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鉱物好物  作者: ヒロ
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数日後小型の蒸留器が完成して、ゴンゾさんが設置しに来てくれた。使い方もちゃんと聞いておく。7歳のわたしが主で作るけど、説明はお父様とお母様も一緒に聞いてくださった。

そう難しいものではなかったけど、火を使う時はリッシャにお願いするようにと約束をした。


ネオと約束どおり、ミントを採り行く。ティオも一緒だ。いつものメンバーで西の川に向かう。河原の一部に埋め尽くされるぐらいミントが生えているのだ。


ぷちぷちと葉っぱを採っていく。これもずるはできない仕事。でも楽しい。ミントはいい香りがするしね。

ティオとネオもぷちぷち採ってくれている。

大理石で作った磁器の器に緑の葉っぱが綺麗。精油は生の葉っぱを大量に使って少ししか取れないと聞くので、フィーナやリッシャにも手伝ってもらう。


自分の夏用なので、これぐらいあれば大丈夫かな。

山盛りのミントの葉っぱに、ティオもネオも大満足。お手伝いありがとう。何かお礼がしたいな。このミントを記念にしようか。収納から水晶を少し出して、ミントの葉っぱを水晶で挟んで閉じ込める。薄く硬く小さなメダルのようにしてみた。


2人に渡すと物凄く喜んで貰えた。硬化したから、何しても壊れないよ!


「お嬢様。綺麗ですね。これ細長く作れば栞になりますね。」


「フィーナ欲しいの?中に入れるのはミントで良い?それとも白い花とか入れてみる?」


「まぁお嬢様作っていただけるのであれば、ミントも素敵ですが、こちらの小さな白い花を一緒に入れていただけますか?」


フィーナは河原に咲いている白い花を摘んでくれた。これもいい香りがする。家に帰ってお婆様に鑑定してもらおう。前世飲んだことがあるカモミールに似ている。

では、カモミールもどきの白い花とミントを上手く調和させて、栞のような薄い細長い水晶の板を造ってみた。栞にするなら上にリボンをつけてもいいかもと穴もあけておいた。透明で花が閉じ込められていて綺麗だ。思ったより上手にできた。


「まぁ!ありがとうございます。壊れてしまいそうなぐらい繊細で綺麗です。」


「硬化のスキルを使ったから、絶対に割れたりしないよ。大丈夫!」


「そうなんですか。でも大切に使わせていただきます。」


「お嬢様、それ、奥様と旦那様にもお造りになってお渡しした方が良いと思います。」


リッシャに言われて、河原の綺麗な草花を閉じ込めた栞を何枚か作ることにした。

これはこれで良いかもしれない。水晶に挟んで密閉しているから色も変わらないだろう。

『俺は本は読まないけど、綺麗だからクレソンを入れてくれ』とリッシャに頼まれてクレソン入りも作ってみた。これはこれでありなのかもしれない。


家に帰って、カモミールもどきをお婆様に見ていただいたた、本当にカモミールだった。お婆様も河原にカモミールが自生しているのをご存じなかったようだ。カモミールは乾燥させてお茶にすることになった。村の子ども達へのお小遣い案件だ。

カモミールのお茶の効能はリラックスだ。寝る前に飲むと良いと前世で時々飲んでいたな。

ハチミツを入れても美味しいんだよね。ハチミツ欲しいな。ハチミツに思いをはせていると、お婆様から栞について感想があった。


「ジェマ、この栞は良いですね。とても繊細で美しいです。それでいて硬化のスキルで割れないと素晴らしいです。小さな雑草のような草花でも、こうして閉じ込めてしまえば美しいものですね。大切に使わせていただきます。リーテお義姉様にも送ってあげたいので、またいくつか造ってもらえるかしら。」


「はい!お婆様。お造りしますね。ご希望のお花とかありますか?」


「そうね。貴族なら薔薇でも良いのだけど、村で採れるカモミールは素朴で可愛くてこの村らしくて良いわ。薔薇がお好きならば、また次回分で造りましょう。」


村の子ども達が、今度はカモミールだと採取してくれる。綺麗なものをいくつか栞にしてしまう。残りは乾燥させてお茶にしてみた。

ハチミツも村の名人に頼んだら取ってきてくれたので(もちろんお代は払ったよ)、カモミールティーに入れて飲んでみた。


懐かしい味がした。でも、産地直送なので、前世で飲んだより味が濃くてよりリラックスできるような気がした。

家族にも好評だった。あ、ティオとネオはちょっと苦手にしていた。薄めに入れてハチミツを多めにいれたら気に入って飲んでくれた。お婆様も気に入ってくださって、時々昼間のお茶の時間にも入れていると聞いた。見つけて良かった。


ミントの精油を作ったり、村の主要な道に石畳を敷いていったり、ティオとネオと遊んだりして夏を迎えた時、懐かしい顔の人が村を訪れた。オズワルト様とエドリック様だ。

鉱山はあれから増えていないけど、何があったのだろう。


「お久しぶりです。前回はありがとうございました。」


「ヴェルナー様、アシュクロフト様、春に来ていただいて以来ですが、何かあったのでしょうか?」


「いえ、今回は休暇を兼ねているのです。箱庭テラリウムが王都で人気が出てきて、手に入らないのです。そこで出所を調べたところ、こちらだと聞いて、何人かに頼まれたのもあって2人でやってきたのです。」


「箱庭テラリウムだけのためですか?」


「いえ、それだけじゃないです。この村の素朴さ温かさに前回癒されまして、お土産のチーズと燻製肉、ベリーも大変美味しかったので、せっかくなら夏の休暇の数日をこちらで過ごそうかと思いまして。」


「そうなんですね。では、ごゆっくりしてください。客室にご案内いたします。」


ガタイの良いにこにこ顔のオズワルト様は前よりもっとにこにこされている。ひょろっとしていたエドリック様は相変わらずひょろっとされていたけど、今回は仕事じゃないのか、少し緊張が解けていて、少し笑顔も見ることができた。前回ぜんぜん笑われないから少し怖い人かと思っていた。


箱庭テラリウムは水晶の器を何個か用意して、好きなものを選んでもらった。その後は、せっかくだからと、お母様とリッシャが護衛に実際の苔や小さなシダが生えている山や森にも、ご案内して、自分で欲しいものを採取してもらった。今まで見たことが無い苔とシダにテンションが凄かったらしい。苔の種類も多いからね。気に入ったのが見つかったのなら良かった。その後、黒曜石や大理石に、小さな真鍮のきのこなどは家で配置してもらった。ああだこうだと悩まれて満足いくテラリウムを作り上げられた。


「いや、これ面白いです。自分で作るのがこんなに面白いとは。それに出来上がるとかなりの満足感があり、出来上がったものを見ていると癒されます。いいですね。流行っているわけがわかりました。」


「ほんと、いいです。これ。気に入りました。」


オズワルト様は好奇心の高い人なのか、ティオとネオが遊んでいるミントの水晶で閉じ込めたメダルや栞、2人が身に着けている翡翠の勾玉のアミュレット、部屋に置かれている蚊取り線香、スワロフスキーのサンキャッチャー、アンティーク調の装飾品、ミントの精油までにも反応する。


「これは素晴らしい!是非持ち帰りたいです。おいくつ買えますか?これもいいです。わたしどもが報告した水晶や銅鉱脈がこんな形で消費されているとは想像もしていなかったです。いや、失礼ですが、田舎の男爵領と見くびっていたところはあります。でも、これらは王都でも十分通用しますよ。特に栞。これはいいです。お土産にぴったりです。薄くて花が閉じ込められていて、綺麗で壊れないとは素晴らしい。また、このサンキャッチャーと呼ばれるものの、水晶のカットは素晴らしい。ドレスにつけてもおかしくないぐらいの輝きです。」


「そんなにたくさん、お持ち帰れますか?」


「大丈夫です。友達たちに箱庭テラリウムを持ち帰るために、魔法袋を持ってきていますから。」


さすが王宮の役人さんだ。魔法袋持っているんだ。そしてとんでもないことを続けておっしゃる。


「あるだけ全部持って帰りたいです。」


大変良い笑顔でそうおっしゃる。あるだけって、いや。作れるよ。たくさん。今回の主は箱庭テラリウムだ。これはお友達の分も含めて30セット持って帰りたいのだとか。持ってかえったらあっと言う間にさばけるだろうとのこと。

他はお爺様とお父様と相談して、各10個ずつとした。本当に売れるんだろうか。田舎でこっそりひっそり自分だけが楽しむために作り始めたものなのに。


数日滞在されるということで、村の子どもや今回は大人も動員して、土に苔に小さなシダ、カモミールにミント、除虫菊を採取してきてもらう。

水晶の洞窟にリッシャと出かけ、端っこの太めの1本も採掘し、河原の黒曜石に大理石、翡翠の原石も拾ってきた。


せっせと作っていたら、食事で出した磁器のお皿に目が留まったそうだ。こんな美しい器は見たことがないと。これはなんだと言われ、石で作ったお皿だと紹介する。

最近ようやくモーリスとゴンゾの協力で村で磁器が作られるようになったので、家でも使うようになったのだ。もう少し安定して作れるようになったら、リーテおばちゃまの伝手でも使おうかとか言っていたのだけど、先にこっちだった。


「これは、村で今試行してもらって作っているのですが、まだ真っ白のものしか作れないのです。」


「いや、この白が良い。気品がある。これはどのぐらいありますか?」


「予備は小皿が数枚というところです。焼き物なので、すぐに出来ないので申し訳ありません。」


「また、出来たら教えて欲しい。これも欲しがるものは多いと思う。」


え?そうなの?磁器って好まれるの?確かに白くて綺麗でわたしは好きだけど。ニコニコ顔のオズワルト様は油断のならないお方だと思うようになってきた。さすが王宮のお役人だ。オズワルト様はオズワルト様で、この男爵領侮れないなと思っていたらしい。


「他にも無いですか?この際だから全部見せて下さい。」


と笑顔で圧をかけてこられたので、香炉をお見せした。お爺様が山歩きして探してきた良い香りの木を焚いてみたところ、ほうと感嘆の声があがる。


「これは美しいだけではなく、森の中にいるような香りですね。とても良い。」


後は、蛍石のビーズや、カモミールティー。卵焼き器に、蒸留器に精油ぐらいかな。


「なんで、これだけ王都で見たことがないような凄いものがあって、村だけで消費しているのですか?どうして売りに出されないんですか?!」


え。どうしてと言われても、前世記憶が蘇ってからまだ数か月。作るのが楽しくて売るところまで考えていなかった。

お婆様はリーテおばちゃまの伝手で少しお譲りしたけれど、商売にはしていない。田舎の男爵領だ。娘がスキルで作ってみたものを、大々的に売るんだとすぐに思いつかないのは当然だ。

商売の伝手も経験も何もないからねー。


そんなことをお父様がお貴族様的にお伝えすると、


「勿体ない。非常に勿体ないです。これは王都で売るべきです。心当たりのある商人をひとり来させます。彼は真面目で丁寧な仕事をするので男爵領に損をさせることはないはずです。」


「そこまでしていただかなくても。」


「いえ、グラニット男爵、これは国の損失にもなります。これだけの品、王都の職人が見れば己の技術力の限り再現しようとレベルが上がります。そうなれば王都全体のレベルがあがるのです。この水晶のカット一つで一生食べていけますよ。」


そんなもんなんだ。こっちの世界の技術は思ったより低いのか、それともわたしの前世のレベルが高いのか。スワロフスキー風のカットで一生食べていけるだなんて。わたし貴族やめても大丈夫かもしれないんだな。とそんなこと考えながら、今まで作った作品を各10個作るため、お父様に頼んで村の細工師さんを呼んで、翡翠の勾玉のアミュレットの組み立てをお願いした。

勾玉もビーズも作るから、紐で組み立てて欲しい。あと、サンキャッチャーも紐を通して欲しい。スキルの加工はあっと言う間にできるけど、その後の作業は手作業で時間がかかるのだ。1個2個ならいけるけど、10個になると、後箱庭テラリウムの水晶の器も、栞もメダルも、香炉も蚊遣り豚も作らないといけない。


精油はそんなに作れないから、ミントを小さな瓶に1個にしてもらった。

カモミールティーは村のおばちゃんたちにお願いした。


卵焼き器は卵焼きを食べていただき、やはり10個欲しいと言われたので、ゴンゾさんに頼んだ。

あと、石畳もばれているが、これは王都の方が技術があるので、今回は対象外にしてもらった。良かった。


オズワルト様とエドリック様滞在三日目ですべて揃ったのを、魔法袋に全部入れていく。曲者オズワルト様と、最初は無表情のエドリック様だったけど、田舎の長閑さに慣れた頃にはティオとネオと一緒に遊んでくれるまで打ち解けたので、お帰りにティオとネオが寂しがっていた。


「滞在感謝する。これで友人たちに恩を着せられそうです。あと、すべての商品は商業ギルドに登録しておきます。この仕事は滞在費の代わりにおまけでやっておきましょう。今後は商業ギルドを通じて口座でやりとりできるようになりますよ。ジェマ嬢、栞を20枚にしてくれてありがとう。これで妻や娘に喜んでもらえるよ。」


オズワルト様が最後までにこやかに帰られた。エドリック様がティオとネオに手を振ってくださった。忙しく慌ただしい三日間だった。村人にも感謝。


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