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鉱物好物  作者: ヒロ
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おはようございます。秋も始まり、少し涼しくなってきた朝。今日は鍛冶屋のゴンゾさんとグンダおばさんのところと、魔道具師のノルベルトさんに相談に行く予定。石焼き芋の準備と針のお土産を渡すのだ。


「ゴンゾさーん、グンダおばちゃんー。おはようございます!!」


朝いちでリッシャと村を走ってたどり着く。いやいや走らなくてもいいんじゃないとわたしは思うが、7歳のジェマはそういうのは考えない。行くなら行くーっという感じで突き進む。わたしが朝いちで行ってお邪魔じゃないかとか、お約束もしていないのにダメじゃないかとか考えるだけで無駄なのだ。用事があるなら行くのだーっと突進する。それがジェマなのだ。


「おお、嬢ちゃん、朝から元気だな。」


奥からゴンゾさんが手拭きで顔を拭きながら出てきた。朝からもう仕事していたのかな?


「あらあら領主家のお嬢様、いつも狭苦しい我が家にようこそ。」


グンダおばちゃんもにこやかに迎え入れてくれた。グンダおばちゃんは縦にも横にも大きな人で、がっつりしっかりしたゴンゾさんと並ぶとちょっと暑苦しい・・・。こんな感想持ってごめん!とわたしは思うけど、ジェマは、はははっ、大きなおっちゃんと大きなおばちゃん!とそのものを受け入れている。それでいいんだ。


「ゴンゾさん、今日は作って欲しいものがあるの。あと、グンダおばちゃんにはお土産―!」


ジェマはインベントリに仕舞っていた石のお椀に入れた1,000本の針をグンダおばちゃんに渡す。嘘ついたら針千本ってこんなにたくさんあるんだって思いながら。


「おや、まぁこんな艶々の針は初めて見たね。これはお土産?」


「なんだ、この金属は見たことが無いぞ!!」


「これはステンレスっていう金属で作っています。錆びにくいんですよ。先日王宮からの依頼を達成したらご褒美にいただいたんです!」


ふんすと胸を張ってみる。


「ステンレス?初めて聞いたな。その金属まだ持っているか?」


「ゴンゾさんならいいか。これ少しだけど、こんな金属だよ。」


インベントリから針を作った残りのステンレスを取り出してみると、ゴンゾが奪い取って見入っている。


「グンダおばちゃん、この針を村のおばちゃんたちに、王都のお土産として分けて欲しいの。お願いできる?」


「ああ、そういうことならいいよ。わたしがみんなにわけておくよ。きっと皆喜ぶよ。こんな美しい針なんて見たことがないからね。一体何本あるんだい?」


「1,000本作ったよ。足りる?」


「1,000本あれば、各家の女衆には3~4本ぐらい渡せるよ。良いお土産だよ。いいもの考えたね!!」


グンダおばちゃんが会心の笑顔だ。針にして良かった!!


「嬢ちゃん、この金属は作れるのか?」


「ゴンゾさん、陛下からはステンレスでわたしは物を作って売っても良いって許可はいただいたので、鉄とクロムがあればインゴット作れますよ。」


「そうか、鉄とクロムとかいうものか。」


「お父様が仕入れてくるって言ってたよ。」


「そうか、旦那様が仕入れてくださるなら、少し待つか。それにしても良い輝きを持つ金属だ。早く俺も手に入れたいものだ。」


「そうそう、ゴンゾさん、今日は石焼き芋の調理道具を作ってもらいたくて。熱くなるところは、魔道具師のノルベルトにも頼もうと思っているんだけど。」


ゴンゾさんに石焼き芋器の概要を説明すると、


「よしきた!作ってやるよ!!」


と、ノルベルトさんのところに説明に出ていってしまったので、慌てて後を追いかけて、ノルベルトさんのところでも概要説明しにいった。両名ともしっかり理解してくれて良かったよ。


あっという間に石焼き芋器が出来て、お父様からお芋をいただいた。いや、自分のお小遣いで買い取ってみた。これは収穫祭でみんなに食べてもらいたいんだよね。


「姉さま、これはなんですか??とてもいい匂いがしています。」


領主館の前の広場のはしっこに石焼き芋器を置かせてもらっていて、今日は試食会だ。試食してくれるのは、お爺様にお婆様、お父様にお母様にティオとネオ、オットーやハンス、リッシャにフィーナをはじめ、お婆様やお母様の侍女も後ろに控えている。調理道具を作ったゴンゾさんとノルベルトさんも参加してもらった。

作るのはマルタにお願いした。


お父様から豊作だった赤芋を仕入れて、さぁ石焼き芋試食会を始めよう。石焼き芋用の石は村で採掘してきた雨花石だ。これは熱くなっても割れない性質を持っているので、石焼き芋には最適なのだ。これを見つけたからこそ、石焼き芋作ってみようって思ったんだけどね。


調理道具は魔石で石を熱くすることができるようになっている。魔石って便利だ。30分ぐらい前からじっくり芋に熱を入れている。ノルベルトさんが魔石を加工して前世よりも早く芋の芯まで焼きあがるように仕上げてくれたのだ。もうたまらないぐらい美味しい匂いがあたりを漂っている。お婆様もお母様もそわそわしている。


もういいかなと真鍮で作った串を一番身近な芋に突き刺すとすっと刺さった。


よし!出来上がりだ!!熱いので素手で持つと火傷しそうだ。こっちの世界の新聞紙はない。だから炭焼きのおじさんのところで炭を買い、炭も鉱物の一種として加工ができたので、カーボンファイバーもどき、炭素繊維の紙のようなものを作ってみた。真っ黒だけど手は汚れないし、熱さの耐性があるから、焼き芋を包むにはちょうどいいと思う。


レディーファーストといこうかと、お婆様とお母様に先に石焼き芋を手渡し、お爺様、お父様と渡す。ティオとネオには熱いと思うので、フィーナとリッシャにお手伝いをしてもらった。オットーやハンス、ゴンゾさんやノルベルトさん、侍女の2人にとどんどんお芋を渡す。


「熱いので、気をつけて食べてね。焦げた皮は捨てていいです!」


わたしの声を合図に、皆恐る恐る食べだした。あちちという声があちこちで聞こえてきた。熱々で本当に熱いよ!


「こ、これはうまい!なんだ!赤芋がこれだけ甘いとは!!」


「ジェマ、これ、本当に赤芋だよね。びっくりするぐらい甘いよ!!」


お爺様とお父様がはふはふ食べ進めている。お婆様とお母様は手に持った芋をそのまま食べるというのはなかなか恥ずかしいみたいで、2人のお付きの侍女さんがお皿やフォークを準備している。そうか、レディは丸かじりできないんだった。失敗失敗。


「なんじゃ、うまいぞ。わしが作った芋焼き器は凄いぞ。」


「え、ゴンゾさん、わたしの魔石の調整が上手だったんですよ。それにしても美味しいです。」


ゴンゾさんもノルベルトさんも、あちあちと言いながらも食べる速度は落ちていない。


「姉さま!このお芋甘いです!!美味しいです!!」


ティオが小さな口で少し齧ったようだ。ネオも隣で熱い芋と格闘している。リッシャが小さく割っているようだ。


「ねえたま、おいちいー。」


ネオがにっこり笑う。へへへ。美味しくて良かった。

お婆様とお母様もようやく芋を口に入れたようで、目を見開いている。オットーやハンスもティオやネオの手伝いをしているフィーナやリッシャも最初の一口を入れたようだ。


「マルタも、全員に行き渡ったから食べてね。焼いてくれてありがとう。」


炭素繊維もどき布で作った軍手、こっちの世界では黒い手袋をマルタには渡していて、それで芋を石の上でぐるぐる転がしながら焼いてもらった。


「お嬢様、ええ頂きます。とても美味しく焼けてびっくりです。この黒い手袋も助かりました。」


「ん?ジェマ、あの黒い手袋はなんだ?あ!この芋を包んでいる黒い紙と同じものなのか?」


「はい、お爺様、これは炭素繊維もどきで、熱耐性があるのです。熱いものを触っても熱くないように作りました!」


「な、何?熱耐性じゃと。そんなものを作っておったのか!わしが欲しい!!」


どこからかゴンゾさんが出てきた。熱耐性の黒い手袋が欲しいみたいだ。そうか鍛冶屋ならあってもいいかも。


「炭があれば作れますよ。」


「そうなのか、じゃ、今から取ってくる!!」


「ああ、ゴンゾさん、うちに炭がまだあるから家に取りに帰らなくても大丈夫です。」


「おお、そうか。じゃ、早く作ってくれ!」


興奮しているのか、いつものゴンゾさんより圧が凄い。オットーに頼んで庭に置いてある炭を持ってきてもらったので、炭素繊維もどきであっという間に加工して、黒い手袋を作る。


「はい。ゴンゾさん、作りましたよ。」


「おお、ありがとう。ありがとう。」


そういうと、さっそく手にはめている。そしておもむろに、まだ残っている石焼き芋をむんずと掴まれた。


「温かいとは感じるな。」


黒い手袋を外して、もう一度今度は素手で芋を掴もうとされた。


「あ、あちちちち。熱いぞ。この芋、凄く熱い!!!ああ。この黒い手袋は凄いな。こんな熱い芋が温かいぐらいにしか感じられなかった!!」


「そうです。お嬢様、この手袋があれば熱い鍋も持てそうです。厨房でも役立つと思います。」


マルタも絶賛する。


「マルタもゴンゾさんも、それは差し上げます。」


「のう、ジェマ、この手袋はたくさん作れるのか?材料は炭だろ、何故布になるのかさっぱりわからんが。100ぐらい作れるか?」


「お爺様、わたしはすぐに作れますが、数が多くなるのであれば、錬金術師のラングレー先生にお願いしてみたらどうでしょう?」


「ああ。ラングレー先生はお若いが、王都の学園を優秀な成績でご卒業されたと聞く。人間関係が苦手だからとこんな田舎まで流れて来られたが才能は抜群だろう。そうだな。現物の手袋があって、材料の炭があるのなら、ラングレー先生にも作れるか。」


「でも、石焼き芋を包む紙と厨房で使う手袋でしょ。そんなにたくさん作ってどうするの?」


「ジェマ、手袋は今まで革製のものしか無かったのだ。こんな布のような生地で熱耐性があるのだぞ。村中の料理人や厨房で働く主婦も欲しいだろうし、こんな凄い付加価値がついたもの、絶対売れるぞ。」


最初は、へーとしか思わなかった。黒い手袋って軍手だよ。作業用手袋は革製しかなかったのか。じゃ、安く作れたら欲しい人いるかもね。


「この芋を包んでいる紙も同じ、熱耐性があるのか?」


「えっと、この紙は熱耐性もあるし、丈夫だし、水や油にも強いの。でも、どうしても真っ黒になっちゃうのよねー。残念。」


「ジェマ、残念ではないぞ。熱耐性があり、丈夫で水と油に強いのであれば、使い道は広がるだろう。これは石ではないから、ヴェルナー様や、アシュクロフト様ではないな。ローレンスに連絡するか・・・」


お爺様が大きなため息をつかれる。お婆様が少し、ほほほという顔をされている。


「お爺様、ローレンス様ってどなたですか?」


「ああ、宰相だよ。王宮で会っただろう。あいつとは学園の同級生だったのだ。あいつはグリーに片思いしておって、面倒だった。グリーはわしのもんなのにな。後で結構ぐちぐち言われた。」


そうなんだ!お婆様に片思いする宰相さん!真面目そうで胃痛持ちのような細身な宰相を思い出す。お可哀そうに・・・。でも、お爺様が相手なら絶対勝てないよね。お爺様物凄く素敵だもの。身内の贔屓目かもしれないけどね。


「ジェマ同情をする必要はない。あいつは侯爵家の嫡男で身分にあった良い妻を見つけて、幸せになっとるはずだ。ただ、学園時代を思い出すと、ついつい面倒だった思い出が出てくるのだ。まぁいいわい。あいつに石灰岩とリン鉱石、黒い紙と黒い手袋を全部丸投げしよう。そうしよう。ははは。」


お爺様はそう言うと豪快に笑いだした。お父様も隣で苦笑している。面倒なことを面倒だった人に投げてしまえ作戦は決行されるようだ。わたしは村で使ってくれるならそれでいいかな。


こうして石焼き芋試食会は無事に終了した。収穫祭までに、ゴンゾさんとノルベルトさんが調理器具をもう1台作ってくれると約束してくれた。2台あれば、当日も皆に配れそうだ。


お爺様は村人に配るために、ラングレー先生の所へ行くから、黒い紙と黒い手袋を見本で作ってくれというのでお渡しした。ラングレー先生が頭を抱えつつ、完成品を作り上げたのはさすが優秀なお方だなと思ったけど、何故頭を抱えたのかはわからないままだった。後で何故炭が布になるのかまったく理解できなかったんだよーー!!と魂の叫びを聞いたけど、それでも物が作れる錬金術師って凄いなって尊敬してしまったよ。



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