴らしい隠し玉をお持ちで。」
「フェルナン、おまえの村は豊なんだな。確かに恵みの味だな。」
「そうだろ、ローレンス、王都もいいかもしれぬが、わしは村が好きだよ。」
お爺様がウィンチェスター宰相様とお話している。いつも食べているはずなのに、ヴェルナー様もアシュクロフト様も楽しそうだ。あ、お2人とも干し柿は初めてかも、美味しそうに召し上がってる。
その中お年頃の女性が2名。独身のアシュクロフト様にロックオンしているような気もする。気のせいかな。アシュクロフト様は静かで儚げに見えるお方だ。追い詰めたくなるだろうが、きっと逃げる。見た目とはちょっと違うお人だと思う、見た目だけで好きになるのは注意だ。
お爺様と宰相様との会話に辺境伯様が参加している。ちょっと賑やかだ。賑やかといえば、リーテおばちゃまが、お婆様に「こんな美味しいお芋食べたことがないわよ。マルグリット水臭いわよ。もっと早く食べたかったわ。」とちょっと責めている。お婆様は、ひたすら苦笑している。
小さい子はティオとネオぐらいしかないので、2人は早い目に退出してしまった。わたしはお土産を皆さんにお渡しするのだ。
「ジェマ様、このお花は石?で出来ているんですか?」
アシュクロフト様を狙っているように見えた1人のお姉様が不思議そうにテーブルの上に飾った花を見ながら聞いてこられた。
「ええ。これは全部石で作っています。白い石はアラバスター、少しピンクの石はピンクカルサイト、半透明の黄色の石はハニーカルサイトを全部薔薇の花にして茎と葉は翡翠です。気づいてくださってありがとうございます!」
そういうと、本当に驚いた顔をされた。いや石で出来ているんですかと聞かれてそうですとお答えしただけなんだけど。
「まぁ凄い。これだけの彫刻の出来る職人を抱えておられるんですね。これは芸術品といってもおかしくありませんわ。」
ああ、石から切り出して削って作ったと思われていたのか。そうか。削ったわけではなくスキル加工で粘土のように想像通りに作れるんだけど。
「これはわたしがスキルで作ったものです。簡単なんです。少しおみせしますね。何色が一番お好きですか?」
「え?これはジェマ様がお作りになったのですか!?色?色ですか?この真っ白な薔薇が一番綺麗だと思いますわ。」
では。白のアラバスターと、緑の翡翠を少し手に持ち、5センチぐらいのミニミニの薔薇を作ってみた。
「どうぞ、ミニミニの薔薇ですが。」
そういって、作ったばっかりの薔薇をテーブルの向かい側に座っているお姉様に渡したところ、
「え、え、え、これ、今作られましたよね。凄いわ。凄い。ジェマ様のスキルは芸術ですの?」
「まぁジェマ嬢、この薔薇の花を全部お造りになられたのですか。まぁ素晴らしいわ。カノン様が小さな薔薇をいただいておられましたが、わたくしもこの石の薔薇をいただけませんか。ピンク色の薔薇が良いですわ。」
「ジェマちゃん!!リーテおばちゃまよ!!おばちゃまは黄金色の薔薇が良いわ。わざわざ作らなくても、ここの飾ってある薔薇でもよろしくてよ。」
一斉に石で作った薔薇が欲しいと声があがる。へー、結構人気でびっくりする。食事もほぼ終わっているので、大丈夫だろう。
「飾ってある石の薔薇は、この後収納するだけなので、欲しい方に差し上げます。ミニミニの薔薇が欲しい方はこちらに来ていただけますか?」
すると、お客様の女性軍がほぼこっちにきちゃった。皆さん、薔薇のミニミニが欲しい。飾ってある薔薇も欲しいと欲望直球である。ああ。リーテおばちゃんの伝手のお客様が多いので、類は友を呼ぶというのかもしれない。欲望駄々洩れだけど、なんていうのか微笑ましいぞ。作って渡すと最大限で喜ばれる。淑女の皮を被った大阪のおばちゃんの集団みたいだ。
小さな薔薇を15個ほど作り、テーブルの大きな薔薇もそれぞれお好きなものを1本ずつ持っていっていただいた。意外とヴェルナー様とアシュクロフト様も薔薇をほしがられた。「ジェマ嬢の作るものは何でも美しいし楽しいよ」と。まぁお二人とも鉱山部管理課。もともと石がお好きなもかもしれない。宰相様も奥様が欲しいからと並んでくださった。
この流れで、お土産の箱庭テラリウムを空いたテーブルに並べさせてもらう。今回は普通のテラリウムだけではなく、牧場バージョンを作ってきたのだ。
リーテおばちゃま関係者はひととおり普通のテラリウムを既にお持ちだろう。ヴェルナー様もアシュクロフト様も普通のバージョンはいくつもお持ちだ。
だからの牧場バージョン!!ふふふふ。
水晶の器に全面に淡い黄緑色の明るい感じの苔を敷き詰めて、ミニチュアの牛と羊とヤギと鶏を置いてみたのだ。鳥小屋とか牛舎とかは好きなところに後で置いていいと後付けなのだ。載せずに作るだけ作ってよけている、赤い石がなかったので、白い牛舎になっちゃったけどね。
牛は1センチぐらい、羊やヤギは5mm、鶏なんて、3mmぐらいの大きさにしたけど、これが箱庭に置かれると可愛いのだ。本当キュート。小さいから余計可愛い。ピンセットで動物を1個ずつ移動させて、自分で自分の牧場が作れるのは楽しいんじゃないだろうか。わたしだけ?
「こ、これはジェマ嬢、小さな牛や羊やヤギですか?鳥のようなものもいますが、いつもの箱庭テラリウムとは趣が違いますね。これはこれで非常に可愛らしいです。」
「ええ、これはいつもの普通の箱庭テラリウムを既にお持ちの方ように作ってきました。じゃーん。ミニチュアの自分の牧場シリーズです!」
「「「え??」」」
「淡い黄緑色の苔を敷き詰めた牧草地帯を見立てた箱庭テラリウムです。ここにお好きな石で作った牛や羊やヤギや鶏をお好きな場所に置くだけで、自分が牧場主になった気分が味わえるのです!!」
「まぁ素敵!この小さな動物はなんて可愛らしいのでしょう!!」
「ジェマ嬢、これはいいな。わたしは普通の箱庭テラリウムも愛でているが、これもいい。」
「今回、初めて箱庭テラリウムを見る方は、こっちの普及版も良いですよ。深い緑色の苔に、真っ黒な石の対比。見ているだけで安らげます。」
どっちも10個ずつ持ってきているから、10組のご家族にそれぞれ持って帰ってもらっても大丈夫だ。
ヴェルナー様からは、牧場には牧童犬がいるのではないかとご指摘があり、早速その場ですぐに黒曜石のお犬様を作ったところ、大変気に入っていただけました。
「ジェマ嬢の仕事の早いところは褒められるべきところですよ。あと3匹ぐらい作って下さい。」
前世40歳まで社畜で生きてきた経験ですわ。ヴェルナー様のご要望でお犬様を後3匹作る。最初が黒曜石だったので、次はアラバスターで真っ白で、次はブロンザイトで茶系のお犬様を。最後は黒曜石とアラバスターで白黒のぶちを作ってみた。小さな1センチにも満たない大きさだけどそれなりに可愛くできたよ。ヴェルナー様がにやにやされていたので、お犬様お好きなようだ。
このやり取りを見た人が、自分もお犬様が欲しいと手を上げられる方が多数。はいはい。全員に作りますよ。ちっちゃいから無くさないでくださいね。黒や白や茶色やぶちの犬をたくさん作った。牛がもっと欲しいとか、鶏が追加でいるとかご要望は尽きぬ!!お貴族様が我儘なのか、リーテおばちゃまのお友達だからこれなのか。わからぬ。でも、作るのは簡単だし、可愛いからいいか。
結局既に箱庭テラリウムをお持ちの方もどっちもセットでお持ち帰られることになった。
気に入ってくださるならそれはそれで嬉しい。
次は針だ。そのまま渡すのも芸がなかったので、村のクルミを割った殻に、王都で見つけた綺麗なハギレ。綿を丸めて少し油を染み込ませてそれを炭素繊維の薄い布にしたもので包んだものを、綺麗な王都のハギレで包み、丸くして裾をくしゅくしゅと縫って縮めてクルミの殻に押し込む。ほら可愛い針山の出来上がり!!ほんと、かーわーいーいー。
これは王都に着いてからお婆様とお母様と侍女のエレーヌ、リーゼ、フィーナにわたしと全員で必死で作った。石じゃないので、わたしのスキルが及ばないからねー。
「それにしてもジェマの針は良いね。布滑りがいいわ。とても使いやすいわ。」
お母様がクルミの針山をせっせと作りながらステンレスの針を褒めてくれる。いいでしょう。艶々なのよ。
「それに、この針山、なんて可愛らしいのでしょう。一番素敵に作れたものは、わたくしがいただきますわ。」
お婆様がお土産用を作っていたのに、自分のもの宣言したものだから、皆も欲しいということになり、その夜みんなで自分用も含めて追加で更に作ったのだった。
次の日、王都で可愛いハギレを追加で買いに行ったのは言う間でもない。これぐらいの手仕事なら村の女衆もできると思うから、村に帰ったら作ってもらえばいいよとお母様が言うので、お土産がてらに更にハギレを購入する。
本当に村の手仕事のひとつになるのはもう少し後のお話。
さて、箱庭テラリウムがそれぞれのおうちの方に引き取られた後、テーブルに今度はクルミの針山を並べてみた。針はそれぞれ10本刺さっている。可愛い。
「あれは、王妃殿下が最近お気に入りの方に下賜していると噂の針ではないかしら?!」
「マルグリットあれは、先日頂いた針よね。」
「そうですわ。リーテお義姉様。お義姉様は既にお持ちだから必要ないかしら。」
「マルグリット、何を言っているの。この針は大変良いものよ!艶々で滑りがよくてうちのお針子たちからの絶賛の声があがってきているの。追加でいただけるのであれば大歓迎よ。それに、この針山、なんて可愛いんでしょう。」
「この器になっているところは、村で採れたクルミの殻なのよ。素敵でしょう。」
お婆様とリーテおばちゃまとの会話で、今話題の王妃殿下の縫い針が今ここに!ということで、女性陣の目がぎらぎらしてきたところ、お美しい奥様とご一緒のヴェルナー様はまぁいいとして、独身のアシュクロフト様に縫い針はいるのか微妙だけどどうなんだろう?
「アシュクロフト様は針はご必要ですか?」
「ああ、ジェマ嬢、わたし自身は使わないと思うが、家にいる侍女たちに土産で渡す。王妃様の噂の針だ、みんな喜ぶだろう。」
そう言って儚げに微笑むと、お年頃のお姉様方がぽっと顔を赤くされていた。この方儚げに見えつつ、1か月間の王家直轄地3か所巡り結構図太くお過ごされていたんですが、まぁ言わずが花ですね・・・。
クルミの針山に刺した針も大盛況で皆さんに受け取っていただけた。
途中ヴェルナー様や宰相様が、箱庭テラリウムもステンレスの針もわたしジェマが作ったことにより準男爵になったようなことをおっしゃっていた。本当は鋼の製造方法や新たな金鉱脈の発見やガラスの特産品化がわたしの成果なんだろうけど、今日のお客様はステンレスの針だけでも、王妃様のお気に入りで十分だと思われたようだ。それぐらいで良いよ。
「最後に、こちらをお渡しします!!」
ずっと出番を待っていたラピスラズリのアクセサリーだ。これはリッシャと見つけてからヴェルナー様とアシュクロフト様を驚かせたくて秘密で作業していたものだ。
男性にはカフス、磨いたラピスラズリを真鍮で縁取り上品に仕上げてみた。女性にはブローチ。ブローチは小鳥や楕円、花の形にしたものをこれも真鍮で綺麗に縁取りしてみた。真鍮は錆びないように水晶で薄くコーティングしている。ちゃんと硬化もしているので長く愛用していただけるだろう。
「こ、これは、ジェマ嬢、ラピスラズリではないか!!」
「ラピスラズリだと!!」
「はい、村で見つけました。樽4個分ぐらいあったので、今回樽2個分は王宮に献上するために持ってきました!!」
そういうと、緊張されていたヴェルナー様とアシュクロフト様、宰相様がほっとされたお顔をされた。お爺様にご相談したら、半分は絶対献上すべし!!と言われたからちゃんと持ってきましたよ。その辺は大丈夫ですー。
ラピスラズリのカフスとブローチは今日のご招待客からは大好評だった。幸運の石として王都でもお貴族様の中でもかなり有名な石だったようだ。それは知らなかった。前世わたしの好きな石だから、みんなに自慢しよーっていうぐらいだった。村で採れたから原材料代タダだよ。こんなに喜んでいただけたけど、タダだよ!!
辺境伯様、宰相様、ヴェルナー様にアシュクロフト様、もちろんお爺様にお父様みんなに、今日はよくやったなと褒めていただき、頭を撫でていただいた。辺境伯様が最初に豪快に撫でてしまわれたから、わたしの髪はくしゃくしゃになったに違いない。
お婆様とお母様が苦笑されている。
そんな男衆の中をかき分けてリーテおばちゃまが近寄って来られた。
「ジェマちゃん、今日はご招待していただいて本当にありがとう。とても美味しかったし楽しかったし、お土産は全部素敵でした。これからも末永いお付き合いよろしくね。」
まっすぐな好意に照れくさくなってしまったけど、こちらこそ今後ともよろしくお願いします。リーテおばちゃまの伝手はわたしにとっても大事です。
今日のご招待のお客様が皆さま喜ばれてお帰りになられて、ほっとした。本当にほっとした。これで村に帰れる!!
お客様はグラニット子爵家が元田舎の男爵家だと侮ってはいけないということを胸に刻んで帰られたことは、ジェマは気づかぬままだった。お爺様もお父様もお母様も気づいていなかったけどね。お婆様だけ、リーテおばちゃまの目配せである程度察したとか、しなかったとか、ジェマは知らないままだった。
後に残られた宰相様、ヴェルナー様にアシュクロフト様にラピスラズリの原石を樽2個分お渡しすると、宰相様がお持ちの魔法袋に収納された。
「ジェマ嬢、ラピスラズリの鉱脈ってこの国では多いのか?」
「んー。近くまで行って探索のスキルを使わないとわかりませんが、うちの村にあったということは、他でもあると思いますよ。東の山から見つかったので、その裏側の方、リーテおばちゃまの子爵家の領地にあるかもしれません。」
「ああ。そうか、同じような鉱脈筋といえば、同時期に同じような場所にあってもおかしくないか。この国に他にもラピスラズリの鉱脈があれば、これも国の特産品になる。また、春になって落ち着いたら依頼するかもしれない。ただ、鋼の問題も片付いていないし、辺境伯領のガラス、ジェマ嬢がヒントを出された鏡が軌道に乗るのではれば、もう少し先の話になるかもしれぬが・・・。良いことなんだが少し胃が痛い。」
宰相様は少し胃が痛いのだろうか、渋面だ。悪いことしてないよー。わたし。
「ジェマ嬢はまだ7歳だ。無理はさせられぬ。ラピスラズリの鉱脈はまた今度。今回は樽2個分でも陛下はお喜びになるだろう。感謝する。」
そういうと全員のお客様がお帰りになられた。わたしも部屋に戻って爆睡したよ。
そんなこんなで無事に終わった披露パーティは王都でじわじわ噂になっていたそうだ。
田舎の辺境の男爵家がいつの間にか子爵家になったとか、王妃様のお気に入りだとか、宰相様が目をかけているとか、ヴェルナー様にアシュクロフト様の秘蔵っ子がいるとか、辺境伯様が後ろ盾とか、王都から消えたかの有名な錬金術師ローデリック・ラングレーが一枚嚙んでいるとか、王都でも人気の箱庭テラリウムや王妃殿下の縫い針、尋常じゃなく光るキラキラのカットされた水晶のビーズとか、水晶で閉じ込められた小花の栞など、出所はその小さな田舎の村だというのは信じられないとか、イケオジのグラニット卿は相変わらず素敵だったし、その妻のマルグリット様は今でも妖精のように美しかったとか、いろんな噂が飛び交ったらしいけど、社交シーズン早々にお披露目パーティーだけして速攻に村に帰ったわたしたちはまったく知らなかった。
ただ、マティアスの白銀商会への注文が殺到し、うちの村も忙しくなったそんなところだ。




