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村は冬支度の真っ最中だけど、収穫祭のボーリング大会のリベンジだと仕事終わりにボーリングにいそしむ人もまだいる。
1位を取ったブルーノ辺りが、さりげなく路上でリバーシをはじめ、それに多くの観客がついて、1位の特権をもっても妬まれるとかも聞く。
お父様にリバーシを売って欲しいと頼む人も増えてきた。リバーシは暇な時に作っているからいいよ。お父様に今まで作ったものを渡しておく。
村のあちこちで仕事終わりにリバーシを楽しむものが増えてきたと聞く。石焼き芋器やリバーシも村人が買えるように少しお安くしている。
リバーシなんて、材料がその辺の山の石だけだものね。実質タダ。加工はスキルであっという間、村人のためにもお安くいたします~。
そうこうしているうちに、マティアスが村にやってきた。必死な形相だ。
「針、針を売って下さい!!!」
「マティアス様、お久しぶりです。かなりお焦りのようだがどうされたのか?」
貴族の家を訪問するのに前触れもなくやってこられたけど、まぁ田舎の男爵家・・・あ、子爵家になったのか、たいしたことがないから普通に受け入れる。
「グラニット子爵様、針を売って下さい。王都でじわじわ人気が出てきているのです。王妃様がお茶会でお気に入りの貴族だけに下賜されていて、艶々でぴかぴかで物凄く使いやすいものだとか。探りを入れて、慎重に噂を精査して、ようやくこの村の特産だとわかったのです!!聞いてないですよ!!!」
それを聞いて、お爺様、お父様、わたしと顔を見合わせて気づく。新しいものを作ったら教えて下さいね!とマティアスにお願いされていたんだっけ!ごめん。
「それに、男爵家から子爵家に昇爵されましたよね。ご披露パーティはどうされましたか?」
「「「え?」」」
ご披露パーティってするの?ってお爺様もお父様もわたしも思った。
「うちは、王都にタウンハウスも持っていないし、お付き合いのある貴族の方々もほとんどいないし・・・。」
「それでも普通はするのです!!冬の社交はどうされているのですか?」
「ここ何年も社交界へは行っておらぬな・・・。」
「こんな小さな田舎の男爵家が社交してもね・・・。」
「だ・か・ら。男爵家ではなく、既に子爵家です!!差し出がましいとは思いますが、この社交シーズン、一度は王都でパーティにご出席されるか、ご披露パーティを主催された方が良いかと思います。ジェマ様のためにも。」
「な、なに?ジェマのためにか!」
「新しく子爵家になった家に、優秀な娘がいるということを認知してもらえるのですよ。男爵家から陞爵です。王家より認められたことをご披露しておくと、より良いと思います。」
「そ、そうか、ジェマのためならば・・・、だが、ここ数年ずっと社交はしとらんかった。知り合いは少ない。舞踏会は無理じゃ。」
「子爵家の年金をいただいたとはいえ、王都のホールをお借りして披露パーティを開催するのは厳しいです。」
「だったら、ランチはいかがですか?お昼のランチぐらいであればそれほど費用もかかりません。親しい人を呼んで立食にすれば更に簡単です。そこでお越しになったお客様に箱庭テラリウムに今話題の針をお土産にお渡しになられたら、何故男爵家から子爵家に陞爵されたのか、一発で分かっていただけますよ!!」
「まぁそれぐらいならば・・・。」
「冬の社交界まで時間はあまりありません。まずは奥方様方やジェマ様のドレスを新調が先になりますね。仕上げまでお時間がかかりますから。」
「お、おう。そうかドレスを作らないといけないのか。グリーは喜ぶな。」
「ああ。そういうことか、高い年金をいただけたと思ったが、支払うことも増えるということか。」
「お父様、わたしのドレスは王都で王様の前で着たのをいただいたのでよくないですか?」
「それでも良いが、やはり新調した方がいいだろうな。」
「じゃ、わたしの年金で作ります!」
「いや、ジェマの年金はジェマが大事に使いなさい。」
「ジェマ様の年金?」
「ああ、ジェマが準男爵を拝命したのだよ。」
「ああああ。じゃ余計ご披露パーティは必要じゃないですか!!」
「ああ。石焼き芋や、干し柿が甘くて美味しくてすっかりそんなこと忘れていたね。」
「とにかく、お昼のランチで、パーティが出来る場所は押さえておきます。寒くなるからやはり外はやめておきましょう。お客様はどのぐらいになりそうでしょうか?」
「グリーの実家と、そこと馴染のある男爵家、子爵家がいくつか、ヴェルナー様とアシュクロフト様、ローレンス、ああ宰相のローレンスだ。後は寄り親の辺境伯様ぐらいか。」
「多くても10家ぐらいでしょうか。それぐらいならばどこでも大丈夫でしょう。」
「料理は、石焼き芋と干し柿も食べていただきたい。これらはびっくりするぐらい美味しいのだ。」
「なんですか?石焼き芋と干し柿とは??」
マティアスさんが首をかしげると、オットーがさっと差し出す。黒い紙に包まれた石焼き芋と干し柿だ。ふふふ。この二つは絶えずうちで常備されているのだ。
「な、あちち、あ、でも、美味しい。甘い。なんだこれは?芋?本当に??あ、こっちは何かの果物を干しているのか?こっちも甘い。これらは何ですか!」
「だから、石焼き芋と干し柿だ。これもジェマが見つけたのだ。この冬の甘味だな。」
「これはいけます。王都でも通用しますよ。王都のお菓子に迫るぐらいの甘さです!!」
「じゃ、あと、うちの村の特産品のチーズと燻製肉か。エドモンのとこのワインとアルノーの蒸留酒を出すか。マルクの野菜も美味しいからサラダやスープもいいかもな。」
なんだかご披露パーティというより、特産品で物産展っぽい感じもしてきたけど、これがうちらしいのかもしれない。マティアスさんは芋に夢中だ。
マティアスさんは、針以外にも箱庭テラリウムやサンキャッチャー、栞も香炉も仕入れていく。既に全部売り切れたんですよ!と会心の笑顔だ。
お父様に商業ギルドに代金は振り込んでいるので、またご確認お願いしますと言っておられた。お父様がそうか!と驚いていた。
マティアスさんルートの代金をすっかり忘れていたようだ。基本自給自足の村だから、こういうところうっかりしちゃうんだよね。お父様気をつけて!後日お父様がご確認されたら、今回のご披露パーティ分ぐらいの残高があったそうでほっとされていた。
お婆様とお母様とわたしのドレスは隣町のドレスメーカーに頼むことにした。王都まで遠いしお高いし。
お婆様のお義姉様のリーテおばちゃまのご紹介だ。お婆様は久しぶりの新調にちょっとテンション高めだ。淑女の鏡と絶賛されているお婆様なのに、絶えず笑みが溢れている。
お母様は逆にちょっと緊張気味。ドレスを着て出ていくことが少なかったからね。結婚してからは害獣駆除は騎士服だし、家では簡易ドレスだし、正式なドレスは結婚式以来じゃないかとか。どれだけうち社交していなかったんだろう。
そしてわたしは王都で謁見のため黄色いドレスをいただいたが、家で作るのは初ドレスだ。もちろん、お爺様もお父様もティオもネオも服を新調するけれど、男性はドレスより短期間でお値段もドレスほどかからない。でも、1着金貨3枚は最低かかるらしい。ドレスは金貨4枚だ。日本円にして400万!!!えーっとなるけど、すべて手縫いなのだ。そう考えると仕方がない。
女性3人分で約1,200万円、男性と子ども用は少し安くなるけど合計で800万ぐらい?合計で服装だけで2,000万円なのだ。子爵家の年金が金100枚。一億円でびっくりしたけど、あっさり無くなる金額だった。
ご披露パーティ代が、マティアスさんに売った分で賄えるのは本当に良かった。
お土産の箱庭テラリウムと針はほぼお金を使わない。水晶は領地にあるし、ステンレスも鉄とクロムでそれほどお高くないのだ。
あ、でも、ヴェルナー様とアシュクロフト様は毎回村にきて、特産品も作ったものも根こそぎ持って帰られるから、新鮮さがないかも。何か新しいものをご提供したい。
リッシャに頼んで村の山を歩きたい。新しい石を探したい。あと、石焼き芋用に調整した魔石をもう少し温度を低くしてカイロにならないかなと思っている。
冬山に登るのに温かいものが欲しいのだ。
マティアスさんは、石焼き芋器な赤芋も黒の紙も黒の手袋も大量にしいれてほくほくと帰って行かれた。
うちの村のお芋が売れると嬉しいな。お父様が大事に育てたお芋だものね。




