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王都に向かう馬車の中では
オズワルトは魔法袋に収納した箱庭テラリウムやサンキャッチャー用の水晶の煌めくビーズ、王妃殿下用の針千本、石焼き芋器に大量の赤芋、リバーシのセット10組に思いを馳せる。
おかしいな、今回の仕事は石灰岩にリン鉱石、黒い紙に黒い手袋の現物確認だったはずでは?
「まったく、鉱石の調査に来たはずなのにな。」
エドリックはお土産にいただいた燻製肉を切り分けながら
「いつものことでしょ。ヴェルナー部長はこの村に来るとタガが外れるんでしょうか。」
馬車が揺れると、エドリックの切り分けた燻製肉の香りが漂ってくる。やはり美味しそうだ。オズワルトは燻製肉に手を伸ばすと、
「石灰岩とリン鉱石は土壌を整え肥料となると鑑定結果が出た。本物だった。」
「ええ、本物なら、我が国の農業が凄いことになるでしょう。収穫が2倍ですよ。」
「飢えるものが減るな。いいことだ。」
うむ、やはり村の燻製肉は旨いなとオズワルトは呟く。
「黒い紙と黒い手袋はどうするかだな。水と油に強く、丈夫で、熱耐性がある素材だ。鍛冶職人や厨房で働くものは欲しがるだろう。まぁわたしが買った石焼き芋器の芋を食べる時には絶対に必要になるが。」
オズワルトが冗談のように笑う。
「ラングレーをどうしましょうか。」
「王都に呼び戻したいが、無理だろう。人付き合いが苦手であの村まで逃げたのだ。無理強いすれば、また違うところへ逃げるだろう。」
「そうですよね・・・。とりあえず黒い紙と黒い手袋は納品するように念を押してきたので大丈夫でしょう。彼は逃げるけど、約束を破るような人ではありませんから。」
「しばらくは様子見だな。」
「ええ、でも、彼が幸せに、村で先生と呼ばれ楽しそうに生活をしているのを見ることができて良かったです。喉にひっかかった魚の骨が取れたそんな気がします。」
「そうか、永遠のライバルだもんな。」
「え、違います!そんなものではないです!彼とは学園のただの同窓です!」
急にあたふたするエドリックを見ながらオズワルトは大人の余裕で笑い出す。笑われて余計あたふたしてしまうエドリックだったが、オズワルトにからかわれているのだと気づいたら冷静になれた。
「それにしてもジェマ嬢は相変わらずだったな。」
「ええ、変わったものを作りだしたり、新しいものを発見したり、今度は石を畑に撒くだなんて、どんな発想だ。そして炭を紙に変えようだなんて誰が思いつく!全部ラングレーがやらかしたという方が真実味があるぞ。」
「確かに、『石好き』というスキルを持っているだけじゃない発想力がありますよね。彼女のお陰でわたしたちの仕事は何倍も増えているけど・・・。」
「彼女のお陰でこの国が何倍も利益をあげるだろう。助かる人も増える。宰相は胃を悪くするかもしれないがな!ははは。」
「確かに、ウィンチェスター宰相は胃痛持ちでしたね。とんでもなく災難でしょうか。嫌、国にとってはかなりの利益です。でも、後が大変そうですね。気の毒です。」
「ああ、実に気の毒だ。」
「でも、わたしたちは結果を報告するだけですからね。」
「そうだ。結果の報告だけはちゃんとしてやろう。」
完全に他人事なので、お互い顔を合わせて笑う。
王都に向かう馬車は、いつまでも2人の笑い声が響いていた。




