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鉱物好物  作者: ヒロ
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 こんな風に夏を過ごしていると、1台の馬車が家にやってきた。

 オズワルト様とエドリック様が帰られて2週間目のことだった。


「ヴェルナー様とアシュクロフト様からご紹介状をいただいてきました。王都の白銀商会より参りましたマティアスと申します。」


「ようこそお越し下さいました。マティアス様、このような田舎まで足を運んでいただき感謝いたします。ヴェルナー様とアシュクロフト様からはお話は伺っています。」


「いえいえ、グラニット男爵領の箱庭テラリウムのお話は王都でも耳にしております。」


 玄関でのお話の後、応接間に行かれたので、わたしはここまでしか聞いていないけど、今まで作ってきた作品を全部お見せしたとか。スワロフスキー風のカットは絶賛されたし、守護石のアミュレットは是非売って欲しいと懇願されたそうだ。


 箱庭テラリウムは定期的に購入してくださることになったそうだ。

 スワロフスキー風のカットは使用料さえ払ってもらえれば、王都の職人さんが作っても構わないことにした。今後わたし1人じゃ対応できないだろうとお父様が判断された。あのカットは村の職人では難しいと断られたものね。王都の職人なら頑張れるだろう。


 磁器については完成品ではなく、白い粘土や石の粉、水晶の粉を売ることにした。水晶の粉は形が悪いものを優先に粉にしたものを村の陶工モーリスに渡しているのと同じものを、とりあえずひと樽渡すことにした。王都の陶工がモーリスのところに弟子入りするかもしれないとか。うちの技術だけが搾取されないように、きちんと契約した。


 蒸留器と精油についても、ゴンゾさんときちんと契約して、精油を作りたい他の領地に売ることにした。

 オズワルト様とエドリック様の紹介だけのことはある。田舎の男爵領だからといって、ずさんな対応ではなく、対等にうちが損をしないように契約をしてくれているようだ。


 わたししか作れないものに関しては、水晶で草花を閉じ込めた栞や、箱庭テラリウム用の水晶の器などは、貴重品として少量高価に売るそうだ。箱庭テラリウムを今まで、2,000ノルで売っていたと聞いて、絶叫されていた。水晶の器だけでも1万ノルは取らなければおかしいという話だった。


 いや、薄いからそんなにたくさん水晶は使っていないんだけどね。作れる人がいなければ、高くなっても仕方がないそうだ。

 まぁそうだよね。確かにスキルだよりだものね。いずれ、ガラスの技術力があがれば同じものを作れるようになるかもしれないけど、今のガラスの技術であそこまで薄く透明に作ることは不可能なんだそうだ。


 更に草花を密閉して栞にするなんて画期的で見たことがない技術だそうで、安く売るのは禁止されてしまった。


 あの栞は閉じ込める花によっては、高級品で扱われるだろうとのこと。いや、ミントやカモミールを入れただけなのに。そんなに高級品になるとは思っていなかったよ。 


 マティアスさんが、今後栞にしたい花を持ち込んでくるらしい。薔薇とかが増えるんだろうか。わたしはシダでも可愛いと思うんだけどね。


 マティアスさんとお父様は山ほど契約書を結び、マティアスさんは山ほど商品を仕入れて王都に戻られた。


 村の子どもやおばちゃんたちにも苔やシダの採取のお手伝いやカモミールの乾燥など手伝ってもらった。


 苔やシダは1か所でまとめて取りすぎないようにとお願いしているせいで、初期に取った場所からは、また増えてきていると聞く。村中山ほど苔もシダもあるけれど、根こそぎなくなってしまったら困るものね。広大な山も森もあるからぜんぜん大丈夫と村の子どもらは言うけど、枯渇したら増やすのは大変なんだからね。勝手に増えていくじゃないかと言われても、そうじゃないんだよと、約束は守ってもらう。


 子ども達はどこで採っても一緒だし、お小遣いが増えることは大歓迎なので、わざと約束を破ることは無いようだ。でも、気をつけてね。くれぐれも1か所で根こそぎ採取しちゃダメ!


 そうすれば自然と苔やシダはまた増えてくるからね。自然破壊はダメ!村の子ども達はそこら中に勝手に生えている苔やシダに価値を見出していないけど、この村だから生えているんだよ。町にはないんだからね!ぜいぜい。わたしの剣幕に村の子ども達は全員頷いてくれた。


 一度村の子ども達も交代で町に遊びに行ってもいいかもしれない。わたしもその時は一緒に町に行ってみたい。


 お父様に聞けば、リーテおばちゃまのいらっしゃる隣の領の町は馬車で半日なので、行こうと思えばすぐに行けるそうだ。

 お小遣いも渡しているし、一度みんなと行ってみたいな。


 オズワルト様とマティアス様のお陰で、わたしのお小遣いもそこそこ貯まったし、村の子ども達もお小遣いそこそこ貯まったと思う。

 お父様にお願いしてみよう。


「お父様、お願いがあります。」


「何だい?ジェマ。」


「村の子ども達と一緒にリーテおばちゃまの町へ一度遊びに行きたいのです。」


「んー。そうだね。うちの野菜を売りに行く時ならいいかな。うちの馬車と荷馬車で子どもは4人ぐらいしか乗せられないけど。」


「それでもいいです。村がどれだけ恵まれているのか知って欲しいの。」


「え?町が凄いのを知るためではなくて?」


「そう。村にしかないものを知って欲しいの。町に無いもの、村にしかないものは価値があるってわかって欲しいの。もちろん町でお小遣いを使う楽しみはあるけど。みんな服がぼろぼろになってきたから、買ってあげたいのです。」


「そうだね。わたしの村は素敵だと思う。町へ行ってなおかつ村が素敵だと思えるのはいいね。次野菜を売りに行くのは二日後だ。誰を連れていくのかオットーにちゃんと相談しなさい。服は町で買えるのは古着になると思うが古着でも高い、ジェマのお小遣いで全員の服は買えないだろう。無理しないように。」


「はい!わかりました!!」


 そうか、古着でも高いのか。蛍石と真鍮のアンティーク調の装飾品とか持っていって、売ろうか、それとも、あ、もしかして作れるかも。


 水晶に、お爺様からいただいた銀をコーティングして、真鍮で枠を作る。お、いいんじゃない。わたしの手のひらぐらいの大きさだけど、鏡が出来た。


 結構ちゃんと顔が映っている。わたし前世思い出して初めて自分の顔を見た気がする。結構美少女だな。イケメンのお父様と美人のお母様の子だもんね。当たり前か。


 前世は目立たず地味にすみっこでこっそり生きてきた庶民な顔だったので、ちょっとビビる。でも、じわじわ嬉しくなってくる。可愛く産んでもらって、これだけ大事にしてもらって、びくびくしていたら罰があたりそうだ。


 そうだ。この手鏡お婆様に見てもらおう。こんな小さな鏡だとあんまり価値がないかな。でも、貰った銀が少ないから大きいのを作るのはねー。


「お婆様!鏡つくったんです。見て下さい!」


「ジェマ!いつも元気のよいことは良いですが、もう少し淑女の礼儀を思い出して。」


「ごめんなさい。」


「で、鏡?青銅でも磨いたのですか?」


「いえ、水晶に銀をコーティングしたのです。小さいけど、これです!これ売れますか?」


「まぁ。まぁ。まぁ。これは。鏡?こんなに良く見える?!ジェマ、これほどよく見える鏡は見たことがありません。これは献上しなくてはならないでしょう。」


「え!?こんなに小さいのに?」


「大きさではなく、これだけ顔を映せることが問題なのです。驚くほど美しく顔が映ります。これは少し大きく作ることもできるのかしら?」


「お爺様から銀をもう少しいただければ、水晶と銀と真鍮で作れます。」


「まぁそうなのね。フェルナンと相談しなくては。オットーもいるわね。」


 お婆様が少し悩まし気な顔をされている。悪いことしちゃったのかな。子どもの手のひらサイズの鏡なら、前世100均の鏡より小さいのに。 


 お婆様の侍女のエレーヌがお爺様とオットーを呼びに行く。


「グリーどうした?」


「奥様お呼びでしょうか。」


「あなたたち、これをご覧なさい。」


 お婆様が、わたしが作った小さな鏡をお爺様とオットーに手渡した。お爺様の手に入ると、鏡は余計小さく見える。


「な、これは。鏡か!」


「なんと美しい。これほどのものは見たことがありません。」


 え、本当にないの?


「王都の奥方様たちがご覧になれば、きっと騒ぎになりますわ。」


 オットーも珍しく目を細めてシブイお顔です。


「ここまで鮮明に映るとは。今までの鏡とはまるで別物です。」


「ジェマ、これは鏡だが、鏡じゃない。水晶、銅、そして銀か。」


「銀鉱脈の報告はまだ王宮に上げておりません。」


「うむ。ゴンゾに依頼して銀のインゴットにしてもらっている最中だな。」


 お爺様はしばらく黙った後、


「ヴェルナー様に連絡する。」


「やはり献上されるのですね。」


「ああ、銀鉱脈の件も合わせて、正式に王宮に報告する。」


「お爺様、銀は樽一つ分ぐらいしか取れませんよ。」


「田舎領地が銀の鉱脈を隠していたと思われたら、余計な疑いを招く。隠して利益を得ようとしたと思われてはならぬ。銀は半分を献上する。」


「え、半分も!」


「ジェマ、男爵家が銀を抱えるより、王家から信頼を得る方がはるかに価値がある。」


 お爺様は静かに真顔だ。そういうものか。政治はわからない。


「お嬢様、半分を惜しんで疑われるより、残り半分自由に使える方が良いのです。」


「それに、王宮は銀そのものより、この鏡に注目するだろう。ジェマのスキルを公表するしかない。聞いたこともない『石好き』というスキルが、ここまで化けるとは。」


 お爺様は苦笑しながら、頭を撫でてくれます。いつも撫でてくれるお爺様の大きな優しい手がすきだ。前世まったく縁がなかった優しさがここでは溢れていて溺れそうだ。


 お婆様から、もう少し大きな鏡は作れるのかと問われ、銀さえあれば大丈夫だと答えたところ、王宮へ献上する鏡は20センチ四方ぐらいのものにして欲しいと依頼された。

 真鍮の枠もアンティーク風に作るよ!


 水晶と銀を収納から出して水晶を20 センチ四方の板にしてコーティングする。それに真鍮でアンティーク風に飾ってみる。物語に出てきそうな感じに出来た。素敵!出来た鏡をお婆様にお渡しする。


「ジェマ、なんて型破りな。そんなに簡単に鏡を作ってしまうなんて。それにしても美しいわ。王都で出ればたちまち評判になるわ。」


「銀はそれほど無いから王都で売るのは王宮で献上した時の感触次第だな。」


 お爺様もお婆様から手渡しされた出来たばかりの鏡を見てため息をつかれる。いや、ほんと、ただの思い付きで、ちょっと売れたらいいなと思って作った鏡がこんな騒動になるなんて・・・。


 オズワルト様にはすぐに連絡をし、銀が樽一つ分ぐらい見つかったこと、その半分を献上すること、その銀で鏡を作ったので、こちらも献上したいと報告をしたところ、すぐに送って欲しいと返事が来たので、護衛とお爺様とハンスが王都に行くことになった。


 お爺様お年なのに、年に何回も王都に行かせてしまって、ごめんなさい。鉱脈の新規発見は結構大変なんだとしみじみ自覚したので、金の鉱脈は安易に探索しないようにします!!



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