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おはようございます。めちゃくちゃいい天気!今日は西の川に遊びに行くという名目で前世好きだったクレソンを採取しにいきたい。
朝食を食べて、わたし、ティオとネオ、子守のフィーナ、そして護衛のリッシャで西の川に向かう。一応領主の子どもなので、この平和でのどかな村の中でも護衛は必要なのだ。ティオは大事な嫡男だしね。
ネオはリッシャに抱っこされながら、西の川に辿り着いた。
西の川は本当子どもの足首ぐらいまでしか水がない。ちょろちょろ流れる水がお日様に反射してきらきらしていて綺麗。丸くなった色とりどりの小石が河原を彩っている。ティオもネオも靴を脱いで水の中を歩きだした。フィーナとリッシャが隣でしっかり見張っている。
本当は弟たちと遊びたい。クレソンも採取したい。でも、自分のスキルも興味があるのだ。
わたしはスキルに注視する。さぁ使おう『鉱物の探索』んんんん。ん-。なんだ。ありとあらゆるところに反応している!そうか、地面から石から岩もすべて鉱物か。花崗岩、砂岩、頁岩、瑪瑙、碧玉、パイライト、黒曜石、玄武岩、大理石・・・。多い。多い。反応が多すぎるー。
じゃあ、対象をもう少し絞った方がいいのか。川と言えば翡翠!
『鉱物の探索:翡翠』お?おお?ある!反応がある!ごろごろあるよー。
少し歩く、探索はサーチ?レーダー?水に石を落としたら水の輪が広がっていくような感じかな。自分を中心に気配がひっかかるような気がする。この辺。
しゃがんで少し外側は白く見えるけどうっすら緑色が見える、たぶんこれだ。古代で王や指導者がこぞって欲しがったお守りの石。
翡翠は勾玉かな。
でも、こっちの世界勾玉って存在しているの?
持ち上げようとしたら、結構重い。『鉱物の運搬』『鉱物の収納』を使う。
よしっ、持ち上げた翡翠の原石をインベントリ(スキル『鉱物の収納』を選択すると使えるらしい)へ収納した。どうも鉱物しか運べないし、鉱物しかしまえないのが、本当残念!お試しにそばにあったクレソン入れてみようと思ったけど、拒絶されてしまった。ああ。
仕方がないので、クレソンはハンカチに包んで持って帰ることにした。翡翠の原石もゲットできたし、良い日になったね。家に帰ったら、マルタに頼んで、ベーコンとクレソンの炒め物を作ってもらおう。苦みがあまりなくて美味しいんだよねー。クレソンの少しさくっとした感じも好きだ。濃い緑の野菜を食べているという体に良さそうなところも好き。
せっせとクレソンを摘んでいると水遊びをしていたティオとネオも十分楽しんだようだ。
「姉さま。何しているんですか?」
ティオは不思議そうに、クレソンをぷちぷちしているわたしの手元を覗き込んでいる。
「クレソンを摘んでいるのよ。」
「その葉っぱがくれそん?なの?他の葉っぱとどう違うんですか?」
「ええ、クレソンは、葉っぱがちょっと丸くて、水の中に生えていて、ちぎったらちょっとピリッとした香りがあるのよ。そして美味しく食べることができるのよ!」
「姉さま凄い!」
ティオに褒められると凄く嬉しい。へへへ。
「ジェマお嬢様はクレソンをよくご存じで。」
「美味しいものはちゃんと覚えているんです!」
「はは、嬢ちゃんは食い意地張っているからな。」
リッシャがそう言うと、みんなも笑いだす、愛のある笑いなので許す。
大量のクレソンはフィーナと分けて持って帰ってきた。少しおねむになったネオはリッシャに抱かれたまま帰宅した。川に居た時間は、体感で1時間ぐらいかな。1人で行けるといいんだけどね。
マルタにベーコンと一緒に炒めて欲しいとクレソンを大量に渡し、部屋に戻った。
部屋では、インベントリから翡翠の原石を取り出す。一抱えはあるから、スキルの運搬を使って移動させる。そして作りたい勾玉の大きさに合わせて切り出す、それを手の平で握りこんで勾玉の形に加工すると粉も石の破片もでない。切り出した大きさがすべて勾玉に変化するみたいだ。不思議。面白い!それを研磨して、穴を開ける。
前世のパワーストーン屋さんで見たよりも緑が濃くていい感じだ。白が強い部分は丸いビーズに加工する。はは手で軽く握るだけでつるつるの丸いビーズがいくつも出来上がる。自分の魔力を使っているのだと聞くが、負担はまったくない。思い通りの形にできるのが面白くて変なテンションになっているからかもしれない。
ここまで作れたのなら、勾玉とビーズを繋ぐ紐が欲しい。お婆様のところへ行こう。
「お婆様!綺麗な紐が欲しいです!」
ばんっ!と扉を開けてしまった。ノック忘れたごめんなさい。7歳のジェマが主導を取ると待ってと思う間もなく体が動く。前世を思い出したけど、前世40歳だったけど、7歳のジェマのパワーは凄い。前世の自分には無かった素直でまっすぐな感情の発露に思わずどきどきしてしまう。ジェマは躊躇わない。常に自分の感情を優先してしまって、お婆様ごめん。でも人の顔色を考えずに動けるのって、自分じゃないみたいで、変な感じ。自分であって自分でないような、それでも悪くはない。
「まぁジェマ、レディが少しはしたないですよ、紐は何に使うのですか?」
淑女のお婆様に少し眉をひそませてしまったけど、怒ってはいらっしゃらないようだ。
「お婆様、この勾玉とビーズを繋いでお守りにしたいの。」
「まがたま?少しそれを貸してごらんなさい。」
お婆様に所望されて、翡翠の勾玉とビーズをお婆様に手渡した。お婆様はそれらをじっと見ている。あ、そうか、お婆様のスキルは鑑定だ。
「ジェマ、少しスキルを使ったわ。(ジェダイト:長寿・健康・繁栄・守護)と出ているわ。守護石なのかしら。効果が凄いわ。この石はどこで?」
翡翠の勾玉をにらむように見つめているお婆様。あ、あれ?そんな効果が?綺麗だから作ってみただけなんだけど。それに翡翠なのに、ジェダイト?こっちの世界ではジェダイトっていうのね。
「西の川で見つけてきました!とても綺麗な緑色なので、わたしのスキルで加工してみました。」
「ああ、そういえば、ジェマのスキルは『石好き』でしたわね。そのスキルでこれを?」
「はい!わたしのスキル、好きな石を探せるし、運搬できるし、収納できて、加工までできてしまったのです!」
「まぁまぁ。素敵なスキルね。この守護石に合う、紐はこれが良いかしら。」
お婆様が裁縫箱のようなところから、銀色の細い紐を出してくださった。綺麗。とても良い。
あ、お高いんじゃないだろうか。大丈夫?
「これぐらいレベルの高い守護石ならば、これぐらいの紐じゃないと釣り合わないからこれにしなさい。あと、この守護石はまだ作れるのかしら?」
「はい!お婆様。川から持って帰った翡翠は大きいので、家族全員の分は作れそうです。」
「あら、ひすい?ちょっと待って、『鑑定』(ジェダイト:翡翠と呼ぶ地方もある)まぁ、ジェマは物知りさんね。」
「お婆様、わたし石だけは鑑定できるのです。石しかできないんですけど・・・。」
「あら、そうだったの?鑑定は便利で素敵なスキルでわたくしも気に入っているのよ、ジェマも、そう、石だけでも良かったわね。」
にっこり微笑まれたお婆様から銀色の紐をいただき、その場でお婆様の裁縫箱のお道具もお借りして翡翠の勾玉でお守りを作ってみた。なかなかいい出来栄え。お守りになっても石だからだろうか、インベントリに収納できた。凄い。とりあえず今日は1個。自分の望む形に石を加工できるようなって、なんて素敵なスキルだろう。
「ジェマ、出来上がった?完成した守護石見せてちょうだい。」
お婆様が興味津々でわたしが紐を結んでいく手元を見ておられたけど、前世で作ったことがある組み紐で結んでみた翡翠のストラップのようなものを、インベントリから取り出して手渡した。
「まぁ。アミュレットね。(翡翠のアミュレット:長寿・健康・繁栄・守護)石が持っていた力はそのまま引き継がれているわ・・・あら強化されているわ。ジェマ凄いのを作ってしまったわね。」
お婆様がちょっと呆れたっていう表情をしている。褒めて下さったんだよね。
「今日はおしまいにして、さぁ食事に一緒に行きましょう。」
お婆様と食堂に行き、今日の成果のひとつ、クレソンとベーコンの炒め物を堪能する。美味しい。少し辛いところが子どもの舌にはぴりりと響くが懐かしいクレソンに喜びの方が大きい。
「あら、ジェマはクレソン食べられるようになったのね。今日は生じゃなくてベーコンと炒めているから辛みがましよね。いつもは生で食べるかスープに入れるかなのに、この組み合わせは食べたことがなかったけど、ベーコンとクレソンは合うわね。マルタ腕をあげたわね。」
お母様もクレソンのベーコン炒めは美味しいと思ったようだ。お爺様もお婆様もお父様も嬉しそうに食べていらっしゃる。やったね。
「クレソンはジェマが採ってきてくれたって聞いたよ。ありがとう。ジェマ。」
「採るのはとっても楽しかったの。美味しいからまた採ってくるね。」
ティオとネオも、クレソンとベーコン炒めをもくもくと食べている。油で炒めると辛さがましになるものね。2人も美味しそうに食べてくれて良かった。
「姉さま、次は僕も一緒に採りたいです。」
「ぼくもー。」
「ええ、一緒に採りに行きましょうね。春はクレソンの旬だからもうしばらくは美味しいクレソンが採れるわ。」
うちは貴族だけど小さな家だから本当のお貴族様のように小さな弟たちが子ども部屋でご飯を食べるのではなくて、2人も一緒に夕食が取れるのが嬉しい。美味しい顔をしている2人を見ていると嬉しくなる。お姉ちゃん頑張るよ。
「夕食の後に、ジェマがみんなに見せたいものがあるのよ。」
お婆様が話を振ってくれた。素敵に出来た翡翠のアミュレットをみんなに見てもらいたい。
「まぁそれは楽しみね。」
「そうか、ジェマが何かしでかしたのか。」
楽しそうな顔をしたお爺様が笑いながらそんなことを言う。
「お爺様、しでかしてはいませーん。」
「ははは。ジェマは可愛いのう。」
「お爺様ったら・・。」
「僕も姉さまの何か見たいです。」
「ぼくもー。」
「みんなに見てもらいたいの。この後応接室へ行ってもいい。」
「ああ、ジェマのとびっきりを見せてもらおうか。」
ご機嫌なまま、食堂の隣にある応接室に移動する。応接室は15畳ぐらいかな、床は石張りで大きな敷物が敷かれている。漆喰の壁に村の名人が作ったタペストリーが飾られている。春といえ、夜は少し冷えるので暖炉に熾火程度に火が入っている。ほんの少し換気のためか開けた窓から湿った土と若草の匂いが微かに流れてこんでいた。
お爺様は暖炉のそばの椅子に腰を下ろし、お婆様はその向かいに座り、お父様とお母様はちょっと期待したような目で長椅子に座っている。
ティオとネオも長椅子にちょこんと座って足をぶらぶらさせている。
みんなに目がジェマに集中している。7歳のジェマはもう我慢が出来ないようだ。
「これ、作ったの!」
テーブルの上に、翡翠のアミュレットをそっと置いた。
ろうそくの光を受けて、緑色の勾玉が輝いているように見える。
お爺様もお父様も近づいてまじまじ見ている。
「これは、ジェマが作ったのか。」
「今日、西の川で翡翠の原石を見つけてきて、後はわたしのスキルで作れました!」
「まぁジェマ素敵ね。変わった形をしているのね。」
「お母様、これは勾玉って言います。お守りなんです。」
お婆様がお爺様と何やら目配せをしている。
「ええ、既にわたくしが鑑定いたしましたわ。翡翠:ジェダイトのアミュレット:長寿・健康・繁栄・守護の効果がありますの。」
「翡翠のアミュレットというんだね、ただの石の飾りではなく守護石、長寿・健康・繁栄・守護の効果まで付いているなんて。」
「ジェマ、また、凄いのを作ってしまったな。」
「えへへ。」
「姉さま、とっても綺麗です。つるつるでぴかぴかで触ると石なのになんだか温かく感じます。」
「ねえたま、ぼくほしい!」
「ネオ、あげたいけど、まだみんなの分作っていないの。原石は大きいものだったから、きっと家族全員の分は作れると思うの、お婆様の銀の紐をもう少しいただくことになるんだけど、良いでしょうか。」
「あら、家族には全員分作るつもりなのね。良いでしょう。銀の紐はジェマに差し上げますわ。」
「お婆様ありがとうございます!」
「それにしても、ジェマの『石好き』スキルってこんなものまで作れるって凄いね。」
「思いどおりに、石が加工できるのが面白いです。明日は全員に作るね。」
「あんまり無理しないように。加工もジェマの魔力使っているだろう。魔力枯渇すると結構しんどくなるからね。」
そうなんだ。魔力枯渇危険!気をつけないとね。
「今日は初めて石を加工して無意識で魔力も使ったと思うから早く寝なさい。」
「はい。お父様。お爺様、お婆様、お母様もおやすみなさい。ティオ、ネオ、一緒に部屋に戻ろうね。」
「はい、姉さま、お部屋に行きましょう。ネオがもう眠たそうです。」
「ネオも一緒に部屋に戻ろうね。」
「あい。ねえたま。」
ティオとネオと手を繋ぎながら子供部屋に移動する、フィーナも後ろから着いてきてくれている。弟2人におやすみのキスをして自分の部屋に戻る。
フィーナが弟2人を寝支度をしている間、手の空いているお母様の侍女のリーゼがわたしの寝支度を手伝ってくれる。着替えとかお風呂とか。まだ1人で全部出来ないんだよね。
大人はまだ応接室でアルコールでも飲みながらゆっくりしているかも。
わたしはお風呂に入れてもらって、おやすみなさいだ。7歳の体は疲れるのが早いね。




