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鉱物好物  作者: ヒロ
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朝は、お爺様がオズワルト様とエドリック様を廃坑にご案内する準備でばたばたしていた。朝食もそこそこに慌ただしく出発された。廃坑と水晶の洞窟に1日で回られる予定だそうだ。まぁどっちもそれほど離れていないから大丈夫だろう。そもそも男爵領がそんなに大きくないしね。ゴンゾさんも一緒に着いていくみたいだ。向こうで銅鉱石から銅を抽出させるのを見せるのだろう。あれは見ていて面白いからね。いいと思う。


わたしも付いて行きたかったけど、お爺様やお父様がわたしを守ってくださっていることを感じられるので、我慢した。『石好き』というスキルが、この世界でどう受け入れてもらえるのか、まだぜんぜんわからないのだ。


探索や採掘、抽出に鑑定、加工や運搬、収納のスキルはそれぞれ持っている人がいると聞いた。シーカーや斥候や山師や鍛冶師、細工師、運び屋などがそうだ。

でも、鉱物に限定だけど、それら全部を持っている人はいるのかどうかわからないのだ。

やりすぎてはダメだと、40歳のわたしは思うけど、7歳のわたしにブレーキはない。考える間もなく作ってしまっちゃうんだよね。


そんな後先考えない7歳のわたしの自由が羨ましいぐらい憧れる。前世では自由とか後先考えないとか自分の中に無かった。いつでも人目を気にしていた。気配を読み続けていた。できるだけ目立たないように、空気になれるように。それこそ路傍の石を目指していた。だからこそ、今世は石と気持ちが通じるようになったんだろうか。


前世たくさんの石を愛でた。物言わぬ石に癒された。自分で原石拾えたらいいだろうなとか、自分で磨けたら素敵だろうな。自分でカットなんて出来たら楽しいだろう。そんなことは何度も思い浮かべたけど、1歩も前に進めなかった。それが前世のわたしだ。


凝り固まった委縮した前世のわたしが、7歳のわたしの自由に心が少しずつ綻んでいく。

前世何をどうしたら、こんな素敵な場所に転生できたんだろう。自分で自分を抱きしめながら、今の幸せをしっかり味わっていた時、お爺様がお帰りのようだ。玄関からざわざわする気配がする。


その瞬間自分の部屋を出て玄関に向かって駆けていた。7歳のわたしの行動力に苦笑する。

考えたら負けなのか、何にも考えないこの子の強さが好きだ。


「お爺様!おかえりなさい!」


「おお、ジェマ。ただいま。」


あ。オズワルト様とエドリック様がこっちを見ているやばい。ええっと、ご挨拶しなくっちゃ。


「ヴェルナー様、アシュクロフト様も、ようこそお戻りになりました。」


お婆様仕込みのカーテシーをご披露する。ヨシ!たぶん、今日もこれで良いはず。お爺様がにこにこしている。間違ってはいないはず。ふぅ。


「ヴェルナー様、アシュクロフト様少々お疲れでしょう。食事の前に、お部屋でご休憩を。」


お爺様に促されて、オズワルト様もエドリック様もお部屋に戻られた。さぁお爺様にどうだったか聞いてみよう。

お爺様にひっついて話を聞こうとしたけど、お父様にそんなに焦らなくてもとたしなめられ、応接室に移動した。


お父様も早くどうだったか聞きたいのだ。そわそわされている。お婆様もお母様も揃ったところで、お爺様の口が開いた。


「視察は無事に終了した。特に問題はなかった。廃坑から銅が見つかった件については、鉄が採れた鉱山で、鉄がこれ以上取れないと鑑定士に断言されて廃坑にしたが、鉄以外が埋蔵されているか聞かなかったと説明した。


他の領地の廃坑も、同じようなことがあるかもしれないので、鉄が採れた鉱山でも、他の金属が埋蔵されているかどうか、再度鑑定してもらうと良いという話をしてきた。

今回の銅鉱脈を見つけた経緯は、廃坑に害獣が住み着いていないか奥を確認した時に、ランプの光で壁が緑に光ったのを見たからだと言うことにした。間違ってはいない。緑に見えたのは事実だからな。


水晶の方は、ヴェルナー様からは『辺境伯領の水晶鉱床に比べれば規模は小さい、王家直轄とするほどでもないだろう。ただし、鉱物資源として届け出は必要だ。今回の件は国の資源台帳には登録させていただく。』とあり、アシュクロフト様からは『男爵家で管理されるのが妥当であろう。売っても何か作っても問題ないでしょう』と言われた。


まぁ簡単に言えば、銅鉱脈も水晶もどちらも国に登録はすることになったが、うちで管理して好きにしても良いということだ。あと、水晶の洞窟を出た後に西の川を通ったので、この河原でジェダイトの原石が採れますと伝えておいた。お二人ともあまり関心はなかったがな。こちらも好きにして良いと言われたよ。」


やったー!銅も水晶も翡翠も好きに使える!お父様もお婆様もお母様もほっとされている。無事に登録されたら、後は自由なんて嬉しすぎる。良い方に視察に来ていただけた。良かった。良かった。何かお礼がしたいけど、わたしが作った翡翠のアミュレットも水晶の器の箱庭テラリウムも王宮に渡すのはまだ早いよね?我慢だ。

7歳のわたしが勝手に動かないように要注意!


村の自慢のチーズとワイン、お母様が狩ってきたお肉で作った燻製肉かな。たぶん、これらなら、お婆様とお母様が既に準備を済ませているだろう。

まぁいいか。前世40歳はお礼をしたいけど、7歳なら何もしなくても普通だな。って思いついて落ち着いた。そうだよね。7歳児に労われてもね・・・。


昨日の鹿肉のベリーソース美味しかったって感想があったみたいだから、せめてベリーでも摘んであげようか。子どもらしい良いお土産かも。

まだ夕方には早かったので、リッシャと西の川に行き、ベリーを山ほど摘んでみた。大理石を薄く薄く加工して深鉢を作ることもできるようになったので、それに入れている。もちろん、リッシャが深鉢を持ってくれている。石で出来た鉢なんて、珍しくないだろう。このまま持って帰ってもらおうかな。もちろん、お爺様やお父様には確認してもらう。

この家で幸せに暮らしていくためにも、用心用心。


家に帰って、深鉢を見てもらった結果、蔓で編んだ籠に変更。籠に入れ替えて上にふんわり布をかけてお渡しすることにした。

もちろん、チーズとワインと燻製肉もご一緒にだ。


「オズワルト・ヴェルナー様・エドリック・アシュクロフト様ご確認ありがとうございました。ご登録もありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。」


「グラニット卿、今回は素早い報告ご苦労であった。男爵家が誠実であることがよくわかった。王宮としても見事な判断であったと言わざるを得ない。廃坑の件は他の領地でも確認させていただく。王も喜ばれるであろう。」


「ははは。後でもめる方が面倒ですからな。少しでもお役にたてたのであれば光栄でございます。」


最後の挨拶も始終和やかに済んだ。『田舎のものですが』と差し出したベリーもチーズもワインも燻製肉も大変喜ばれた。お気をつけてお帰り下さい。


王宮へ戻られる馬車を見送り、みんなで家に戻る。お爺様の大きな手がわたしの頭をなでてくれた。なんだか守られているんだって感じてくすぐったい気持ちでいっぱいだ。今なら40歳のわたしも素直になれそうだ。でも、7歳のわたしの方がより素直だ。


「お爺様、大好き!!」


お爺様の大きな手を取って、一緒に家に入る。うりゃとお爺様がわたしを抱き上げる。今日は良い日だ。いや前世思い出してから毎日良い日だ。幸せな日々。大切にしていきたい。



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