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王都から片道5日かかる長閑な村だ。オズワルト様がお友達にどう仕掛けたのかわからないまま夏真っ最中。
抜けるような青空、白い雲、土の匂いがむんむんする。
出来立てのトウモロコシを茹でてもらい、お昼ご飯にし、西の川で水遊びをし、ミントの精油にアルノーおじさんのところで譲ってもらった蒸留して酒精の強くなったアルコールを混ぜて使う。真鍮で小さな霧吹きのようなものを作って、シュッシュとミントの虫よけを使っている。夏にはミントがいいねー。お爺様にもミントの虫よけを差し上げた。鉱山の見回りの時に使われるそうだ。
部屋では豚の蚊遣りから蚊取り線香の煙がたなびく。
夏にしか咲かない花を水晶に閉じ込め栞を作り、村の主道路はすべて石畳を敷いた。石畳があれば台車とか使いやすくない?でも、台車はわたしのスキルでは作れないので、保留。
蛍石や翡翠、水晶を小さなビーズにして、この間のお礼として村のおばちゃんたちにあげたところ、こんな綺麗なものをいただけて嬉しいとかえってきた。良かった。
お祭り用の服に飾り付けするのだそうだ。
お祭りは収穫祭だから秋だ。前世毒親育ちでお祭りに行ったことなんて無かった。独立してからも中のいい家族連れを見たくなくて1人で行くことなかったものね。
今回家族みんな仲が良い。村人とも距離は近い。楽しいお祭りになるだろう。
お祭りに何かできることはないだろうか。
あ!ボーリングが作れるかも。レーンもピンもボールも石で作れそう。ピンを立てたりするのは手動になりそうだけどね。
お父様にご相談だー。
村でそれもお祭りで遊ぶものだから小型にしよう。場所は、お祭りをする広場の隣がいいかな。ちょうど空き地になっている草ぼうぼうのところをお父様にお借りすることにした。そういえば、広場は領主館の前のただっ拾い空き地ともいえる。こっちもお父様に頼んで少し石畳で綺麗にしたい。可愛い野花は少し移動させよう。
広場の真ん中の中心部から石畳を置いていく。主要な道に敷いた石畳の三分の1程度の小さな石にした。レンガの半分ぐらいだ。円形の広場だから円にするには小さい方がやりやすい。ベンチも作ろうか。ちょっと休憩の出来る場所になるといいな。ベンチは青銅にしようかな。前世ちょっとおしゃれな公園に置いてあった、透かし模様の入ったものだ。お爺様に青銅をちょっと貰いに行こう。銅鉱脈を見つけた功績として、欲しい時にいつでも銅を使っても良いと約束してあるのだ。使い放題!といっても、真鍮の装飾品用や卵焼き器ぐらいにしか使っていなかったから、気前よく青銅のインゴットをいただけた。
中央の石畳を敷いたところに4つベンチを背中合わせに置いてみる。ここから少しずつ広場に石畳を広げていく。もちろん、計算した微妙な隙間もあって、その隙間から野草が残っているというのは狙った上の効果だ。町の広場じゃなくて、村の広場だもの、少し野草が残っていて、野花が咲いているところがいい。
広場の隣もボーリングのレーンを作ってみる。前世の記憶を思い出してピンとボールも作る。リッシャと並べてボールを転がしてお試ししてみる。
「ねぇリッシャどう?楽しい?」
「ええ、これいいですね。ボールが重くて思ったよりスピードが出て、ぴんにあたるとスコント倒れるのが面白いです。」
「リッシャだと倒れるのよね。わたしは当たっても倒れないのよ。」
「お嬢様のボールは勢いもないですからね。」
と笑われてしまった。
ああ、そうか前世のピンは石ではなかったかも。中身を空洞にしてみようか。もちろんすべて割れないように硬化させているけど、再度加工することはできる。便利なスキルだ。
ピンの中を空洞にして、再度並べてみる。
わたしが先に転がしてみる。7歳はまだまだ非力。軽いボールにする。
ボールがレーンの上を滑っていって、ピンに当たる。ぺこぺことピンが二つ三つ倒れる。うんこんなものか。でも、さっきは1個も倒れなかったからいい感じか。
ちなみに軽くなったピンをリッシャは全部倒して万歳していた。
それを遠目で見ていた村の子どもたちと若者のお兄さんが恐る恐る近寄ってきた。
「ジェマ様、それはなんだ?石のボールで立っているものを倒すのか?」
「そう、ここに10本のピンが立っているから、2回投げて、何本倒したかを競うゲームだよ。」
そういうと、おおっと歓声があがる。やりたいのか?やってみる?
村の子どもたちと若者で、全員で10人ぐらいが交代でボールを投げてみる。子どもたちが率先してピンを並べなおしてくれる。
「1回目投げて、倒れたピンはよけて、そのまま2回目投げるのよ。1回で全部倒せた人が一番優秀になるの。倒れた数で競うのよ。」
レーンもピンもボールも硬化させているから、どんな投げ方でも壊れたりしない。
球技というのか、こういう遊びは村には無かったからか、食いつきが良い。
畑仕事を終えたお父様が賑わっている空き地に顔を出された。
「おお、これかジェマがやりたかったことは、どうだ。上手くいっているか?」
「あ、お父様!みんな楽しく遊べているみたいです。一番多く倒した人が勝ちっていうゲームです。2回投げるので、いい足し算の訓練にもなっています。みんな必死です。」
わたしは笑って応えると、お父様はじっとボーリングで遊んでいる村の子どもたちを見ていた。歓声をあげて交代で投げている姿は本当に楽しそうだ。
「さぁみんな、もうご飯の時間になるぞ。今日はおしまい。ここで遊んでも良いが、仕事を済ませてからという約束を守ってくれ。子ども達も勉強やお手伝いをした後にするんだぞ。約束を破ったものは、今後参加できないようにするぞ。」
お父様は日頃優しいけど、真面目で仕事熱心だから、遊びだけを容認するわけにはいかない。
「「「はい、領主様仕事が終わってから遊ぶことにします!!」」」
みんなの声も一致したので、お父様と一緒に家に帰ることにした。
「ジェマ、広場も整備してくれているんだね。真ん中の方は町の広場みたいになってきたね。あのベンチも素敵だよ。」
「ええ、お父様、収穫祭までには町の広場に負けないようにします!」
「あんまり無理はしないように。毎日暑いからね。」
「はい!」
お父様と手を繋いで家に向かう。こんな穏やかで優しい時間が涙が出るぐらい嬉しい。
7歳のジェマの当たり前が40歳のわたしの宝物の時間だ。この幸せな時間が続きますように。優しい家族を、大事な村人と幸せに生きていければいいな。食事とか衣服とか娯楽とかは前世の方がもちろん充実していたけど、前には無かったものがここにはたくさん存在している。素敵なスキルもいただけた。明日も広場の石畳を増やそう。そして小さな子ども用のボーリングのレーンも作ろうかな。ティオやネオでも一緒に遊べるようにしたい、2人のお姉ちゃんですから。




