26
広場の横の空き地のボーリングは日に日に遊ぶ人が増えてきたので、もう1レーン増やしてみた。
泥のついた足でレーンを歩くと、ボールを投げた時に障害になるとかわかったら、汚れた靴でレーンに乗らないとか共通ルールが出来ていたり、ボールは重いものから軽いものまで4種類作ったんだけど、それぞれ好きなものを使うようになったとか。
使っているうちにいろいろお約束ができたりしていた。
遊ぶ人が増えたので、地面にスコアを書いてメモする子が出てきたり、1回目の倒れたピンを素早くどけるルールも浸透してきた。誰が勝つか賭け事をするおじさんがいたりで、村の娯楽として定着してきた。
子ども用の短くて小さなレーンも少し離れたところに作ったら、小さな子が喜んでくれた。もちろん、ティオとネオにも遊んでもらった。
軽くて小さなボールでも倒れるピンを作っては改修し良い感じになったよ。
村には空き地が多い。長閑な田舎なのだ。だからだろう。東西南北のそれぞれの集落の代表が来て、中央の領主館の前の空き地だけではなく、それぞれの空き地にもボーリングを設置して欲しいと嘆願書が届いてしまった。
これも福利厚生なのかな。お父様はしっかり仕事をした後ならば良いという約束をして、それぞれの空き地にボーリングのレーンを2個ずつ作ることにした。ピンとかレーンとかボールは北の鉱山の石だ。お金はかかっていない、必要なのはわたしの魔力だけだ。ただ、毎日暑いので、一日一か所ずつだ。
各集落に大人用を2レーンと子ども用1レーンを設置して無事に全部終了。草ぼうぼうの空き地も、皆が草刈りして前世のゲートボール広場みたいな感じになっている。
老いも若きも仕事の後に集まって、わいわいしている。夏は日が長い。夕方の少し涼しくなったころから楽しんでいる。
ただし、暗くなったら出来ない。夜に明るくしたら虫もいっぱい来るし。自然と解散できて良い感じだ。
収穫祭では、中央広場横の最初のボーリングレーンで大会をするということになっている。東西南北の各集落で選抜された人が出てくることになった。
和やかに楽しもうと思っていたのに、なんだか違う。でも、楽しんでくれているからいいのか。
そうだ、優勝者に優勝メダルでも作ろうか。
真鍮を水晶でコーティングしてぴかぴかで、ああ、悪乗りしてしまいそうだ。フィーナに頼んでリボンをつけてもらった。オリンピックの入賞者みたいに首から下げられるようにしてみた。2位は銀で、3位は銅がいいな。2位の銀色をどうしよう。1位は真鍮に水晶のコーティングで良いし、3位の銅もある。2位の銀だけがないな。探すか。
銀メダルを作る分だけでいいんだけどな。
久しぶりにスキルの探索を使う。毎日のようにスキルを使っているせいか、前よりスキルが成長しているのか、探索範囲が広くなっている気がする。
それに銀を限定して探索するのは初めてだ。領地にあるといいな。
お、反応している、銅鉱脈の方角?かすかだけど反応しているね。前は見落としたのか、スキルが成長したから、わかるようになったのかもしれないね。
お爺様にお願いして銅鉱脈に連れていってもらおう。
鉱山の管理をしているお爺様に銅鉱脈の北の廃坑だった場所に連れてきてもらった。
「ジェマ。今度は何があるのだ?」
「んー、お爺様、こっちの方向ですね。銅の出る場所からちょっとこっちの方、少しだけですが、銀が採れそうです。」
「な、何!銀が!」
「お爺様、興奮しないでください。ほんの少しです。樽1個分ぐらいかな。」
「おお、それでも銀だ。一部を王宮へ献上せねばならぬな。」
「えー。献上ですか?樽1個分しかなくても?」
「ああ、銀は装飾品にも使われるが、毒対応に食器に使われることも多い。硬貨にも使われる。使いどころが多いのに、国の銀鉱脈はそれほど多くないからな。少しでも報告義務があるのだ。」
うむ。じゃ、たくさん貰えないね。2位のメダルは真鍮に銀を薄くコーティングするぐらいにしよう。
「お爺様、少しだけ銀を下さい。メダルにコーティングするだけなので、銀貨1枚分ぐらいで良いです。」
「ああ、それぐらいなら良いな。後はゴンゾに任せよう。ジェマ、他はもう無いな?」
「ああ、お爺様、わたしのスキルは春に授与されてから使っているうちに成長しています。春に銅鉱脈を見つけた時にはわからなかった銀を見つけることができたのもスキルの成長のお陰です。だから、今後もっと成長したら、他の貴金属も見つけられるかもしれません。」
「そうなのか!はは。それは楽しみだな。ジェマが成長するのを待っているよ。」
お爺様が頭を撫でながら笑ってくれる。温かい気持ちのまま、銀の含まれている岩盤を切り取り、銀を抽出する。収納していた真鍮でメダルを作り、銀でコーティングしていく。ヨシ!銀メダルができた!切り取った岩盤は思ったより銀が含有されていたので、後数年分銀メダルを作れそうだ。お爺様にそれぐらいなら良いと許可された。
「おお、そのメダルは、なかなか良いものだな。何に使うのだ?」
「お爺様、これは収穫祭のボーリング大会の入賞者に渡すのです。」
「なんと。ボーリングとは最近村で流行っているボールを転がすものか。あれは皆、楽しそうだな。わしも今度参加してみようか。」
「それじゃ、お爺様が優勝しちゃうじゃないですか!」
「ははは。ジェマはわしが優勝すると困るのか?」
「だって、領主が主催しているのに、領主関係者が優勝しちゃうと村人に悪くないですか?」
「ははは。ジェマ、わしが参加しても優勝しても、村人に優勝は譲るぞ。それに、まだ一度もやったことが無いボーリング、わしが勝つかどうかもわからんしな。」
いや、お爺様のパワーなら優勝してしまいそうだ。
豪快に笑うお爺様と山を下り、お爺様はハンスと一緒にゴンゾさんに銀について相談しにいかれた。わたしはリッシャと一緒に家に帰った。
途中広場の横のボーリングレーンを見たけれど、結構賑わっていた。まさか異世界でボーリングを流行らせてしまうとは思っていなかったけど、村人にもわかりやすいルールで馴染んでくれて良かったと思う。今日は銀メダルも出来たしとても嬉しい。遊んでくれている人はメダル喜んでくれるかな。




