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帰りの馬車はハンスが御者でお爺様とリッシャと気分はのんびりだ。お土産をかかえ、村へ向かう。1か月ぶりの村だ。早く帰りたい。ティオとネオに会いたい。王都にいたのはたった2日だったけど、人が多くて疲れてしまった。何もないように見えるけど、すべてがあるわたしの村。
懐かしい匂いがする。森の匂い、土の匂い、水の匂い、畑の匂いだ。わー。村に帰ってきた。外から帰ってきたら、村の匂いがわかる。田舎の匂いだ、でも大事な故郷の匂いだ、たった1か月だけいなかっただけなのに、涙が出てくる。ここが、わたしが帰ってきていい場所なんだと思うと、胸が苦しくなってきゅーっとする。自分の居場所なんて前世になかった。でも、今は、ここに帰ってきていいんだ。と思うと嬉しくて嬉しくて泣けてくる。
今まで元気だったわたしが泣きかけたので、お爺様がおろおろする。
「ジェマ、ジェマどうした?どこか痛いのか?」
「ううん、違うの、お爺様、家に帰って来れたのが嬉しくて・・・。」
「旅は過酷だったから、辛かったのか?」
「ううん、旅は楽しかった。水晶群も素敵だった。また行きたい。でも、戻れる場所があるのが嬉しいの。わたしここに帰ってきていいんだなと思えたのが嬉しいの。」
「な!ジェマ、ジェマの家はこの村だ。ジェマはわしの大事な孫だ。いつでもここに居てもいいのだ。ずっといてもいいのだ。準男爵になっても、ずっとずっと一緒だぞ。」
「お爺様!!!」
馬車の中でお爺様にしがみつき、そろそろ家に到着するというところまでくっついていた。優しくて温かい、お爺様大好き!!7歳のジェマも前世40歳のわたしもお爺様が大好きだ。絶対的な安心感がここにある。こんなの初めて。人間関係に絶対という言葉をつかえる日がくるなんて。
「姉さま!!!」
「ねえたま!!!」
2人の弟が馬車の音を聞いて飛び出してきた。わたしも馬車が止まるのもそこそこに馬車から飛び出す。
2人が抱き着いてきてくれて、その体温の高い柔らかい体を抱きしめ返す。2人の弟にも絶対的な愛を感じる。わたしが存在してもいいって思える確かな愛だ。
2人はわたしを見て安心したのか少し涙ぐんでいる。可愛い。いつも冷静なティオがこんなに感情を見せてくれるなんて。
自分は1か月間楽しい時間を過ごしてきたけど、弟2人には寂しい時間にしてしまったのかな。ごめんね。楽しかった時間のお話をするね。お土産もあるんだ。
3人で手を繋いで家に入る。
わたしの家だ。わたしの居場所。そう思うだけで心強くなれる場所。帰ってきた。1か月間のお出かけも楽しかったけど、帰る場所があるっていうことがこんなに嬉しいことだったんだね。前世のわたしがしみじみしていたけど、7歳のジェマはそんなのは当たり前だ。久しぶりに家族に会えるのが嬉しいと心が弾んでいる。
「ただいまー。」
「ジェマ、おかえりなさい。」
お母様がにっこり両手を広げてくれているので、飛びつく。淑女にしたらはしたないかもしれないけど、そんなこといいのだとばかりに抱きついた。一切躊躇わずに抱き着きにいける関係性の強さにあわあわと思うが、何も考えていない7歳のジェマはただお母様の温かさを感じていた。1か月間お爺様とご一緒だけど、お母様とこんなに離れたのは初めてだった。やっぱり少し寂しかったのだ。
「ジェマ、どうだった、辛くはなかった?」
「お母様、物凄く巨大な水晶鉱床みたの、本当凄かった!移動もお尻痛くなったけど、いろんな石を見ることができて楽しかったです!」
「そうなの、良かったわね。」
抱き着いたまま、頭をなでなでしてもらう。うっとりその優しい感触を味わっていたら、その隣でお父様も待ち構えていらした。お父様にも抱き着く。
「ジェマ、おかえり。体に不調はないか?」
「お父様ただいま!体は大丈夫!!」
お父様の広い胸に、頭をすりすりさせる。大きな手で頭を撫でてくれると、胸がぎゅっとする。
「お父様、家は何かあった?」
「ああ、赤芋が豊作だったな。かぼちゃも良く採れた。今年はどの作物もいい感じだったから、収穫祭が楽しみだよ。」
「お父様、赤芋って、いつも食べているお芋みたいなもの?」
「赤芋は皮が赤くて細長くて茹でると中が黄色くなって、甘みがあるな。」
ああ。サツマイモみたいだ!サツマイモ!!!石焼き芋作れるかな。魔石と石、石は熱しても割れにくい石が向いていると聞いたことがある。前世で石焼き芋を買いに行った時に、砂利のような小さい石が敷き詰められているのを見て、大きな石じゃなくていいのねと思ったのも思い出した。
魔道具は村の魔道具師のノルベルトさんのところへ行こう。ノルベルトさんには香炉の魔石も加工してもらっていると聞いているけど、ちょっとぐらいいいだろう。
「お父様!赤芋少し欲しいです。おいしくしますから!!」
「ジェマが何か思いついたのかい。赤芋は村のどの家でも豊作だったからたくさんあげられるよ。」
「ノルベルトさんにも手伝ってもらいます!わたしのお小遣いなら使ってもいいですか?」
「ああ、いいよ。でも、魔道具師に何か依頼するんだい?」
お父様はそういうと首をかしげている。後ろで聞いていたお母様もだ。
「出来上がるまで秘密です!!」
「ジェマ、また何か新しいことか?」
お爺様が参入だ。
「この旅の報告を先にしないと、皆、応接室に集まって欲しい。」
あら、お爺様結構真剣な表情だ。わたしは家に帰ってきただけで浮かれていたのに。
「皆に報告しないといけないことがある。」
応接室でお爺様が重々しく話はじめる。お婆様もお父様もお母様もティオもネオも真剣に一瞬息を止めてお爺様の顔をじっと見ていた。
「このたび、王命で我が家は男爵家から子爵家へ陞爵された。」
「はっ?子爵家?」
「え?!何故!?」
「まぁジェマだ。ジェマが王家直轄地3か所巡ったらそうなった。」
「「「はぁ???」」」
「まず、隣国が秘匿していた鋼の製法を伝えた。その鋼を素にステンレスという錆びにくい金属を作ってしまった。辺境伯領ではガラスを作り、色水晶を見つけ、新しい金鉱脈を見つけ、大きなルビーの原石も見つけてしまった。」
「姉さま凄い!凄いです!!」
ティオが一番に褒めてくれたけど、お婆様やお父様やお母様はちょっと放心状態のようだ。ごめん、そんなに大したことしたつもりはなかったのよ。
「あー。でも大丈夫だ、子爵になったが、領地を増やしてもらうのではなく、年金を増やしてもらう方を選択してきたからな。」
「土地は増えたりしないのか、良かった。これ以上手は広げられないよ。」
「うちは使用人も少ないしな。無理はしないことにしておいた。」
「父さん、ありがとう。助かった、ただわたしが子爵か・・・。はぁ。」
「マルク、子爵家の礼儀作法ならわたくしが教えてあげることができるわ。」
「ああ、母さん、ありがとう。助かる。」
「年金は毎年金貨100枚だ。そしてジェマは準男爵に拝命された。ジェマの年金は金貨50枚だ。」
「「「は??」」」
「それは毎年頂けるんですか?」
「ああ、毎年だ。子爵家に100枚、ジェマに50枚だ。」
「こ、これで、古くなっていた橋を取り換えられるかもしれない!主要な道はジェマが石畳を敷いてくれたから良いとして、橋は作り替えたかったんだ!!」
「牛や羊やヤギも増やせそうですね。」
「鍬や鋤も新しく買えそうだな。」
「これでジェマやティオ、ネオを王都の学園に行かせることができる!」
「それにしても、毎年子爵家に100枚、ジェマに50枚・・・ジェマに50枚?あ、ジェマ準男爵拝命されてしまったんだ!」
「ああ、そうか、こんなにやらかしてしまったのなら仕方がないか・・・」
え?やらかしてしまったって・・・。そうなの?ちょっと見つけただけなのに?知っていることを教えただけなのに?えええ、お父様にご面倒かけてしまった!?
「大丈夫だよ。ジェマ、そんな『やってしまった!!』というような顔をしなくても。」
そういうとお父様は笑いながら抱きしめてくれた。
「確かに少しやってしまったかもしれないけど、陛下はジェマを準男爵にしてくれたということは、認められたということだよ。だから大丈夫だよ。」
「そうだぞ、陛下も王妃もジェマの功績をちゃんと労わってくださった。おまえはまだ幼いから準男爵だが、これが成人していたら伯爵ぐらいなっていたかもしれぬ。そうなるとジェマを取り込もうとするやつが増えるからな。これぐらいでちょうど良い。」
お父様いだっこされたまま、お爺様になでなでされて、やっとほっとする。そういえば爵位もらったね。王様に褒められたり、ステンレスのインゴット貰えることで嬉しくなって半分忘れていた。
ああ。わたしの7歳のジェマとの同化はどっちかといえば、ジェマの感情に引きずられがちだ。でもまぁいいか。前世のわたしなら陛下の前に出たら足が震えて何も言えなかっただろうし、もしかしたら失神していたかもしれない。マイナス感情がすぐに前に出てきていた前世に比べると、7歳ジェマのなんだかわからないけど偉い人に褒められて嬉しいという気持ちに全部塗り変えられる方が心が軽い。
「お爺様、ステンレスのインゴット頂けて、爵位いただいたのを半分忘れていました!」
そう言うと、お爺様は「はっはっはっ!」と豪快に笑われた。涙が出るぐらい笑われている。
「爵位よりステンレスが良いという準男爵なぞどこにもおらんだろ。」
「ジェマらしいですね。」
「だって、お爺様、お婆様、ステンレスですよ。うちの領地に鉄もクロムも無いから作れないんだもの、凄いんですよ。ステンレス。錆びにくいので、針にぴったり!ああ。たくさん作って、村のおばちゃんたちに早く渡したいです!」
「ジェマ、その錆びにくいステンレスとかいう金属は針以外に何に使うといいのかい?」
「んんんん、鋏とか包丁かな?錆びにくくて水にも強いので、洗面器や石鹸置きとかにもいいかも。厨房の作業台にもいいけど、作業台作るほど、ステンレス無いのです。残念。」
「そうか、鉄は買うことが出来る。クロムはあまり聞いたことがないから町で手に入ったら頼もうかな。」
「はい!お父様、材料があれば作れます。」
「今年は、ジェマが見つけてくれた石灰岩という白い石とリン鉱石という石を試しにうちの畑に撒いたら、見事に豊作で、ほら赤芋が大量に収穫できたんだ。来年は村中の畑に広げるつもりだ。」
「お父様、それならばたくさん粉にして収納していますから、また必要な時に声掛けしてください。わたしの石の収納は凄いのです。」
「あら、ジェマは本当凄いのね。ステンレスの針が出来たらお母様も欲しいわ。それにしても白い石を撒くと豊作になるなんて不思議だわ。」
「ジェマ、わたくしもステンレスの針を試してみたいわ。白い石、石灰岩はわたくしの鑑定では土壌の改善と出ました。リン鉱石は肥料ですね。どちらも地味な石なのに、ほんと不思議よね。」
「はい。針はお婆様とお母様にはプレゼントします!石灰岩とリン鉱石は偶然見つけたんです。いろんな石を鑑定して楽しんでいたら見つかったっていう感じです。お父様に実験で使ってもらって、良い成果が出て良かったです。」
「マルク、豊作だったのか?その石灰岩とリン鉱石というものを撒いて本当に豊作になったのか?!」
「ええ、いつもの2倍は収穫できたんじゃないでしょうか。ジェマにどうしても使って欲しいと言われて、自分の畑に試しに使ったんですが、あれはいけるかもしれません。ジェマに頼まれて、森の腐葉土も使ったのも良かったかもしれません。」
お爺様が急になにやら考えているのか、唸っておられる。
「マルク、それが本当ならば、王宮に報告せねばならぬかもしれぬ。ヴェルナー様とアシュクロフト様に相談すべきか。石を細かく粉にして畑に撒けば豊作になるなんて、子爵家の手におえんな。」
「あー。そうか。今回はわたしの畑だけの実験だったけど、本当にこれが全部の畑に有効ならば、国の一大事ですね。」
「石を撒くだなんて、誰も考えたことも試したこともないだろう。それを粉にして撒いただけで収穫が2倍だなんてまるで魔法のようだ。ああ、マルクの土魔法も影響しているのか。」
「わたしの土魔法の影響も少しはあると思います。石灰岩の粉を撒いて土を攪拌させたりしましたから。でも、人力でもたぶんそれは出来ます。石灰岩とリン鉱石さえ見つければ人力で出来ることなんです。」
「ジェマ、石灰岩とリン鉱石は珍しい石なのか?」
「んー。石灰岩は山一つそれで出来ているのもあるぐらいありふれています。うちの村でも東の山のひとつが石灰岩ですよ!リン鉱石はちょっと珍しいですが、まとまって見つかるので、うちの村の東の山の麓に結構在庫があります!あと、石灰岩もリン鉱石も1回撒けば数年効果があります。」
「そうか!今年は腐葉土も使ってみたから、石灰岩だけ、リン鉱石だけ、腐葉土だけとか、いろいろ実験していたいな。」
「マルク、その実験は王宮にしてもらおう。報告が遅れる方がまずいだろう。明日の朝、鷹便を出す。今なら秋撒きの作物に間に合う。」
なんかお爺様、オズワルト様から鷹を預かって帰ってきたんだよね。絶対使う時が来るって押し付けられたとも言うが、家に帰って次の日に使うとは思っていなかっただろう。
「まぁ王宮からお戻りになられたばかりだというのに、お忙しくなりそうですね。収穫祭も近いのに。」
「グリー、これは国の一大事だ。お声がかかれば参上しなくてはならない。」
「そうですよね。貴族としての義務を果たさないといけませんわね。それにしても白い石を粉にして撒くだけで収穫が増えるなんて、それが土壌改良や肥料になるとわたくしの鑑定で確認しましたが、それでも不思議ですわ。」
お婆様も苦笑されている。でも、ちゃんとお婆様にも鑑定していただいてからお父様は使われていた。信じられないぐらい不思議だものね。
「ティオとネオにもお土産買ってきたの。お婆様、お父様、お母様にももちろんあります!」
石灰岩やリン鉱山については、オズワルト様の返事待ちになるから、もういいだろう。7歳のジェマは早く王都のお土産をみんなに見せたい。
お爺様がわたしを見て苦笑する。
「そうだな。ジェマが選んだ土産は、ハンスが馬車から降ろしてくれているはずだ。」
それを聞いたオットーが、ハンスから荷を預かって応接室のテーブルの上に置いてくれた。
お婆様にはレースのハンカチとたくさんの刺繍糸、お母様にはいい香りのハンドクリームと綺麗なレターセット、ティオには冒険の本を、ネオには子ども向けのおもちゃの木刀を取り出した。
ネオがおもちゃの木刀を見つけてダッシュで取りに行く。ものすごく嬉しそうだ。買ってきて良かった。
お婆様もお母様も喜んでくださった。「さすが王都の商品できが良いわね」とお婆様もご満悦だった。お母様も良い香りのハンドクリームに笑顔がこぼれる。ティオも読んだことがない本に目が輝いている。
これに、ステンレス製の針を追加で渡す。
「これがジェマの作った針なのね。艶々していて綺麗ね。」
「まぁ、これはとても使いやすそうだわ。ジェマこの針はどのぐらい作れるの?お友達にも渡したいわ。」
うん、どのぐらい?今回いただいたステンレスのインゴットだから数千本ぐらいはできそう。王宮に100本渡して、村のおばちゃんたちに5本ぐらいずつ渡してもまだあまるよね。まぁ全部針にしなくてもいいんだけど。
「お婆様、いただいたステンレスインゴットをすべて針にしたとしたら数千本できそうです!」
「まぁそうなの。でも、大事な新しい金属は全部使ってしまうわけにはいかないわね。わたくし用と侍女のエレーヌの分と、リーテお義姉様とお友達の分で100本ほど作ってもらえるかしら。」
「ええ、それぐらいなら大丈夫です。お婆様。」
「あら、ジェマそういうことなら、わたしももう少し欲しいわ。わたしも侍女のリーゼにも使ってもらいたいわ。」
「では、お母様にも100本お渡ししますね。村のおばちゃんたちにはどう渡しましょうか?」
「それなら、村の世話役のグンダに渡せば、上手に分配してくれると思うわ。」
「グンダおばちゃんって、鍛冶屋のゴンゾさんの奥さんですよね。」
「そうよ。鍛冶屋のおかみさんよ。新しい針を渡すにはぴったりに人だと思うわ。」
「そうなんだ。じゃ、村のおばちゃんたちの分はグンダおばちゃんに渡すことにする、」
「村は1軒、5本ぐらいにしておきなさい。この針は錆びないんでしょう。5本もあれば充分よ。」
「いえ、お母様、錆びないわけではなく、錆びにくいです。でも、10年ぐらい使っても錆びないとは思います。」
「10年も錆びなければ、錆びない針でいけるわよ。」
「うちの村は約200世帯だから、1,000本もあれば大丈夫よ。」
「わかりました。1,000本作って、グンダおばちゃんにお渡しします。」
お婆様もお母様もなんだか嬉しそうだ。村に施せるのは領主の仕事だからだろうか。ジェマはお婆様とお母様が嬉しそうだと自分も嬉しくなってしまう。
お爺様とお父様は石灰岩とリン鉱石の話や子爵家になったことで生じることについて随分真剣にお話しているようだし、ティオはお土産の本に夢中で、ネオはおもちゃの木剣を振り回してご満悦だ。
そんな家族がわちゃわちゃしている様子を見ているのが嬉しいなと思っていたら、オットーに声かけられて、夕飯のために服を着替えに行く。
そういえば、王都から戻ってきて本当にすぐだった。でも、1か月も出回っていたのに、帰ってきたら一瞬でうちの一員として馴染めたのが嬉しい。ああ。わたしはここの一員なんだなと実感できることが嬉しい。
夕飯では、帰宅時に簡単に説明したわたしのやらかし?の報告をお爺様が丁寧に話してくださった。お父様やお婆様、お母様がなんともいえないお顔をされている。
「最初の鉄鉱山で、隣国で秘匿されている鋼の製造方法をぺらっと話してしまった後、誰も知らないステンレスという錆びにくい金属も作れると嬉しそうに報告してなぁ・・・大騒動になった。」
「隣国の秘匿情報ですか・・・。」
「でも、スキルで鉄鉱石を見たら派生先で載っていたよ。」
ああ、残念な子を見るような目で見られてしまう。でも、本当に載っていた。でも、前世の知識チートも入っているかもしれない。もともと知っていたから載っていたんだろうか。載っているからいいかってつい思ってしまった。隣国が秘匿するレベルの情報だってそこまで書いていなかったもーん。
ぜいぜい。7歳のジェマがちょっとぐちぐち言っていて、自分で苦笑する。
「鷹便を出して、しばらく留まって、その間、ジェマは鋼やステンレスのインゴットをいくつも作って鉱山の管理人と仲良くなっていたよ。」
だって、作れるならいっぱい作って欲しいって言われたもーん。
「次に、水晶鉱床へ行く前に、辺境伯領に珪石の山があって、珪砂が採れるからガラスが作れるとぼそっとつぶやいてしまってな。その声を辺境伯様がすかさず拾われてしまわれて、その場でガラスを作ることになってしまって、喜々としてジェマがガラスを作っておった。」
お爺様は少々お疲れなんだろうか。声に元気がないような気がする・・・。でも、ガラス、こっちの世界に来て初めて作れたから楽しかったのは仕方がない。辺境伯様もお喜びだったしね。ねっ。
「まぁガラスですか。それはようございましたね。辺境伯様もお喜びだったでしょう。」
お婆様が褒めてくださる。そうでしょ。お喜びだったよ!
「ああ。辺境伯様は大変お喜びなっておられた。ジェマにかなり感謝されていたよ。是非、また遊びに来て欲しいと言われている。」
「まぁ!!ジェマのドレスを作らないといけないわね。」
お母様の目がきらきらしている。その反対にお父様の顔を青くなってきた。大丈夫?
「まぁ行くとしても、春になってからだ。あちらはこれから冬支度になるからな。」
「ああ、そうでしたね。辺境伯領は冬が厳しい領地ですからね。」
「水晶鉱床へ行ってから、今まで見つけられていなかった、ルチルクォーツとローズクォーツを見つけた。金色の針が入っているように見える水晶と、ピンク色の水晶だ。普通の水晶に隠れてあったのを、ジェマが見つけた。それだけでも驚いていたら、うちのフローライトを見つけた時みたいに、岩盤の向こう側に紫水晶と黄水晶の鉱床をみつけよった。結構な量だったな。」
あれは、本当に綺麗だった!水晶鉱床にはまた行きたい。水晶は優しい波長が合うんだよね。
「え?いきなり行って、いきなり見つけてしまったのですか?」
「ああ、あっという間だった。普通の水晶も美しいものだが、ジェマの見つけた色のついた水晶もそれは美しかった。ここでも鷹便となりしばらく留まることになった。その間、ジェマが黒い石と白い石を使ったゲームを作ってくれて遊んだよ。あれは村でも流行るかもしれぬ。なかなか奥が深いゲームだったぞ。」
「ほう、新しいゲームですか!」
お父様、少し顔色がよくなったのかしら、ゲームと聞いて楽しそうな声となっている。
「マルク、ジェマから1セット貰ったから、後で一緒にプレイしよう。」
「ええ、楽しみです。で、ジェマは水晶鉱床では新しい色水晶を見つけるだけで終わったのですか?」
「ああ。水晶鉱床ではこれで終わったよ。」
お爺様は満足そうに頷く。いや。さっきまでは少しお疲れそうだったのに。
「次の金鉱山で、新しい金鉱脈を見つけ、おまけに特大のルビーの原石も見つけたのだ。それは素晴らしい加工ができそうな大きさじゃった。」
「まぁルビーの原石ですって!王妃様が大変お喜びだったでしょう。」
「ああ、かなりお喜びで、ジェマに褒美を取らすとおっしゃられた。」
「「まぁ!!」」
お婆様とお母様が大きく感嘆の声をあげられた。
「それでジェマは何を褒美に?」
お父様もちょっと食い気味な質問だわ。お爺様はそれらをさらりとかわすように淡々と事実を述べる。
「ステンレスのインゴットだ。」
「「「あああ・・・」」」
なに、その残念そうなお顔。でも、村のおばちゃんたちにお土産欲しかったんだもの。うちの村では鉄もクロムも発見できなかったから、ステンレス作れないんだもの。
「でも、未知の金属であるステンレスを使って物を作って、それを村の領民に配布することを許可していただいたと思えば、大きな褒賞かもしれないね。」
「ああ、ジェマは今後ステンレスを自由に作って良いと許可されている。ただし鋼の製法は我が国でも秘匿されることになった。あれは武器が作れるからな。」
ステンレスも錆びにくいから針だけではなく、包丁や鋏とかいろいろ作れそうなんだけど、武器は作らないよね。だからいいのか。
「鋼はうちの領地には過ぎたものです。それよりステンレス、錆びにくい金属だということであれば、用途が広がるかもしれないですね。鉄とクロム?だったか。また町で仕入れてこないとな。」
「以上が、王家直轄地3か所でのジェマの発見だ。うん、こうして話してみたら、それほどでもないか。」
「父さん!何言っているんですけ、結構凄いことやっていますよ!!鋼の製造方法だけでも爵位いただけますよ。ああ。だから子爵への陞爵と、ジェマの準男爵拝命か。」
「ジェマ頑張ってきたのですね。お母様大変嬉しいですよ。1か月もご苦労様。」
「お母様ありがとうございます!!」
そう、頑張ってきたのだ。1か月も直轄地旅してきたのだ。戻ってきて初めて労ってもらった気がした。
「そうだな。ジェマはまだ小さいのに1か月もよく頑張ったな。」
「ほんと、ジェマよく頑張りましたね。」
「ありがとうございます!!お父様、お婆様!」
「姉さま、いっぱい見つけてこられたのですね。おめでとうございます!」
ティオが笑顔で褒めてくれると一気に苦労が報われる気がした。そうわたしはやらかしてきたのではなく、ちゃんと王命どおり働いてきたんだもの。
「ねえたま、おかえりなしゃい!」
ネオがにこにこしている。久しぶりに会えて嬉しいを全身で表してくれている。わたしも嬉しいよ。
報告が終ったら、子ども達は先に寝ることになる。久しぶりの我が家。ティオもネオもわたしからなかなか離れようとしないので、今日は子供部屋で一緒に寝ることにした。もう限界。眠いんだもの。おやすみなさい。




