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そうこうしているうちに、収穫祭の当日!めちゃくちゃ良い天気。日頃の行いがいいせいだとご満悦で迎えた朝。朝食もそこそこに広場に出ていく。
石焼き芋はマルゴといつも領主館の洗濯や掃除を手伝いに来てくれている、アンナおばちゃんとヘルミおばちゃんに頼んだ。
わたしはボーリング大会の準備をリッシャと進める。東西南北中央の地区大会を勝ち抜いてきた強豪?の10名が今回決勝進出である。
全員が2回投げて倒れたピンの数で争うことになる。誰が勝つのかと、ひっそりこっそり賭け事もしているみたいだけど、見逃しておく。楽しそうだものね。
「第1回、グラニット村におけるボーリング大会を始めます!!」
収穫祭は昼からだから、その前にボーリング大会は終わらせる予定。お祭りはお祭りでみんな楽しみたいものね。いわば収穫祭の前哨戦かもね。
順番にボールを投げる。磨きこまれたレーンをボールが走る。気持ちの良い音がしてピンが倒れる。ちゃんと割れないように硬化させているから、どんなスピードで当たっても大丈夫。1人投げては応援の声がして、やんや、やんやとやじも飛ぶ。お手伝いの子どもたちがボールをぶつかって飛んだピンを集め、倒れたピンの数も数える。倒れたピンをレーンから排除して二度目の投球。その瞬間はしんとしたけど、投げ終わったら歓声がする。
それが8人分、大いに盛り上がった。西はやや若手が参加、東は若いのと中年のおじさん、北は年配のシブイおじさんが、南は若さが漲っている今回一番若いメンバーだ。中央は職人のおじさんたちだった。技だパワーだテクニックだ、がむしゃらに押せ押せと一喜一憂で大いに盛り上がり、全員の投球が終って得点が発表される。
「じゃーん。今回の優勝は北地区の牧場経営のブルーノさんです!得点は10点。全部倒れました!!」
盛大な拍手と祝福の声が聴こえ、少し照れながらブルーノさんがわたしの横に立つ。
「2位は南地区代表、若手農家のヘルムさん得点は9点、3位は中央地区のパン職人のゲオルクさん得点は8点です!!おめでとうございました!いい接戦でした。」
集まった村人からは「やっぱりブルーノの腕は凄かったな。さすがブルーノだ。」「若いのにヘルムもなかなかやりよる。」「おいパン屋が入賞したぞ。やはりパン作りで鍛えていたのか?!」と声が聴こえる。優勝は一番人気だったので、番狂わせはなかったようで、配当も順当でそれなりにという感じだったようだ。
「では、1位のブルーノさんに、メダルと賞品のワインと副賞のリバーシを渡します!!」
ブルーノさんは、何か貰えるとは思っていなかったのか、少しびっくりされているけど、ワインが貰えると言うのでぱあっと笑顔になった。
メダルをかけ、ワインを渡し、リバーシを贈呈する。リバーシが一体何なのかわからなくて戸惑っていたけど、後でリッシャに教えてもらって。リッシャ得意だから。そう伝えるとほっとされた。
ブルーノさんは首から下げたメダルもすごく嬉しそうだったので、自己満足で作ったけど良かった。
2位と3位にもメダルとワインを贈呈。
3人ともいい笑顔だ。若いヘルムが、来年は優勝しますと、今から宣言して、周りから声援やらブーイングやらを受けている。
2人ともメダルを触ったりのぞき込んだりしている。村人は文字を読めない人もいるけれど、数字で1位、2位、3位と書いているのはわかるのだろう。
賞品もいいけど、栄誉もいいね。
引き続いて、子どもの部も開催。こっちも各地区で戦ってきた5人だ。あれ、リュシアンがいる。まだ7歳なのに勝ち進んできたんだ。凄いぞ。
子どもの部は10歳までと決めている。そうじゃないとちびっこがぜんぜん戦えないからね。
子ども用のレーンで戦いが始まる。東は農家の10歳。西は果樹園農家の8歳、南がワイン農家のリュシアン7歳、北はブルーノさんの息子だ10歳。中央は薬師の弟子のケイン10歳だ。
子ども用だったけど、みな真摯で迫力がある。お手伝いの子どもも見ているだけで力が入っているし、応援の親や親戚、ご近所さんの声援が凄い。ボーリングってこんな雰囲気だったっけ?
一投、一投。歓声があがる。大勢の前で失敗の出来ない試合に闘志を漲らせているようだ。子どもの部は大人の部のおまけみたいなものだと思っていたけど、これだけ真剣だといい勝負だね。
「1位は南地区のワイン農家のリュシアン成績は7本です。2位は西地区の果樹園農家のニコで成績は6本でした。3位はなく同点2位で、ブルーノさんの息子さんヨナスの成績は6本でした。」
それぞれ、メダルと賞品は王都で買ってきた飴にした。1位は5個、2位は4個、入賞できなかった子は1個。ケインは入賞できなくてかなり悔しがっていたけど、代表になったぐらいなんだからそれはそれで凄いよ、そう伝え飴を渡すと、甘い飴ににっこり笑って、来年は勝つぞと気合を入れていた。みんなお疲れ様―。
リュシアンには副賞でリバーシを贈呈した。アルノーおじさんの家でも楽しんでくれたらいいな。親戚なんだから副賞じゃなくてもあげても良かったんだけどね。後で気づいた・・・。
さぁ午後から収穫祭の本番だ。お父様が領主館の前の広場で挨拶をする。お父様の横には振る舞いの野菜スープとエールの樽が並んでいて、わたしの石焼き芋も並べてもらっている。
もういい匂いがしているよ。マルタや手伝いのおばちゃんが黒い手袋で芋を転がしているぞ。
「皆さん、本日は収穫祭に集まってくださってありがとうございます。今年も無事に実りの季節を迎えることができました。神々と大地の恵みに感謝いたします。そしてこの一年畑を耕し、家畜を育て、果樹を守り、パンを焼き、村を支えてくれたみんなに感謝します。今日は振る舞いのスープといつものエールに加え、ジェマが赤芋を美味しく焼いています。後で大カボチャ競争も表彰します。みんな美味しいものを食べ歌い、踊り、楽しんで下さい!」
お父様の挨拶が終ると、みんな自分のコップを持って、エールの樽の前に並ぶ。石焼き芋に並ぶ人はいないかな。美味しいんだけどなぁ。赤芋ならばいつも食べているからと思っているのかもしれない。
うーむどうしようかと思っていたら、グンダおばちゃんが真っすぐやってきた。
「ジェマお嬢様、石焼き芋を下さい。ゴンゾがこの間めちゃくちゃ美味しかったって家で自慢したんですよ。自分だけ美味しいもの食べてきたって嫌みですよね。とんでもなく甘かったとか。絶対祭りで食べようと来ましたよ!!あと、各家の女衆に針を渡しました。報告遅くなってすみません。皆物凄く喜んでくれましたよ。ありがとうございました。」
グンダおばちゃんこっちこそありがとう!一番大きな芋をあげよう。
「グンダおばちゃん、お芋熱いから気をつけてね。この黒い紙に包めば熱くても持てるから。少しずつ食べてみて、少し冷ましてもいいかも。」
「なあに。鍛冶屋のおかみだよ。熱いのには慣れているから大丈夫さ。どれどれ。ゴンゾが褒めちぎっていた芋の味はどうだい。あちち。ち。う。甘い。甘いよ!!!これは本当に赤芋か。見た目は赤芋なのに、お菓子みたいな甘さじゃないか。ゴンゾがいい仕事したって自慢するわけだ。これは凄い。美味しいよ!!!」
グンダおばちゃんの魂の叫びを聞いた村の女衆があっという間に石焼き芋に集まってきた。甘い、お菓子みたいな甘さに、つられない人はいない。出遅れた男衆と子どもたちが遠巻きに見ている。
「熱いけど、甘い。これすごく甘いわ!!」
「ほんとに赤芋なの?どうしてこれだけ甘いわけ?!」
「はぁ。美味しい。熱いけど、美味しい。」
「口の中が火傷しそうだけど、止まらない。こんな美味しい芋は初めて食べるわ!!」
口々に褒めたたえる声ににんまりしてしまう。ただの芋ではない石焼き芋様なのだ。へへへ。
女衆が次々と集まり、あっと言う間に第一弾の赤芋がはけてしまった。次の芋は30分後に焼けるね。しばしお待ちを。
芋が焼けるまで何しようかと思っていたら、はとこのリュシアンとコレットがやってきた。コレットは久しぶり、リュシアンはさっきぶり!
「ジェマ、さっきもらったこれ、これは一体何?」
ああ、リバーシ。そういえば、リュシアンにはまったく説明していなかった!
広場の開いている隅っこのところに、インベントリに入れていた石でテーブルと椅子を作る。リュシアンに黒い石と白い石を見せて、これはひっくり返すことができる。両方の石が裏表に着いていることを説明し、真ん中に4つ石を置いて、順番に挟んでひっくり返すゲームだと伝える。
リュシアンは何となくわかったみたいだったから、とりあえず進めてみることにした。コレットは横でしっかり見ている。
前世では友達もいなかったし、毒親だったからリバーシを一度も対面で遊んだことはなかったから、王家直轄地3か所巡りの待ち時間でお爺様、ハンス、リッシャと遊んだ時にはボロ負けだったけど、今度は子どもだ。大人と遊んで経験も積んだはず。初勝利も目の前だ!
と、思っていたはずなのに、何故かほんの少しの差で負けている!何故!!!
「相変わらず、ジェマは何も考えず、感性のまま動いているんだね。」
相変わらずとは!?感性のままとは!?考えなしっていうこと!!
わたしがきっととんでもない表情をしたのだろう、それを見ていたリュシアンが噴きだした。
「ははは。ジェマ、褒めているんだよ。ジェマの感性は凄いからね。ボーリング大会に石焼き芋、初めてみるものだよ。
きっと思いついてやってしまえと動いたんだろう。ジェマらしいよ。そしてこのゲーム。奥が深いよ。きっとジェマには向いていない。こんな向いていないゲームまで作ってしまうなんて、ぷぷぷ。ははは。」
リュシアンが更に笑い出した。もう、いいんだから。猪突猛進なわたしは思慮深いという言葉は似合わなくていいんだ。いいんだ。ふっ。
コレットがこれをみて、わたしもやりたいと言い出したので、リュシアンが相手をすることにした。リュシアンはわたしと同じ年の7歳、コレットは4歳。4歳でもできるんだろうか。
ゆっくり丁寧にリュシアンがコレットに教えている。わたしがティオに教えたより上手かも。見ているとティオとネオもやってきた。ティオはやりたそうだ。実はティオの方がわたしより上手い。ネオはさっぱりわからないようだ。
ネオがリバーシの石をうっかり飲み込んだりしないように、大カボチャ競争をみんなで見に行くことにした。
こっちはボーリング大会では入賞できていなかった東地区の農家の人が優勝して、お父様からメダルとワインと副賞のリバーシを受け取っていた。
大カボチャは子どもが2人手を繋いだぐらいのびっくりするぐらい大きさだった。あれ?ボーリング大会の1位は北地区、子どもは南地区、カボチャは東地区、中央のゴンゾさんには事前にリバーシは実は渡している。じゃ、リバーシが無いのは西地区だけ?これはやばい?!
カボチャ大会を終わらせたお父様のところへ行って、かくかくしかじかこういうことでと報告すると、お父様もそれはダメだね。西地区にもいるね。と。
どうしよう。お父様と必死で考える。あ。西地区には教会がある。司祭さんに贈呈しよう。教会には読み書きを教えてもらうために子どもが通っているし、ちょうどいいだろう。
急いで手持ちの石でリバーシを作ると、お父様と教会のバザー会場へ行くことにした。ティオもネオも、リュシアンもコレットも一緒だ。自分用に何かお土産がないか見たいそうだ。
バザー会場はとても賑わっていた。司祭さんもお忙しそうだ。すると目の合った司祭さんがこっちにダッシュで近づいて来られた。
「ジェマ嬢良いところにお越しくださいました。ジェマ嬢の寄付していただいた綺麗なビーズがほぼ売り切れてしまいました。物凄い人気であっと言う間でした。いくらか在庫をお持ちでしたら、もう少しお願いしたいのですが。如何でしょうか。」
物凄く恐縮された司祭さんに、なんだか申し訳なくなって、その場で蛍石のビーズの追加を作る。また石のケースに並べていくと、並べた先から売れていくじゃないですか!びっくり。こんなに人気だと思っていなかった。
「ジェマお嬢様、先日は美しい針をありがとうございました。この針で何か作ろうと思っていたのですが、この美しいビーズを見て、家にある布で髪飾りでも作ろうかと思います。本当美しい針で美しいものが作れるなんて幸せです。」
といった、針をありがとうー。という言葉をいっぱい受け取った。そしてそんな素敵な針を使いたいからとビーズを買い求める人が物凄く多かった。
村の女衆の情熱が凄い!!
こんなに喜んでもらえてとても嬉しい。針もビーズも作って良かったな。
村中の女衆に行く先々で声をかけられ、心が温かくほわほわしてくる。みんなにためになることができるスキルで良かった!
リュシアンもコレットは綺麗なハンカチや小さなお人形を買っていた。お人形は木でできている。布はまだまだお高いものね。手持ちの石で、小鳥や子猫、子犬の置物は作れるかも!!ふと思いついて、インベントリに収納している大理石や蛍石で作ってみた。真ん丸のつるつるの艶々仕様にしてみた。
「ほぉ、とても可愛らしいものですね。ジェマお嬢様よろしいのですか?」
司祭さんが嬉しそうに小鳥や子猫や子犬の置物を撫でていたから
「いいですよ、これも寄付します!」
と元気よく置いてきた。ティオやネオやコレットにも小さな小鳥と子猫と子犬の置物をそれぞれ渡したところ、めちゃくちゃ喜んでくれた。リュシアンにはこっそり黒曜石でドラゴンを作って渡しておいた。子どもの手のひらに乗るぐらいの小さなドラゴンだけど、リュシアンの目が輝いていた。男の子はやっぱりドラゴンなのかも。
司祭さんにリバーシを渡し、遊び方を簡単に説明する、やってみないとわからないだろうから、収穫祭が終わったらリッシャが説明に行くと伝えておく。
ふふふ、リッシャ人気者になりそう、何かお礼考えておかないとねー。
広場に戻ると、第2回目の石焼き芋が焼き終わり、領民へ声がかかると今度は男衆と子どもが殺到していた。第1回目で食べられなかった女衆も負けていない。ちゃんと並んで下さい!熱いので気をつけてね。黒い紙は食べ終わったら回収します~。
はふあふ、あちちと熱いのに必死で食べる人多数。甘い!美味しい!赤芋とは思えん!濃厚で黄金色の芋が最高!と誉め言葉が埋め尽くす。わたしの隣で調理道具を作ったゴンゾさんとノルベルトさんも何だか自慢げに石焼き芋器のそばで胸を張っている。ほんといいもの作ってくれてありがとう。
「ジェマお嬢さん、この石焼き芋器は祭りが終ったらどうするんだ?」
「ん?来年のお祭りまで仕舞っておくんじゃないかな?」
「じゃ、1台、わしに貸してくれ。この芋は旨い。これだけで1回の食事が十分に満足できるぞ。」
「ゴンゾ、抜け駆け禁止だ。わたしも欲しい。」
「あら、じゃ、ゴンゾさんとノルベルトさんで、家庭用の小さな石焼き芋器を一緒に作ればどうかしら?」
「おお、そうだな。わしとノルベルトがいれば、小さな家庭用の石焼き芋器が作れるぞ。1回に4本ぐらい焼けるものにしよう。」
「おお。そうしましょう。わたしも協力します。」
そんな話をしていたら、そばで聞いていた村人たちが俺の家にも欲しい。わたしの家にも欲しいと声があがる。ゴンゾさんとノルベルトさんが協力して作るのなら受注してみては?と促してみたところ、予約が殺到した。まだ、値段も言ってないのに。
使う雨花石はわたしが西の山から捕ってきて、2cmぐらいの砂利にすることが決定。本体はゴンゾさんが、魔石の調整はノルベルトさんが、3人で協力して石焼き芋器を作ることで合意。村のためだから、そんなにお高くしなかったからか、村のほぼ全世帯が注文したんじゃないかという量で、3人で顔を見合わせる。
「まぁ仕事があるっていいことだ。芋が旨くなる仕事は俺も楽しいしな。」
「わたしも魔石を大量に仕入れにいかないと。こんなに仕事が入るのは久しぶりです。」
前世の大阪のたこ焼き器のように、村で石焼き芋器が一家に一台常備されるのはもうすぐである。これで寒い冬の日も熱々の石焼き芋が家で食べることができると、村中ウキウキしている。ジェマへの感謝の気持ちが募る村人たちだった。




