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少しずつうちの領地に収入が増えてきたのだろうか。
箱庭テラリウムは定期的リーテおばちゃまに渡ししているし、真鍮と蛍石の装飾品、水晶のサンキャッチャーや髪飾りも定期的にお婆様にお渡ししている。
でも、お金儲けしているような感じはしない。お貴族様はお金儲けをしないものなんだろうか。知人にお譲りしているだけなのかもしれない。
お父様はゴンゾさんに頼んでアルノーおじさんのところで蒸留器を作り上げたとお聞きした。良かった。
香炉はお爺様の関係先から少しずつ手渡されているようだ。月に1回、2回ぐらいお爺様に追加の注文が来るので、ティオとネオと一緒に西の川に行き、翡翠の原石を探しに行っている。西の川は前世の京都の鴨川みたいだなといつも思う。水は足首ぐらいまでしかないのに、川幅は広いのだ。だから石は探し放題。翡翠もごろごろ見つかる。本当知らない人にはただの川原なのに、わたしにとっては宝物の宝庫だよ。
あ、凄く小さいけど、金の粒を見つけた。砂金かな。スキルの探索が掠るぐらいの小ささだ。鑑定すると金と出た。
金は美しいし加工もしやすいしとても価値がある。でも、それだけに人を変える。人生を狂わせる魅力もある。さぁどうしよう。この見つけた砂金。
もう少ししばらくほっておこうか。
ここに砂金があるということは、川の上流に鉱脈がある可能性がある。
銅や水晶と違って、金は王宮が管理しにくるかもしれない。
うん、黙っていよう。
水晶で小さな瓶を作り、その中に見つけた砂金を仕舞った。見つけたのに元のところに戻すには前世のわたしは庶民すぎた。金だよ。砂金といえども無かったことにはできなかった。
今後、気づいてしまったわたしは、翡翠や材料の黒や白い石を探すたびに砂金も見つけることになって、少しずつ小瓶に貯まっていったけど、前世40歳、自分で見るだけにしたよ。
でも、なんだか家の収入が増えてきたのかなと思ったのは、食事に少し変化があった。卵を食べる日が増えた。わたしが作ったものは無料でお譲りしているだけではないのだ。きっと。
目玉焼きとゆで卵が登場する、塩味でもいいから卵焼きが食べたい。
ゴンゾさんに頼んで卵焼き器を作ってもりたいとオットーに頼んでみた。オットーはお嬢様が作くられた箱庭テラリウムや水晶のサンキャッチャー、香炉を売ったお金はお小遣いとして保管されているので、それでお好きな物を作っても大丈夫だと言ってくれた。
おお。あれらでお小遣いいただいていたんだ。材料費がただだから何にも考えていなかった!
いそいそとゴンゾさんの所にリッシャと一緒に行くと、ゴンゾさんはお父様からの依頼で大きな蒸留器を作った後で、少し手が空いているから良いぞと引き受けてくれた。
やったー。
数日後卵焼き器が出来たとゴンゾさんが家に来てくれた。
「嬢ちゃん、これで卵を焼くのか。フライパンじゃダメなのか?」
「ゴンゾさん、これは卵焼きを作るものなのよ。」
「卵を焼けば卵焼きじゃないのか?」
「んー。作ってみないとわからないかな。ちょっと厨房へ行きましょう。」
ゴンゾさんが作ってくれた銅の卵焼き器だ。ぴかぴかで綺麗。前世憧れていたんだよね。
「マルタ、ちょっとごめん。邪魔はしないから場所を貸して。そして卵を2個あるかな?。」
「あら、まぁ。お嬢様。卵はありますよ。何をなさるんですか?」
「これでゴンゾさんに卵焼きを作ってあげるの。ボールはある?」
「ボール?ですか?」
そうか、いつも目玉焼きしか出てきたことがないということは、卵を割って混ぜるということをしないから、ボールも無いんだ。じゃ、白い石で作っちゃえ。
収納していた大理石を薄く伸ばして直径15センチぐらいのボールを作る。さい箸はあるよね?ない??トングのようなもので肉を焼いていると。
収納している真鍮で箸を作ってみた。これでヨシ!
「ゴンゾさん、見ていてね。卵を2個、割ってここに入れて、塩をひとつまみ、箸で混ぜて、卵焼き器は火で温めておいて、油を敷いて、さぁ焼くわ。」
わたしは前世で一人暮らし20年以上自炊してきた。7歳の小さな手と低い背は障害ではあるが、それを凌駕する前世の経験がある。
卵焼き器でくるりと卵を焼いていく。前世を思い出して半年。久しぶりに卵焼きにご対面だ。
「おお、これは不思議だ。卵がこんな風になるなんて、初めて見たぞ。」
「わたしもこんな料理初めて見ましたよ。」
これをまな板に載せて、包丁で切って出来上がり。さぁ熱々を食べてみて!
「おお、うまい!」
「お嬢様、これ美味しいですよ。普通の卵だったのに、いつもの卵と違います!」
「俺にも下さい。」
後ろで見ていたリッシャもゴンゾさんとマルタが美味しそうに食べているのをみて参戦してきた。わたしも熱々を口に運ぶ。ふわっとしていて美味しい。銅の卵焼き器は大成功!
「村で鶏を増やしてもらいましょうか。それとも旦那様に頼んで、うちでも鶏を飼ってもらいましょうか。」
マルタは真剣だ。鶏を飼うの大変なのかな。うちは面倒を見る下男がいないよね。ハンスは馬は見るけどお爺様といつも一緒だし。
「旦那様にご相談してみます。男爵領も少し潤ってきたので、若い下男を雇えるかもしれません。」
リッシャが何故か一番張り切っている。そんなに卵焼き美味しかったんだろうか。わたしは銅で出来たぴかぴかの卵焼き器を見ているだけで幸せだよ。
この後、リッシャは本当にお父様に進言し、村の少年ガイを下男として雇うことになった。そして本当に鶏を飼うことになったのだ。
マルタに頼まれて、何度か卵焼きの作り方も伝授したところ、食卓に時々卵焼きが登場し、家族の皆も満足することになり、卵焼き器がじんわり売れていくのは後少し先のお話。




