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収穫祭が終ってから、村は冬支度に入る。干し肉や燻製肉を作る人、ドライフルーツや日持ちのする保存食を作るもの。薪の備蓄が始まり、秋の味覚のきのこを山に取りに行く人もいる。お母様は害獣駆除と干し肉や燻製肉作りに参加し、お父様は冬野菜の植え付けをしている。わたしとティオとネオはリバーシで遊んだり、石焼き芋用の雨花石をリッシャと一緒に採取しにいったりしていた。
お爺様は石灰岩とリン鉱石と黒い紙と黒い手袋を本当に宰相さんに丸投げしていた。王都からヴェルナー様とアシュクロフト様が石灰岩とリン鉱石のサンプルを取りに来られた。王都の実験農場で実験するらしい。岩石のままのもの、粉にしたものと渡していく。
「本当にこれが肥料になるんでしょうか?」
アシュクロフト様は半信半疑といったところだ。石だものね。石。ヴェルナー様は苦笑しながら、
「昔、どこかの本で、海にある貝殻を焼いて肥料にしたという記述を読んだことがある。この白い石と似た感じかもしれないな。」
「そんなものですか・・・。」
「まぁ、なんにせよ、グラニット子爵が嘘をつく人ではないのは確かだ。王都の実験農場で試せばいいだけの話だ。本当なら農地改革担当のものが来ればいいものを、石だからとわたしたちが借りだされたが、このグラニット村に馴染んでいるというのもあるかもしれぬが。」
「ヴェルナー様とアシュクロフト様、お芋が焼けました!おやつにどうぞ!!」
黒い紙に包んだ石焼き芋を、風が冷たくなる中、石を魔法袋に仕舞っていた2人の元に持っていってみた。わたしがインベントリに仕舞っている石を出しても良かったんだけど、山から直接切り取って採取したものを持って帰りたいという希望だったから、外作業になってしまった。
「さっきから良い香りがすると思っていたが、芋か。」
「ええ、これは石焼き芋といって、芋が甘くなる調理方法なのです!!村のみんなも大好きになりました!熱いので気を付けてください。」
王都のお貴族様のお2人だけど、外作業で体が少し冷えたのもあって、貰った芋をはふはふと食べだした。
「な、なんだ。これは、王都の菓子より甘いぞ!!」
「ヴェルナー部長、これは、芋ですか!?なんですか。これ。」
「これは村で収穫した赤芋です。この石灰岩とリン鉱石のお陰で大量豊作だったので、石焼き芋にしてみました!!」
「ちょっとこの石焼き芋器を見せてくれ。どれ。小さな石がたくさん入っているな。」
ヴェルナーさんが石焼き芋器を覗き込む。熱いので気をつけて!
「この石は特別な石なのか?芋が特別なのか?」
「これは雨花石といいます。特別というのか、熱くしても割れにくいのです。普通石は熱くするとぱきんと割れたりするのが多いのです。芋はこの村でよく栽培されている普通の赤芋です。石焼き芋器で焼くと甘くてねっとり濃厚になるのです。」
「そうか、この芋と石焼き芋器は売っているのか?」
「ええ、この村で買うことができますよ。買われますか?」
「ああ、帰る前によろしく頼む。」
わたしの後ろでうろうろしていたお父様が領主の顔になって、注文を受けていた。鉱山ではいつもはお爺様がご一緒することが多いけど、今日はお父様だ。
王都のお客様をいつもお相手しないのはさすがにダメだろうと、東の山まで一緒に来ている。リッシャとマルタが一緒に着いてきて、さっきから石焼き芋を焼いていたのだ。
小さな田舎の村でできる接待ってこの程度だけどね。
「やっぱり、この村は直接足を運ばないとダメだな。目を離した隙に新しいものが出来ているな。」
「この石焼き芋器は王都で売れるでしょうか?」
「この赤芋が王都で売っていれば、きっと売れるだろう。」
赤芋って、どうなんだろう?この村で食べているだけなんだろうか。ヴェルナーさんは王都の友達に頼まれているんだと、箱庭テラリウムもいくつか持ってかえるそうだ。サンキャッチャーに使ったスワロフスキー風にカットした水晶や蛍石も持って帰りたいとか。
いや、仕事で来ているんだよね。今回は。
「ははは、これぐらいの役得はないとな。」
ヴェルナーさんが綺麗な笑顔を見せた。横でアシュクロフト様が苦笑されている。
「あ、忘れるところだった。あのリバーシも10組ほど欲しい。わたしとエドリックがプレイしていたら、自分もプレイしたいというやつが増えてきて、交代でプレイしていたら、わたしのプレイする時間が減ってしまった。ジェマ嬢作れるだろうか。」
「リバーシですね、大丈夫ですよ。黒い石と白い石があれば作れますから。」
「本当に最初『石好き』というスキルと聞いて、可哀そうに不遇じゃないかと思った自分にそんなことないと言ってやりたいよ。『石好き』スキルは本当凄いな。」
へへへ、ヴェルナー様に褒めてもらっちゃった!
「あ、ヴェルナー様、マティアスと売買契約を結んでいますが、よろしいのでしょうか?」
お父様がおずおずとヴェルナー様にお尋ねになる。
「ああ、ジェマ嬢はジェマ嬢で売ってもいいという契約になっているはずだ。直接買いにきたものには直接売っても問題ないよ。まぁ直接買いに来るのはわたしたちぐらいだろうけど。」
そういって、イケオジは軽くウィンクをする。おお。カッコいい。
「あと、王宮からステンレスの針を1,000本追加で欲しいと要望があった。これはちゃんとお代を払うようだ。」
「ヴェルナー様、その件なのですが、先日隣町に行ったのですが、鉄は買えましたが、クロムが売っていなくて、ステンレスを作ることができません。ステンレスがないと針が作れないのですが、如何いたしましょうか。」
「あ、大丈夫。この件については、王家の方から、王家直轄地の鉄鉱山で見つけたクロムをジェマ嬢だけが買えることになったと許可書をいただいてきている。」
「なっ!それは凄い。」
「ジェマ嬢が、王妃様からの褒賞に、ステンレスしか要らないと言ったことから、王妃様が、ジェマ嬢が欲しい時に欲しいだけステンレスを得られるようにしなさいとお達しがあったのだ。まぁ本音は、王宮で献上した針100本の人気が凄いことになっているのだ。王宮のお針子、侍女、女官、メイドも皆で取りあいになっている。これは使えると王妃殿下が思っても仕方ないだろう。大人の事情ってやつだね。」
ははは。とヴェルナー様は再度大きな声で笑われた。横で相変わらずアシュクロフト様が苦笑されている。
「石灰岩とリン鉱石は無事に採取できたが、黒い紙と黒い手袋はまたジェマ嬢しか作れないのか?」
「これに関しては、村の錬金術師のラングレー先生が作れるようになっています。」
「え?錬金術師のラングレー?もしかしてローデリック・ラングレーか?!」
あら、珍しくアシュクロフト様が大きな声を出されている。
「おっ?王都で優秀な成績で卒業した子爵家四男のローデリック・ラングレーか?!こんなところまで流れてきたのか!?」
「アシュクロフト様、お知り合いですか?」
「学園で同窓だったのだ。成績を競い合って、彼には一度も勝てなかったのに、卒業と同時に消えるように姿を消したので、どうしたのだと心配していたのだ。ああ、こんな穏やかで静かな村に逃げ込んでいたのだな。驚いたよ。」
アシュクロフト様は、いつもは物静かでヴェルナー様の横でひっそりこっそり儚げに寄り添っているイメージなのに、今日は何か違うぞ。
「黒い紙と黒い手袋は彼が作れるなら、彼に依頼しよう。炭から水や油に強くて、丈夫で熱耐性のある紙や布を作ることができるなんて、画期的だ。彼の名を聞けば、誰もが納得するよ。ジェマ嬢に何もかも集中すると危ないから、彼の名を前に出そう。」
ふふふふふと笑うアシュクロフト様は完全に黒い笑顔だ。ラングレー先生逃げてー。
・・・逃げられなかったラングレー先生は、アシュクロフト様に捕まってしまった。男の友情とやらと温めあったりしたのだろうか。ラングレー先生はちょっと疲れているようで、それでもちょっとだけほっとしているようにも見えた。先生頑張って!




