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その頃王宮では
ジェマが退出し、謁見の間が静かに閉まると王妃がふふふと笑った。
「本当に変わった子でしたね。」
「わたしもそう思う。鏡の作り方や鋼の製造方法を知っており、ステンレスという錆びにくい金属まで作ってしまった。辺境伯領ではガラスを作り、色水晶を見つけ、ルビーの原石を見つけ、新しい金鉱脈まで見つけたのに、褒美は村のご婦人たちへの針の材料で良いと言う。」
「若い娘なら、美しいドレスや宝石を望むかと思いました。」
「本人は針が作れると本気で嬉しそうだったがな。」
「あれだけの功績だったら、欲深い貴族だと王家所有の土地まで寄越せと言ってもおかしくありませんからね。」
「あの子は気づいておらぬようだったが、今回の発見だけで我が国の数十年分は蓄えが増えたと思うぞ。」
「あの子は、以前、箱庭テラリウムも献上してくれましたわ。苔と小さなシダと黒い石だけでとても美しい自然がそこにはありました。小さな香炉や、煌めくカットのサンキャッチャーも、変わった形の守護石のアミュレットも水晶で小花を挟んだという栞も素敵なものでした。
小さく可愛いものばかり作るのかと思いや、鏡が献上されたと思ったら、今回は隣国が秘蔵していた鋼の製造。誰も聞いたことも見たこともないステンレスという金属を作り出す。そうかと思えばガラスの発見と製造。これで我が国の特産品となるでしょう。新しく見つけてきた美しい紫水晶や黄水晶で今後何を作れるのか見当もつきません。新しく見つけた金鉱脈で鉱山の寿命も延びました。そしてあのルビーの原石は値段がつけられないですわ。」
「普通なら一つでも歴史に名が残るだろう。だが、ジェマはまだ幼い。あまり爵位をあげても困るだろう。本人も爵位にはあまり興味がないようだったしな。」
「本当に、無欲というのか、危なっかしいというのか。まぁグラニット卿がいらっしゃって安心ですけどね。」
「ほんと、グラニット卿には今後もジェマの手綱を取っていただこう。妃も、ルビーの原石や紫水晶で装飾品を作るのであれば、似合うデザインをゆっくり考えるがよい。」
「ええ、あれだけ大きな美しい原石はどこにもありません。ゆっくり最高のものを作らせますわ。」
「今後、あの子のスキル『石好き』は今後どんなものを見つけてくれるのか、楽しみであり少々怖くもあるな。鋼の製造方法を隣国からスパイではなく我が国独自で見つけたと発表できるようにしないとな。宰相も役人もかなり忙しくなるな。宰相、よろしく頼むぞ。」
「は、承知いたしました。ただ、鋼は国庫を潤わすものとなりますが、扱いは難しいです。隣国とのこともありますので、外務大臣と相談して進めて参ります。」
王と王妃、そして頼りになる宰相は3人で顔を見合わせ微笑むと困難だが国が富めるスタートラインだ。少々貧乏な小さな国だ。特産物らしいものもなかったが、鏡に鋼にステンレスにガラスに色水晶と外に出せる特産物がずらりと出来そうな予感に胸を震わせた。たった一人の少女の『石好き』という変わったスキルがこの国を豊かな国に変える瞬間だ。
少女に作ってもらった王宮用の針100本を王宮お針子たちに使ってもらって鉄の針とどう違うのか確かめてもらおう。この針があっと言う間に王宮中のお針子を虜にするのはもう少し先のお話。




