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ヴェルナー様とアシュクロフト様が王都に戻られ、石灰岩とリン鉱石は王宮の実験農場でいろいろ試されるようだ。
うちの村でも粉を撒いたり漉き込む人が増えた。赤芋を増やしたいからかもしれない。
お父様と相談して、石灰岩とリン鉱石はそれぞれ粉にして村の集会場に山積みすることにした。誰でも持っていって良いのだ。
「粉はそれほど多くなくてもいい。上手く漉き込んで。人手が足りなければわたしが手伝おう。石灰石もリン鉱石も効果は2年から3年は大丈夫だそうだ。今年頑張って準備すればしばらく豊作になるだろう。」
お父様が村人に使い方やらを説明して回ったそうだ。
山一つ分、探せばもっとあるかもしれない石灰岩にリン鉱石だ、わたしが切り取ってインベントリに収納して、加工で粉にすればいいだけなので、粉はわたしの人件費のみ。粉を入れる袋の方が高いから、そのまま山積みなのだ。これで収穫が倍になるのであれば試してみようと思うものも増えるのは仕方がないし、お父様は積極的に進めている。
収穫が倍になったら、村が豊かになるもんね。
春植え用の畑にも漉き込んで準備するのもいいそうだと聞いて、麻袋に入れて持って行く人が増えた。良きかな。
お爺様とご一緒に王家直轄地の鉄鉱山にも行くことになった。お爺さまとのお出かけは嬉しいな。
うちの北の廃坑(今は銅が採れる)の真後ろの山だから、隣の村に行くより近い。ただ王家直轄地なので、今までは近くても入れない場所だったけど、今回王妃様から許可書をいただけたので、クロムを買いに行けることになった。
真夏に来た埃っぽい鉱山村は前よりも活気に沸いていた。筋肉むきむきの管理人さんもにこやかに迎えてくれた。
「グラニット卿、お久しぶりです。前回はありがとうございました。お陰で鉱山村も新しい鋼やステンレス素材に気合が入っております。
今回、クロムをお売りする話は通っています。なんせ、クロムを見つけたのはこのちっこい嬢ちゃんだ。見つけた本人が使えないのはおかしいからな、王妃様からも欲しいだけ持っていって良いと聞いている。」
「王妃様の針を作ったので、手持ちのステンレスの残りが少なくなったので、クロムを10キロぐらい下さい。」
「そんなに少しでいいのかい?」
「ええ、クロムが10キロあれば、ステンレスは60キロできるから、ゴンゾさんと半分ずつに分けるんです。」
「ゴンゾにやるのか?」
「ええ、お爺様、前にゴンゾさんの奥さんのグンダおばちゃんに村の女衆に針を渡して欲しいとお願いした時に、ゴンゾさんに新しい金属が気になる、欲しいって頼まれていたのです。」
「そうか、ゴンゾなら、錆びにくい金属で何か作ってくれるかもな。」
「ええ、楽しみです。」
「おう、じゃ、これがクロムの岩石だ。行けるか嬢ちゃん、10キロはあると思うぞ。」
「はい、石ならばわたしのインベントリに入るから大丈夫です。」
「なぁ嬢ちゃん、もし時間があれば、鋼とステンレスのインゴットは数本作ってくれねえか。鋼はレシピは貰っているが、なかなか思うようなものが出来なくて、鋼を使った剣とかもまだ試行錯誤なんだ。」
「ええ、大丈夫です。ね。お爺様。」
「ああ、今日は日帰りの予定だが、まだ数時間は大丈夫だ。それにジェマのスキルは凄い。あっという間にインゴットにするだろう。」
用意された炭とか、鉄にクロムを見て、あっという間に鋼とステンレスのインゴットを3個づつ作る。わたしのスキルは歩留まりがないからいいねー。
「おお、本当にアッと言う間だったな。感謝する。」
加工賃をクロムの代金から引いてもらったので、めちゃくちゃお安くクロムが買えた。お父様もきっとお喜びになるだろう。
管理人さんに「安定した供給ができるようになるまで頑張って下さいね!」手を振って家に帰ることにした。
馬車の中で、ゴンゾさんが何を作りだすのかお爺様と考えてみたけど、わたしは包丁やフォークやスプーンぐらいしか思いつかなかった。
お爺様は水に強いのであれば、釣り針が作れるのではないかと言う。海のない領地だけど、川や池はある。お爺様は釣りが好きだそうだ。ゴンゾさんに釣り針作ってもらってください。
村に戻ってきて、お父様に報告し、お父様が隣村で買ってきた鉄と言う名の折れた剣や穴の開いた鍋を材料にステンレスを作る。お父様は買い物上手だ。ほぼタダで手に入れてきたゴミであったとしても、鉄は鉄だ。わたしのスキルにかかればあっという間に加工できる。
「やはり、ジェマのスキルなら出来ると思ったんだ。」
お父様はほくほくである。何故かお爺様までわしのジェマ凄いと自慢げである。
できたステンレス30キロインゴットは一度わたしのインベントリに仕舞って、ゴンゾさんに渡しに行くことにした。何故かお爺様もご一緒だ。
「おい、ゴンゾ、いるか。」
「へい。旦那様。どうなされました?」
奥の部屋からいきなり予約もなく訪れたお爺様にゴンゾさん引け腰である。
「いや、ジェマがお前にステンレスのインゴットを持ってきたぞ。」
「え!あの新しい金属ですか。それはそれはありがとうございます!!」
「はい、ゴンゾさん、重いから気をつけて。」
「鍛冶屋は力持ちだぜ。ほう。これがステンレス、前に少し見せてもらったが、一本インゴットは迫力があるな、新しい金属か。鉄より艶があるな。」
「水にも強い金属らしい。今は石焼き芋器の製造で忙しいと思うが、時間があいたら、それで釣り針を作れ。一緒に北の川に釣りへ行こう。」
「はい。旦那様、冬の間はきっと石焼き芋器で手がいっぱいだと思いますが、春になったら是非ご一緒させてください。それまでにきっと立派な釣り針を作り上げておきます!」
「よし、頼んだぞ。」
「はっ。」
「ゴンゾさん、石焼き芋器で忙しくしちゃってごめんなさいね。」
「いや、ジェマお嬢様、仕事があって忙しいのは良いことだ。ぜんぜん大丈夫さ。」
「旦那様、冬の間試行錯誤しますので、春には釣りにいきましょう。」
「ゴンゾ、任せたぞ。」
言いたいことは言ったとばかり、お爺様は目を細めての満面の笑顔である。まぁいいか。とても満足そうだ。
2人で手を繋いで家に帰る。道行ですれ違う村人に収穫祭や針や芋のお礼を言われつつ、お爺様と一緒に歩く、秋本番の石畳の道。遠くで鳴く虫の声が聴こえる。2人の後ろをぴったりハンスが着いてきている。
秋かぁ、秋だよねー。干し柿とかないのかなぁ。好きだったんだけどな。家に帰ったらお母様に聞いてみよう。干し柿が食べたいー。
「ん?ジェマ何か悩み事か?眉毛が曲がってるぞ。」
「お爺様、干し柿が食べたいなっと思って。柿って、ありますか?」
「干し柿とは何だ?干した柿?柿とはなんだ?」
ああ、こっちの世界柿がないのか?ええー。残念。
「柿ってオレンジ色で、握りこぶしぐらいの大きさで、種が真ん中に入っていて、干し柿にする柿はシブくてそのままじゃ食べられないの。」
「んんん。あれか。鹿も熊も食べない、もちろん人も食わんシブイ実があるな。薪を取りに行く近くの雑木林の入った左側だ。」
「オレンジ色の実がなっている?」
「ああ、見た目は旨そうだがな。村の子どもはみんな一度は食べて二度とは食わん。口の中がきゅうっとなるからな。」
そう言って、お爺様は口をすぼめる仕草を取る。
「お爺様、わたし柿が欲しいの。絶対そのままじゃ食べないから大丈夫。干したら甘くなるのー。美味しくなるんだよ。」
「ジェマ、本当か?でも石じゃないのに、わかるのか?」
「うん、石じゃなくても、干し柿は美味しいって知っているの!わたしのくいしんぼの勘がそう言ってるの!」
まぁめちゃくちゃな言い分であるがお爺様は笑っている。
「そうか、まぁいいか。ジェマが好きにしなさい。ハンス明日にでも籠に柿を取ってきてくれないか?」
「はい、旦那様、あれは美味しそうに本当に見えますから、食べられるようになったら、皆、喜びましょう。」
「ハンス、へたはつけたままでお願いします!」
「はいはい。へたがいるんですね。わかりました。明日たくさん採ってきましょう。」
「わーい!ありがとう。ハンス!お爺様もありがとう。」
わたしも大満足で家に帰る。明日が楽しみだ。




